犬のフィラリア症~予防の重要性と最新の予防薬~【獣医師執筆】

犬糸状虫症(フィラリア症)は、蚊によって媒介される寄生虫「犬糸状虫(Dirofilaria immitis)」が心臓や肺動脈に寄生することで引き起こされる、犬にとって最も警戒すべき致死的な疾患の一つです。
かつては国内の家庭犬における主要な死因でしたが、優れた予防薬の普及により発症率は劇的に低下しました。
しかし、近年の地球温暖化に伴う蚊の活動期間の延長や、薬剤耐性株の出現といった新たな課題により、未だに注意が必要な疾患の一つです。

このコラムでは、フィラリアのライフサイクルから最新の予防薬、そして万が一感染してしまった場合の治療法までを分かりやすく解説します。


フィラリア症の適切な予防のためには、どの段階で薬剤が作用するのかというフィラリアのライフサイクルを正確に把握することが大切です。
侵入した幼虫が肺動脈や心臓に到達するまでの時間軸や、検査で陽性と判定されるまでの「潜伏期間(プレパテント・ピリオド)」を正しく理解し、投薬のタイミングをしっかり把握しましょう。

発育段階存在場所臨床的特徴
第1期幼虫
(L1 / ミクロフィラリア)
犬の血液中成虫が産出した子虫。蚊が吸血する際に取り込まれる。
第2期幼虫
(L2)
蚊の体内蚊のマルピーギ管内で1回目の脱皮を行った状態。成虫の内臓組織の原形を作る準備期間。
第3期幼虫
(L3 / 感染幼虫)
蚊の口吻部蚊の体内で成長し、感染能を獲得。吸血時に犬の皮膚へ移行する。
第4期幼虫
(L4)
犬の皮下・筋肉内侵入後2~10日でL3から脱皮する。現在主流の予防薬(大環状ラクトン系)の主要な標的となる成長段階。
第5期幼虫
(L5 / 未成熟成虫)
血液・心臓内侵入後約1~2ヶ月で脱皮し、血管内へ侵入して肺動脈を目指す。
成虫
(L6)
肺動脈・右心室感染から6~7ヶ月で成熟。体長15~30cmに達し、新たなL1を産出する。(ソーメンにそっくりの白く長細い虫体)

日本国内におけるフィラリアの感染リスクは、気温とそれに伴う蚊の活動状況と密接に関係しています。

国内で販売されているフィラリア予防薬は、投薬した時点で「過去1ヶ月間に侵入したフィラリアの幼虫をまとめて殺滅する」という効果が基本であり、「投薬後1カ月間効果が持続している」わけではありません。

そのため、蚊がいなくなってから1ヶ月後(多くの地域で12月)の最終投与を忘れると、秋に感染した幼虫が冬の間に成長してしまいます。

また、都市部のビル地下(ヒートアイランド現象)などは冬でも蚊が生存するため、中間地でも通年予防が推奨されるケースが増えています。

地域区分主な該当エリア推奨投薬期間
寒冷地北海道、東北山間部5月下旬 ~ 11月
中間地関東、関西、中部、中四国4月下旬 ~ 12月
温暖地南九州、沖縄3月 ~ 12月(または通年推奨)

※実際の投薬開始・終了時期は、その年の気温や蚊の発生状況によって異なります。最終投与は「蚊がいなくなってから1ヶ月後」が原則です。

自然界の気温だけでなく、ベランダのプランターの受け皿、古タイヤ、詰まった雨どいなどの「定在水場」は蚊の絶好の繁殖地となります。これらの環境を改善することも、物理的な予防策として重要です。


フィラリア症は「心臓の病気」と思われがちですが、本質は肺の血管に慢性的な炎症と障害を起こす重篤な肺血管疾患でもあります。

肺動脈に到達した成虫が血管壁を機械的に刺激することで「肺動脈内膜炎」が生じ、血管の内側が厚く硬くなる血管リモデリングが進行します。
その結果、血管内腔が狭くなって肺血管抵抗が上昇し、肺の血流が流れにくくなります。
これにより肺動脈圧が異常に高まる「肺高血圧症」(肺の血管圧が上昇し、心臓が肺へ血液を送り出すために通常以上の力を必要とする状態)を引き起こします。
さらに肺高血圧による負荷が持続すると、右心室は血液を送り出すために肥大し、やがて拡張して三尖弁逆流が生じ、最終的には全身循環のうっ滞によって腹水、肝腫大、皮下浮腫などを伴う右心不全へと進行していきます。

フィラリア症で起こる特に重篤な症状で、多数の成虫が肺動脈から右心房へと逆流し、三尖弁の機能を物理的に阻害してしまう病態です。
大量の虫体が三尖弁(右心房と右心室の間の弁)に絡みつき、血液の循環を急激に阻害・遮断することで、急性右心不全を引き起こします。
これにより赤血球が物理的に破壊され(溶血)、ヘモグロビン尿による濃紅茶色の尿が見られるようになります。
この状態は救急疾患であり、予後不良となることも多く、また、多数の寄生虫が血管に詰まることで突然死(心臓発作)を引き起こす場合もあります。


2024年改訂のAHS(米国犬糸状虫学会)ガイドラインでは、7ヵ月齢以上のすべての犬に対し、年1回の「抗原検査」と「ミクロフィラリア(MF)検査」を推奨しています。

メスの成虫由来の可溶性抗原を検出します。微量(一滴程度)の血液を検査用キットに垂らして検査します。
10分程度で即結果が分かるため、動物病院で最も主流となっている検査方法です。
安価で高精度ですが、オスのみの寄生や感染初期(6ヶ月未満)には反応しません。
主に、心臓に現在寄生している成虫がいないかを判断する材料として使用します。

血液中の幼虫を顕微鏡で直接確認します。
抗原検査が陰性でも、薬剤耐性株などの影響で幼虫のみが存在するケースを見逃さないために不可欠です。
ごく少量の採血を行い、スライドグラスに血液を一滴垂らし、上からカバーグラスをかけて顕微鏡で観察します。


現代のフィラリア予防薬は、一度の投薬でさまざまな種類の寄生虫に効果があり包括的な管理ができる製品が主流となってきています。
以下に、各有効成分の薬理学的特性と、それらを配合した主要製品の詳細をご紹介します。

これらの成分は、寄生虫の神経・筋肉細胞にあるグルタミン酸作動性塩化物イオンチャネルという部分に結合し、神経伝達の回路を狂わせ動けなくして死滅させます。

・イベルメクチン
世界で最も歴史があり、低用量でL4幼虫を殺滅できる安全性と有効性のバランスに優れた成分です。
ただし、コリー系犬種などではMDR1遺伝子変異により、通常の用量でも脳内へ薬剤が流入しやすく、神経症状(ふらつき、震え、昏睡など)を起こすリスクがあるため注意が必要です。

・ミルベマイシンオキシム
フィラリア予防に加え、回虫、鉤虫、鞭虫といった腸内線虫に対しても駆除効果を発揮します。

・モキシデクチン
大環状ラクトン系の中でも極めて高い脂溶性を持ち、血中濃度が長期にわたって安定します。
この特性により、一部の耐性株に対しても他成分より高い有効性を示すことが報告されています。

・セラメクチン
経皮吸収に非常に優れたスポットオン製剤専用の成分です。
皮膚から速やかに吸収され、フィラリアの寄生予防だけでなく、ノミ成虫の駆除、ノミ卵の孵化阻害、さらにはミミヒゼンダニの駆除に単独で高い効果を発揮します。
生後6週齢の子犬、妊娠・授乳中の犬、イベルメクチン感受性犬(コリー等)においても高い安全性が確認されています。

・イソキサゾリン系(アフォキソラネル、サロラネル、ロチラネル等)
最新のノミ・マダニ駆除成分で、節足動物のGABA受容体等を阻害します。
即効性が高く、投与後数時間で駆除が始まり、1ヶ月間安定した効果が持続します。

・ピランテル
回虫や鉤虫の駆除効果を補完するために多くの製剤に配合されます。

製品名(形状)主要有効成分対象寄生虫 (駆除範囲)特徴・投与のポイント
シンパリカ トリオ
(チュアブル錠)
サロラネル、モキシデクチン、ピランテルパモ酸塩フィラリア、ノミ、マダニ、イヌセンコウヒゼンダニ、イヌニキビダニ、回虫、鉤虫【確実性重視】 耐性リスクに強いとされるモキシデクチンを採用。ノミ・マダニへの即効性が高い。
クレデリオプラス
(フレーバー錠剤)
ロチラネル、ミルベマイシンオキシムフィラリア、ノミ、マダニ、イヌニキビダニ、回虫、鉤虫、鞭虫【小粒・高吸収】 ビーフフレーバーの小さな錠剤タイプ。成分吸収を助けるため食事時の投与を推奨。
レボリューション
(スポットオン剤)
セラメクチンフィラリア、ノミ、ミミヒゼンダニ【非経口型】 背中に垂らすタイプ。錠剤が苦手なコや吐き戻す場合に最適。耳ダニ駆除も可能。
ネクスガード スペクトラ
(ソフトチュアブル)
アフォキソラネル、ミルベマイシンオキシムフィラリア、ノミ、マダニ、回虫、鉤虫、鞭虫【嗜好性良好】 おやつ型で与えやすい。食事の有無を問わず投与可能。
イベルメックPI
(骨型クッキー)
イベルメクチン、パモ酸ピランテルフィラリア、回虫、鉤虫【定番信頼】 嗜好性の高いクッキー型。コストパフォーマンス重視。
プロハート12
(徐放性注射薬)
モキシデクチンフィラリア【利便性最大】 一度の注射で12ヶ月間効果が持続。毎月の投薬ストレスや投薬忘れがない最新の選択肢。
ハートメクチン錠
(錠剤)
イベルメクチンフィラリア【経済性】フィラリア予防に特化したシンプルな錠剤。コストを最小限に抑えたい場合に 。

予防薬の発展により、日本国内ではフィラリアの感染数はかなり少なくなっていますが、万が一感染が判明した場合の治療には以下の三つの方法があります。

現在の国内では、予防薬(イベルメクチンなど)とドキシサイクリンという抗生剤を長期間併用し、フィラリアの寿命を短くしながら全滅を待つ「combination slow-kill法」を選択する場合も多いです。

フィラリアの体内には「ボルバキア(Wolbachia pipientis)」という細胞内共生細菌が存在しています。
フィラリアが死滅する際、この細菌が放出する表面抗原が犬の免疫系を過剰に刺激し、肺や腎臓における重篤な炎症反応(糸球体腎炎や好酸球性肺炎など)を助長することが判明しています。

ドキシサイクリンにはボルバキアを殺菌する効果があり、これを併用することで駆虫に伴う副作用のリスクを最小限に抑えます。
また、治療期間中(通常2年以上)は、死滅した虫体による急性塞栓を防ぐため、厳格な運動制限をおこなう場合もあります。

右心室内に虫体が寄生している場合に適応となる方法です。
頚静脈からアリゲーター鉗子と呼ばれる器具を挿入し、右心室内のフィラリア虫体を掴み取って除去する方法で、全身麻酔のリスクや手技の困難さがあります。
現在日本ではアリゲーター鉗子の国内製造は終了しており、この手術を実施している施設は少なくなっています。

メラルソミンというヒ素剤を2~3回筋肉に注射しフィラリア成虫を駆除する方法です。

米国犬糸状虫学会(AHS)推奨の治療法ですが、大量のフィラリア虫体が寄生している場合には、虫体が一度に死滅することでアナフィラキシーショックや呼吸不全を起こす可能性があるため、適応外となります。

また、死滅した虫体が肺動脈で詰まり、一時的に肺機能を低下させる場合があるため、注射後1~2週間は安静が必要です。
また、現在日本ではメラルソミン注射剤の生産がないため海外から薬の輸入が必要になります。


この記事のまとめは、以下のとおりです。

  • フィラリア症は命に関わる重大な肺・心臓疾患です。症状が出る前の予防が愛犬の寿命とQOLを左右します。
  • 予防薬は最後まで必ず投薬しましょう。蚊がいなくなってから1ヶ月後の投薬が特に大切です。
  • 薬の成分の特徴を踏まえて、嗜好性、投与の利便性など愛犬の体質とライフスタイルに合った製品を選びましょう。
  • 万が一感染してしまったら治療は大きなリスクを伴い愛犬にも負担がかかります。かかりつけの獣医師とよく相談して最適な治療方法を選択しましょう。

予防薬の発達と飼い主様の予防意識の向上により、10年前に比べてフィラリア症はかなり減少傾向にあります。
しかし、予防を怠ると感染リスクはいまだに高く、その治療には長い時間と高額な費用を要し、愛犬にも大きな負担をかけることとなります。
愛犬にあったお薬で確実な予防を心がけましょう。

動物用医薬品に関するご不明点やご相談がある場合は、動物のお薬の専門店『ねこあざらし薬店』の薬剤師にお気軽にお問い合わせください。

犬のアトピー性皮膚炎~かゆみの原因と上手な付き合い方~【獣医師執筆】

愛犬が体をかきむしり、舐め続ける姿を見るのは、飼い主さんにとって辛いものです。
犬のアトピー性皮膚炎は、環境中のアレルゲンに対する過剰な免疫反応と、皮膚バリア機能の遺伝的な機能不全を特徴とする慢性皮膚疾患です。
完治はなかなか難しく、生涯にわたり適切な皮膚のケアが必要となるケースも少なくありません。

このコラムでは、アトピー性皮膚炎の原因から最新の治療薬、そして愛犬のQOL向上のための日常ケア方法まで詳しく解説していきます。


アトピー性皮膚炎の発症には、『皮膚バリア機能の不全』『免疫バランスの乱れ』『環境因子』の3つが密接に関与しています。

皮膚の最外層を構成する角質層は、外部刺激の侵入を阻止し、体内の水分を保持する生物学的バリアとして機能しています。この層は、セラミド、脂肪酸、コレステロールといった細胞間脂質と、フィラグリンなどの重要な成分によって維持されています。

アトピー性皮膚炎に罹患した犬では、これらの成分が遺伝的に不足しており、特に細胞間脂質のバランスが崩れていることが確認されています。

中でも重要視されるのが、フィラグリン(FLG)遺伝子の変異です。フィラグリンは角層細胞内でケラチンフィラメントを凝集させ、最終的には天然保湿因子(NMF)へと分解されますが、このプロセスが阻害されることで経皮水分蒸散量(TEWL)が増大します。

この「漏れやすい皮膚」の状態が、アレルゲンの侵入を容易にし、慢性的な炎症を引き起こす病理学的基盤となります。

特に以下の犬種では、遺伝子レベルでの皮膚バリア機能の脆弱性が確認されており、アトピー性皮膚炎を発症しやすい傾向があります。

  • 柴犬
  • ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
  • ラブラドール・レトリーバー
  • ゴールデン・レトリーバー
  • フレンチ・ブルドッグ
  • シー・ズー

これらの犬種を飼育されている方は、特に皮膚の状態に注意を払う必要があります。

侵入したアレルゲンに対し、犬の体を守る一連の免疫メカニズムは、通常よりも偏った過剰な応答を示します。
この過程で放出されるインターロイキン31(IL-31)という免疫関連物質が、皮膚の感覚神経を直接刺激して激しいかゆみを引き起こすことが知られています。

遺伝的素因を顕在化させる引き金として、外部環境の要因が深く関わっています。

・環境アレルゲンへの曝露
室内ダニ(コナヒョウヒダニ等)の排泄物や死骸、スギ・イネ科・ブタクサ等の花粉、真菌(カビ)の胞子などが主要な抗原となります。これらは季節や居住地域によって飛散量が変動し、症状の増悪を左右します。

・気候と飼育習慣
高温多湿(湿度60%以上)な環境はダニやカビの繁殖を促し、症状を悪化させます。また、過度な洗浄など誤ったスキンケアも、皮膚バリアを物理的に損傷し、アレルゲン浸透を助長する環境的誘因となります。


臨床症状は通常、生後6ヶ月から3歳の間に初発を迎え、主には以下の部位に左右対称性(非対称の場合もあり)の赤み、ブツブツ、フケ、輪状の湿疹などが認められます。

部位別の主な症状

部位主な症状・飼い主が気づくポイント
顔面・耳目の周りの赤み、涙やけの悪化、外耳炎の繰り返し。耳の入り口付近を頻繁に掻く行動が見られる。
四肢(手足)指の間や肉球の赤み・腫れ、執拗に舐める行動。唾液の成分により被毛が茶褐色に変色するのが特徴。
体幹部脇の下、内股(鼠径部)の赤み・ブツブツ。皮膚が薄く擦れやすい部位に強い症状が出やすい。

アトピー性皮膚炎の最大の特徴は、激しいかゆみです。
犬は掻く、舐める、噛むといった行動を繰り返し、これがさらに皮膚を傷つけ、バリア機能を低下させます。
この悪循環を断ち切ることが、治療の重要な目標となります。


アトピー性皮膚炎の診断は検査で確定するのは非常に難しく、他の疾患を順番に排除していく「除外診断」が基本となります。
これは、アトピー性皮膚炎を確定する単一の検査が存在しないためです。

ステップ1:他疾患の除外
ノミ・ダニ等の外部寄生虫感染、細菌感染(膿皮症)、酵母菌感染(マラセチア)を先行して治療し、かゆみの原因を切り分けます。

ステップ2:食物アレルギーの鑑別
アレルギー性皮膚炎の約30%は食物アレルギーを併発しているとされています。アレルギー検査(血液検査)の結果をもとに8週間の厳格な除去食試験を行い、食事の影響を判定します。

ステップ3:臨床診断基準の確認
臨床現場では、Favrot(ファヴロ)らによって策定された診断基準が、CADの可能性を判定するための有用なツールとして用いられています。上記の1および2を除外後、以下の8項目のうち5項目以上を満たす場合、CADの可能性が高いと評価されます。

項目チェック内容
1. 発症年齢3歳未満で症状が出始めた
2. 飼育環境ほとんど室内で生活している
3. 薬への反応ステロイド剤でかゆみが劇的に治まる
4. 合併症マラセチア(真菌)による皮膚炎を繰り返す
5. 前足の症状前肢(足先など)に皮膚の赤みや汚れがある
6. 耳の症状耳介(耳のヒラヒラした部分)に病変がある
7. 耳の縁(症状なし)耳のフチ(縁)には異常がない
8. 腰・背中(症状なし)腰や背中の中心部には異常がない

ステップ4:アレルギー検査
主に血液検査によりアレルゲン特異的IgE抗体を測定するもので、ハウスダストマイト、花粉、カビなどの環境アレルゲンに対する免疫反応を調べます。これにより、犬がどの物質に感作されている可能性が高いかを推定します。

ただし、検査陽性=発症原因とは限らないため、症状の季節性や生活環境などと総合的に判断する必要があります。


内服薬には、主に以下のものがあります。効果・副作用が異なるため、犬の体質・症状に合わせて選択することが大切です。
近年のアトピー性皮膚炎の治療は、ステロイド、シクロスポリンをはじめとする広範な全身性免疫抑制に加え、副作用を最小限に抑えつつ痒みの特異的な経路を遮断する「分子標的薬」を使用した治療が主流となってきています。

これら分子標的薬の長期使用に関しては、臨床データの不足からその使用リスクについて様々な議論が行われています。(2026年1月現在)

薬剤名作用機序特徴(メリットと留意点)
ステロイド
(プレドニゾロンなど)
細胞内の受容体に結合し、炎症の原因を直接抑制することで、強い免疫抑制・抗炎症作用を示す。安価で、強力な抗炎症と止痒効果を併せ持つ。
長期使用で副作用に注意が必要。
アトピカ
(シクロスポリン)
T細胞の活性化に不可欠なカルシニューリンを阻害し、痒みや炎症の元となるサイトカインの産生を抑制する。長期投与が可能で、ステロイドを減薬できる可能性がある。
効果発現まで2週間以上かかる。初期に嘔吐症状が出やすい。
サイトポイント
(ロキベトマブ)
痒みを脳に伝えるIL-31を標的として結合し、中和することで痒みを感じないようにさせる。月1回の注射で済み、副作用のリスクも低い。
効果の持続性には個人差がある。
アポキル
(オクラシチニブ)
痒みの伝達に関わるJAK酵素を阻害し、痒みの中心物質であるIL-31のシグナルを遮断する。即効性があり、安全性も高い。
減量・休薬時に痒みがリバウンドする場合がある。
ゼンレリア
(イルノシチニブ)
最新薬(2026年1月現在)。
従来薬よりも広範かつ強力にJAK経路を遮断し、痒みだけでなく重度の炎症反応も抑制する。
痒み軽減効果が高く、既存薬でコントロール困難な症例にも有効。最初から1日1回の投薬で済むのも大きな利点。ただし、免疫への影響が比較的強いため、定期的な血液検査など、慎重な経過観察が必要。

対症療法が主体となるアトピー性皮膚炎の治療において、唯一の根本的な解決策となり得るのがアレルゲン特異的免疫療法「減感作療法」です。人の花粉症治療にも用いられている方法です。

・治療方法
原因となるアレルゲンを低用量から計画的に反復投与し、免疫系の過剰反応を徐々に抑制していきます。アレルゲンに対する反応が過剰な状態から、免疫寛容(過剰に反応しない状態)へと変化することで、症状の軽減や薬物治療の必要量の減少が期待されます。

・効果
犬の症例の約60%に顕著な改善が見られるとされていますが、完全な治癒を保証するものではありません。治療期間も長期にわたるため、獣医師とよく相談して検討することをおすすめします。


薬物療法を補助し、薬の量を減らすためには、皮膚の外側と内側から日常的にケアしていくことが大切です。

・物理的洗浄
花粉やダニなどのアレルゲンを物理的に除去します。ぬるま湯を使用し、成分を浸透させるため10分程度おいてから十分にすすぎます。

・保湿の徹底
シャンプー後はバリア機能が低下するため、セラミド等を含む保湿剤で速やかに保護します。1日1~2回の保湿が理想的です。

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・必須脂肪酸の補給
オメガ3脂肪酸(EPA, DHA)やオメガ6脂肪酸(リノール酸・γ-リノレン酸等)は、炎症緩和とバリア機能改善をサポートします。

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・腸内環境の整備
パラカゼイ菌(乳酸菌)やケストース(オリゴ糖)の摂取により、腸内フローラ(腸の中に生息する多種多様な細菌の集まりのこと。消化吸収の補助、免疫機能の調整、病原菌の抑制などに関与する。)を整え、皮膚の過剰なアレルギー反応を抑制します。

ある臨床研究では、従来の治療薬プレドニゾロンを90日間投与しても改善しなかったCADの犬15頭に、これらを併用した結果、症状の顕著な改善と抗生物質の使用量の減少が確認されました。これにより、パラカゼイ菌が免疫の偏りを是正し、ケストースが皮膚の保水力をサポートすることで、効率的な腸内環境改善と皮膚の健康維持が期待できることが示唆されています。

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アレルゲン回避のポイント

  • 室内湿度は40〜60%、温度20〜25℃程度に維持(ダニやカビの増殖を抑える)
  • 空気清浄機の活用
  • 週2〜3回以上の掃除機がけ
  • 寝具の定期的な洗濯と日光消毒(週1回程度)
  • 花粉の季節は散歩後に足や体を拭く

アトピー性皮膚炎の犬は、皮膚バリアの脆弱性から以下のような二次感染を併発しやすくなります。

表在性膿皮症
アトピー犬の約66%で発症し、かゆみをさらに増幅させます。赤いブツブツや膿を伴う湿疹が特徴です。

外耳炎
アトピー犬の80%以上に症状が見られ、耳だけの症状が初発となるケースも少なくありません。頻繁に頭を振る、耳を掻く、耳垢が増えるなどの症状に注意が必要です。

マラセチア皮膚炎
酵母菌の増殖により強い悪臭とベタつきが生じます。特に指の間、脇の下、耳などに発生しやすい傾向があります。

これらの疾患を繰り返す場合、あるいは一般的な治療でコントロールが困難な場合は、早期に「日本獣医皮膚科認定医」など皮膚疾患に詳しい獣医師の診察を受けることをおすすめします。


アトピー性皮膚炎は長い付き合いが必要な病気ですが、適切な治療と日常ケアにより、かゆみを良好にコントロールし、愛犬のQOLを維持することが可能です。
かかりつけの動物病院でよく相談し、愛犬が穏やかな毎日を送れるように支えていきましょう。

この記事のまとめは、以下のとおりです。

  • アトピー性皮膚炎は、皮膚バリア不全、免疫異常、腸内環境の乱れが複雑に絡み合った疾患
  • 診断は、寄生虫、食物アレルギー、感染症を一つずつ除外していく丁寧なプロセスが必要
  • 治療薬には現在様々な種類があり、獣医師と相談の上、体質と皮膚にあったものを選択することが大切
  • 症状がない時期でも、日常的なスキンケアを続けていくことが再発防止の鍵となる
  • シャンプー・保湿・食事(脂肪酸)・腸活(乳酸菌)を組み合わせる多角的なアプローチが、薬の減量とQOL維持につながる
  • 症状が改善しない場合は、皮膚科専門医による診察を受けるのも選択肢の一つ

犬のアトピー性皮膚炎は適切な知識と治療でコントロールできる慢性疾患です。

愛犬のかゆみに不安を感じたら、まずはかかりつけの動物病院を受診し、獣医師と相談しながら最適な治療方針を決めていきましょう。日々の観察と記録、そして適切な治療管理が、愛犬の穏やかな生活を支える大きな力となります。

動物用医薬品に関するご不明点やご相談がある場合は、動物のお薬の専門店『ねこあざらし薬店』の薬剤師にお気軽にお問い合わせください。

犬の皮膚病『膿皮症』の基礎知識と治療の基本的アプローチ【獣医師執筆】

愛犬の皮膚に赤いブツブツができて、強い痒みで掻きむしっている姿を見ると、飼い主さんは心配でたまりません。
犬の膿皮症は、細菌感染による非常に一般的な皮膚病ですが、適切な治療を行わないと再発を繰り返してしまう慢性疾患です。
しかし、正しい知識と治療法、そして日々のケアによって症状をコントロールすることは十分に可能です。

このコラムでは、犬の膿皮症の病態から最新の治療アプローチ、そして再発を防ぐための具体的な管理方法までを分かりやすく解説します。


犬の膿皮症(Pyoderma)は、皮膚に細菌が増えて炎症を起こす、非常に一般的な皮膚病のひとつです。
細菌が感染する皮膚の深さによって、皮膚表面の「表面性膿皮症」、浅い層の「表在性膿皮症」、そして奥深くの「深在性膿皮症」の3つに分類されます。

今回は、犬の膿皮症の中で最もよく見られる表在性膿皮症(Superficial Pyoderma)に焦点を当てて解説します。

表在性膿皮症は、細菌が皮膚の浅い層(表皮や毛穴の入り口)に侵入し増殖することで発症します。
主な原因菌は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus pseudintermediusなど)です。犬の皮膚にいる常在菌ですが、なんらかの理由で皮膚の抵抗力(バリア機能)が弱った時に増殖し症状を引き起こします。

皮膚の抵抗力が低下する原因の多くは「基礎疾患」の存在です。アレルギーやホルモンの病気などで皮膚バリア機能が弱くなったり免疫力が低下した結果、細菌が増殖し膿皮症を引き起こします。
この根本原因となる疾患を治療しない限り膿皮症は再発を繰り返してしまうため、まず全身の精密検査により基礎疾患を特定することが重要となります。

分類主な基礎疾患病態への影響
アレルギー性疾患犬アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなど皮膚バリア機能の破壊、痒みによる自傷行動
内分泌疾患甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症など全身的な免疫抑制、皮膚代謝の異常によるターンオーバーの低下
寄生虫疾患ニキビダニ症(デモデクシス)など免疫抑制、皮膚の局所的な炎症の惹起

膿皮症でよくみられる症状には、以下のようなものがあります。初期の頃は、飼い主さんは犬が身体を痒がることに気づき、よく見ると皮膚にニキビのような赤い湿疹ができ、脱毛していることに気づきます。

・赤いブツブツ(丘疹
細菌感染による初期の炎症性の発疹

・膿の袋(膿疱
細菌と炎症細胞が集まったもので、細胞診の最適な採取部位

・表皮小環
膿疱が破れた後に環状に残るフケやカサブタの痕。膿皮症に特徴的

・その他
脱毛、皮膚の赤み、強い痒みなど


膿皮症を疑う場合は、前述した丘疹や表皮小環を探し、検査のためのサンプルを採取します。第一に行うのは細胞診検査ですが、治療の経過により必要な場合は細菌培養・薬剤感受性検査を行い適切な治療薬を選択します。

膿疱などからサンプルを採取し顕微鏡で観察することで、細菌感染の有無、好中球など炎症細胞の存在、マラセチアなどの真菌の同時感染などを確認します。
膿皮症を疑う場合に最初に行う検査であり、この検査で細菌が認められなければ、他の鑑別疾患を疑います。

細菌の種類を特定し、その細菌に対して各抗生剤がどれくらいの効果があるのかを判定する検査です。メチシリン耐性ブドウ球菌などの耐性菌の存在する可能性を排除し、現在感染している細菌に有効な薬剤を選択するために必要な検査です。


膿皮症の治療で最も問題となる「耐性菌」は、治療の初期段階からさまざまな抗生剤を多用することで発生率が高くなります。
そのため現在の膿皮症治療では、安易に抗生剤を選択せず、外用薬やシャンプーをメインとして治療を進めることが多くなっています。

外用療法は、薬剤耐性のリスクを最小限に抑えつつ、細菌負荷を低減できるため、表在性膿皮症治療の中心的なアプローチとして位置づけられています。

外用療法作用機序・特徴
殺菌消毒液
(クロルヘキシジングルコン酸塩2~4%含有)
細菌の細胞壁を破壊し、細胞質タンパク質を凝固させることで殺菌。消毒作用が強く、表在性膿皮症の治療に有効性が示されている。
シャンプー療法
(クロルヘキシジングルコン酸塩2~4%含有)
上記のクロルヘキシジンを含有したシャンプー剤による洗浄療法。シャンプーとして使用する場合には、成分が皮膚に十分接触する時間を確保するため、10分程度おいてから洗い流すのが有効とされている。
局所抗生物質
(軟膏・クリーム・外用液など)
局所的に細菌の増殖を抑制し、抗菌作用を発揮する。限局性の病変に適用され全身投与(内服薬)を避けることができるため、薬剤耐性のリスクを低減できる。

抗生物質の内服は、「外用療法に反応しない」、「症状の出ている範囲が広く外用薬では対応しきれない」などの場合に行われます。
とくに近年では、耐性菌の増加が問題となっているため使用は極めて慎重に行われます。
そのため抗生物質適正使用の観点から、抗生物質を内服させる際には以下の点が重視されます。

①細菌培養・感受性試験の推奨
感染している細菌に対して感受性の高い(効果の高い)抗生物質を効率的に選ぶためにも、初期段階での検査実施が推奨されています。

②第一選択薬の使用
①の検査が行われない場合には、まず、第一選択薬とされている抗生物質を使用します。これらは、犬の膿皮症に対する臨床試験で良好な効果が確認され、政府の承認によって効果が裏付けられている薬剤です。具体的には、セファレキシン、アモキシシリン-クラブラン酸、クリンダマイシン、リンコマイシンなどがあります。

③治療期間の遵守
抗生物質による治療は、症状が改善した後も潜在的な細菌を根絶するために、獣医師の指示に従い一定期間継続することが必須です。途中で薬を中断すると、菌が生き残り耐性菌を生むリスクが高まるため、正確な量と間隔を守ることが重要です。


膿皮症の治療が成功した後も、その再発を防ぐための継続的な管理が不可欠です。
この長期の管理計画は、基礎疾患のコントロールと皮膚バリア機能の持続的な維持というのが重要なポイントです。

膿皮症は二次的な疾患で発症することが多いため、細菌感染が治癒した後も、その根本原因となった基礎疾患(アレルギー疾患や内分泌疾患など)に対する治療を継続しなければ常に再発しやすい状態にあります。
したがって、アレルギーに対する免疫調整薬や食事管理、内分泌疾患に対するホルモン補充療法など、基礎疾患に対する治療を地道に継続することが、膿皮症の長期的な再発予防の土台となります。

基礎疾患の管理に加え、皮膚の細菌負荷を低く保つための予防的な局所管理が効果的です。
獣医師の指導のもと、皮膚の状態に合わせて適切な頻度で薬用シャンプーを継続するなど、発症を予防するプロアクティブな外用療法を行うことは、再発の頻度や重症度を軽減する有効な手段となり得ます。

難治性で再発性の高いケース、あるいは多剤耐性菌が確認された深刻な症例については、一般診療での対応が困難になることがあります。
このような場合には、皮膚病に詳しい獣医師の診察を受けるのも選択肢の一つです。日本国内には、日本獣医皮膚科学会の認定医試験に合格した「日本獣医皮膚科認定医」の資格を持つ獣医師が全国に約120名(2025年現在)存在しており、学会のウェブサイトで確認することができます。


膿皮症は再発しやすい慢性疾患ですが、適切な日常的ケアで症状をコントロールすることが可能です。
かかりつけの動物病院でよく相談し、愛犬が快適な毎日を送れるように支えていきましょう。

この記事のまとめは、以下のとおりです。

  • 膿皮症は、多くの場合、基礎疾患(アレルギーや内分泌疾患など)によって二次的に発症する
  • 主な原因菌は常在菌であり、皮膚の抵抗力が下がると異常増殖する
  • 外用療法(消毒薬シャンプーなど)が最も重要な治療であり、耐性菌対策として優先される
  • 全身抗生物質の内服は、慎重に選択し、一定期間服用を継続することが大切
  • 基礎疾患の継続的な治療と、予防的な皮膚の衛生管理が再発予防の鍵となる

犬の膿皮症は適切な知識と治療でコントロールできる慢性疾患です。

愛犬の皮膚トラブルに気づいたら、まずはかかりつけの動物病院を受診し、獣医師と相談しながら最適な治療方針を決めていきましょう。日々の観察と記録、そして適切な外用療法の継続が、愛犬の快適な生活を支える大きな力となります。

動物用医薬品に関するご不明点やご相談がある場合は、動物のお薬の専門店『ねこあざらし薬店』の薬剤師にお気軽にお問い合わせください。

犬の皮膚病『マラセチア性皮膚炎』に対する正しい知識とケア方法【獣医師執筆】

愛犬の皮膚が赤くなり、強いかゆみと独特の臭いが続く「マラセチア性皮膚炎」。
慢性的な症状は愛犬のQOL(生活の質)を著しく低下させ、飼い主さんも心を痛めることが少なくありません。
しかし、マラセチア性皮膚炎は適切な知識と治療、そして日々のケアで症状をコントロールできる疾患です。

このコラムでは、マラセチア性皮膚炎の正しい知識から最新の治療法、そしてご自宅で愛犬を支えるための具体的なケア方法までを分かりやすく解説します。


マラセチア性皮膚炎は、酵母(カビ)の一種であるマラセチア・パチデルマティス(Malassezia pachydermatis)という皮膚常在菌が異常増殖することで起こる皮膚疾患です。

この疾患は犬の皮膚科診療で最も頻繁に遭遇する疾患の一つであり、症状を抑えるだけでなく、「なぜ菌が増えたのか」という根本原因を特定し、長期的に管理することが再発予防の鍵となります。

マラセチアは、犬の皮膚から分泌される皮脂(脂質)を必須の栄養源とする脂質依存性(リポフィルス)という性質を持ちます。

そのため、皮脂腺が豊富で湿度が高くなりやすい部位、特に皮膚と皮膚が重なる間擦部や耳の内部で活発に増殖します。

好発部位(高湿度・高皮脂エリア)誘発される症状
間擦部(脇、股、指間、顔の皺、尾の付け根)紅斑や苔癬化、悪臭が発生
皮膚表面の脂っぽいベタつき
外耳道・耳介左右対称性の外耳炎
ベタベタしたワックス状の耳垢を形成

異常増殖したマラセチアは、皮脂を分解する際に酵素(リパーゼ)や代謝産物を大量に産生します。これらの物質が皮膚細胞を刺激し、炎症を引き起こします。

また、マラセチアの細胞壁成分がアレルゲン(抗原)として認識されることで、過敏症(アレルギー)を併発することがあります。これにより、掻痒が劇的に悪化し、単なる殺菌だけではコントロールが難しくなります。


マラセチア性皮膚炎のリスクを高める基礎疾患は、主に皮膚のバリア機能の破綻や皮脂の過剰分泌を引き起こします。

特にウエストハイランド・ホワイト・テリアやシー・ズーは、犬アトピー性皮膚炎(CAD)と脂漏症の両方の好発品種であり、遺伝的素因が深く関与しています。これらの犬種を治療する際は、生涯にわたる基礎疾患の管理が必要となる場合も少なくありません。

基礎疾患の種類好発犬種(遺伝的素因)マラセチア増殖への影響
犬アトピー性皮膚炎
(CAD)
ウエストハイランド・ホワイト・テリア、シー・ズー、ゴールデン・レトリバー、チワワなど慢性炎症による皮膚バリア機能の低下と微小環境の悪化
原発性脂漏症ウエストハイランド・ホワイト・テリア、シー・ズー、アメリカン・コッカー・スパニエル、ミニチュア・シュナウザー皮脂の過剰分泌(マラセチアの栄養源)が強力に増大
解剖学的要因ブルドッグ(しわが多い短頭種)、垂れ耳の犬種皮膚が蒸れやすく、高湿度環境を形成する

診断は、実際の臨床症状(紅斑、脂漏、悪臭など)と皮膚の細胞診(テープによる押捺法)によって行います。

細胞診では「雪だるま型」のマラセチアが多数認められます。菌数が少ないにもかかわらず、かゆみが非常に強い場合は、マラセチアに対する過敏症(アレルギー反応)が起きている可能性があります。この場合は殺菌だけでなく、マラセチアに対する過敏症をコントロールするための複雑な管理が必要となります。


マラセチア性皮膚炎の治療では、「菌の抑制(殺菌)」、「炎症と掻痒の緩和」、「基礎疾患のコントロール」の3つが重要なポイントです。

主には、外用療法(シャンプーや塗布薬など)と経口薬による全身療法があります。

シャンプー療法は、皮膚表面のマラセチアを物理的に洗い流すことで微生物負荷を迅速に軽減し、マラセチアが産生した炎症物質や皮脂を除去するため最も不可欠な治療です。

目安は週に1~2回で、症状に合わせて行っていきます。

治療薬製品例と主な成分成分の作用機序と効果
薬用シャンプー・マラセブ
・マラセブ ライト
・マラセキュア
(ミコナゾール硝酸塩2% / クロルヘキシジングルコン酸塩2%)
ミコナゾール(抗真菌):マラセチアの細胞膜必須成分であるエルゴステロールの合成を阻害し殺菌作用を発揮する

クロルヘキシジン(殺菌):細菌やマラセチアの細胞膜に障害を与え、広範囲の抗菌・抗真菌作用をする
外用抗真菌薬・ケトコナゾールクリーム
・ミコナゾールクリーム
アゾール系クリームは、患部に直接塗布することでエルゴステロールの合成を阻害し、マラセチアを殺菌・抑制する

広範囲の病変、重度な感染、あるいは外用療法の実施が困難な場合には、経口薬が選択されるケースもあります。治療初期の症状が重度な時期に使用し、その後はなるべく外用療法のみで維持できるようにするのが目標です。

治療目的薬剤の種類作用機序と注意点
抗真菌薬・イトラコナゾール
・フルコナゾール
・ケトコナゾール
アゾール系経口抗真菌薬。全身作用で真菌を抑制する。長期投与で肝障害の副作用リスクがあるため定期的な血液検査が推奨される。
掻痒・炎症の緩和・JAK阻害薬
(アポキル錠 / オクラシチニブ)
アレルギーの掻痒と炎症を惹起するサイトカイン(特にIL-31)のシグナル伝達経路であるヤヌスキナーゼ(JAK)を選択的に阻害し、痒みサイクルを早期に断ち切る。
掻痒・炎症の緩和・グルココルチコイド
(ステロイド)
炎症性サイトカインや炎症メディエーターの産生を抑制し、免疫反応を調整することで強い抗炎症・止痒作用がある。肝障害や易感染などの副作用リスクのため、症状に応じて用量・期間を調整する。
掻痒・炎症の緩和・抗体製剤
(サイトポイント / ロキベトマブ)
IL-31を直接的に中和し、長期的な掻痒をコントロールする。

【JAK阻害薬(アポキル錠/オクラシチニブ)について】
アポキル(オクラシチニブ)は、副作用リスクがステロイドに比べて低く、マラセチア性皮膚炎での掻痒に対してもよく使用されています。投与後4時間以内に速やかに効果を発現するなど、ステロイドに匹敵する即効性が大きな特長です。長期投与を行う際は、年に数回の血液検査を実施し、副作用(白血球減少など)をチェックすることが推奨されます。

マラセチア性皮膚炎は、根本原因となる基礎疾患を治療戦略の中心に据える必要があります。

基礎疾患疾患の管理方法
犬アトピー性皮膚炎
(CAD)
アレルギー治療薬(JAK阻害薬、抗体製剤、シクロスポリンなど)による長期的な炎症管理。食物アレルギーの除外のための除去食試験の実施。
脂漏症遺伝的または代謝異常による皮脂の過剰分泌を管理するため、食事療法、サプリメント(必須脂肪酸)、角質溶解作用のあるシャンプー(硫黄、サリチル酸など)によるスキンケアの実施。
内分泌疾患
(甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症など)
治療方法は疾患により異なるため、まず全身の精査(血液検査・超音波検査など)により確定診断を行う。マラセチア性皮膚炎の治療とともに疾患の治療を並行して行い、全身状態を正常化させる。

マラセチア性皮膚炎の治療は長期にわたりますが、病態を正しく理解し、定期的な通院と日々のケアを続けることで、症状をコントロールすることが可能です。
かかりつけの動物病院でよく相談し、愛犬が快適な毎日を送れるように支えていきましょう。

この記事のまとめは、以下のとおりです。

  • マラセチアは皮脂を栄養源とする皮膚常在菌で、異常増殖すると皮膚炎を引き起こす
  • 脇、股、指間、耳などの湿った部位で増殖しやすい
  • シャンプー療法が最も重要な治療で、週1~2回が目安
  • 犬アトピー性皮膚炎や脂漏症などの基礎疾患のコントロールが再発予防の鍵
  • 定期的なスキンケアと衛生的な生活環境の管理が重要

マラセチア性皮膚炎は再発しやすい慢性疾患ですが、適切な治療と日常的なケアで症状をコントロールすることが可能です。
愛犬の皮膚トラブルに気づいたら、まずはかかりつけの動物病院を受診し、獣医師と相談しながら最適な治療方針を決めていきましょう。定期的なシャンプーや生活環境の管理など、日々のホームケアが愛犬の快適な生活を支える大きな力となります。

動物用医薬品に関するご不明点やご相談がある場合は、動物のお薬の専門店『ねこあざらし薬店』の薬剤師にお気軽にお問い合わせください。

【獣医師監修】犬猫の皮膚トラブル、アレルギーかも?と思ったら知っておきたいこと

愛犬や愛猫が頻繁に体を掻いている、皮膚が赤くなっている、毛が抜けている…そんな症状が見られたら、それはアレルギーのサインかもしれません。
特に、食事内容や生活環境を変えた後にこれらの症状が現れたときは、何らかのアレルゲンが影響している可能性があります。

このコラムでは、アレルギーの正しい知識から治療法、そしてご自宅でできる具体的なケア方法までを分かりやすく解説します。

【この記事を読んでわかること】

  • アレルギーは免疫システムが無害なものに過剰反応して起こる
  • 犬アトピー性皮膚炎が最も多く、食物アレルギーを併発することも多い
  • かゆがる様子の動画撮影が診断に有効
  • 治療にはアレルゲンの回避、薬物療法、食事療法などがある
  • 環境管理(掃除、湿度管理)と定期的な皮膚の状態チェックが重要
  • ノミ・マダニもアレルギーの原因になるため定期的な予防が必要
  • おやつや人の食べ物を与えない、疾患によっては療法食を続けることが大切

最後まで記事を読んで、犬と猫のアレルギーについて学んでみましょう。


アレルギーとは、体の免疫システムが本来は無害な物質に対して過剰に反応し、炎症を起こす状態です。

私たちの体には、ウイルスや細菌などの外敵から身を守る「免疫応答」が備わっています。免疫応答では「抗体」という武器をつくりだして異物を排除します。この戦いの過程で炎症が起こります。

アレルギーは、この免疫応答が花粉など体にとって問題のないものに対しても起こってしまい、炎症を引き起こすことをいいます。

アレルギーというと皮膚の病気を連想する方が多いと思いますが、実は皮膚症状以外にも鼻炎や下痢などさまざまな症状を引き起こすことがあります。

アレルギーの原因となるもの(アレルゲン)には、ノミ、マダニ、ダニ、花粉、食べ物などがあります。

犬のアレルギー性皮膚炎の中で最も多いものが犬アトピー性皮膚炎となっています。
犬アトピー性皮膚炎では食物アレルギーを併発していることも多いと報告されています。

アレルギーの種類主な原因
犬アトピー性皮膚炎花粉、ダニ、カビ、ハウスダスト
食物アレルギー牛肉、鶏肉、小麦、卵、乳製品
ノミ、マダニアレルギー性皮膚炎ノミやマダニの唾液
接触性アレルギーシャンプー、洗剤、植物、化学物質

アレルギーは複数の原因がかさなって起こっている場合もあるため、総合的な対策が必要です。

食物アレルギーは食べ物が原因でおこるアレルギーのことですが、実はアレルギー全体から見ると、純粋に食物が原因のアレルギーはそれほど多いわけではありません。

食物アレルギーの場合は、食べ物に含まれるタンパク質が主な原因といわれています。ただ、どのタンパク質が原因なのかは犬・猫1頭1頭それぞれで異なります。

●犬でアレルゲンとして報告されることが多い食材
犬のアレルゲンとして報告されている主な食材には、牛肉、乳製品(牛乳、チーズ、ヨーグルトなど)、鶏肉、小麦、卵、大豆、ラム肉、トウモロコシなどがあります。

猫でアレルゲンとして報告されることが多い食材
猫のアレルゲンとして報告されている主な食材には、牛肉、魚類(特にキャットフードによく使用されるマグロ、サバ、サーモンなど)、鶏肉、乳製品、小麦、卵、ラム肉などがあります。
これらの食材は一般的なペットフードに含まれることが多いため、長期間摂取することでアレルギーを発症する可能性があります。

食物アレルギーの特徴
食物アレルギーは初めて食べたものに対して起こることがある一方で、過去に摂取したことのある食材が原因となることも多いと報告されています。
つまり、今まで問題なく食べていたものでも、ある時から突然アレルギー反応を示すようになることがあります。


激しいかゆみが最も特徴的で、頻繁に体を掻いたり、床や壁などに顔や足をこすりつけたりするしぐさが見られます。皮膚の赤みや炎症、かさぶたや脱毛も一般的です。足先を執拗に舐める行動や外耳炎も多く見られ、重症化すると皮膚が黒く厚くなることがあります。また、消化器症状として嘔吐や下痢などが見られることもあります。

皮膚が薄い部位に症状が現れやすい傾向があります。具体的には、顔(目や口の周り)、耳の内側、お腹、足の裏、わきの下、内股などです。

過剰なグルーミング(執拗に体を舐め続ける)、脱毛(特に耳の後ろ、お腹、内股)、皮膚の赤みやかさぶたなどが見られます。

猫はもともとグルーミングをよく行う動物ですが、アレルギーがあるとかゆみからひたすら特定の部位を舐め続け、その部分の毛が薄くなったり脱毛したりすることがあります。また、消化器症状として嘔吐や下痢などが見られることもあります。

1歳までに発症した、うんちの回数が多い、季節に関係なくかゆがる、口や目のまわり・背中などに炎症がある、下痢や嘔吐を伴うなどの兆候がみられる場合は、食物アレルギーが疑われます。


かゆがっている様子をスマートフォンなどで動画撮影しておくことが診断に非常に役立ちます。

夜間に激しくかゆがる様子など、診察室では確認できない症状を記録することで、診断の大きな手がかりになります。

かゆみの原因は多く存在するため、段階的に検査を進めていきます。

ステップ1:外部寄生虫の検査
ノミやマダニなどの寄生虫の予防状況を確認します。この時点で適切な予防を行っていなければ、まずは駆除薬を投与して症状の有無を観察します。

ステップ2:感染症の検査
膿皮症、マラセチアなどの感染がないか確認します。多くの場合は症状がある部位の皮膚の一部を採取し、顕微鏡で観察します。感染が見られれば抗生剤や抗真菌薬などの投与を行います。

ステップ3:アレルギーの検査
食物アレルギーを疑う場合は、アレルゲンとなる食材が含まれている可能性の低いフードのみを与える「除去食試験」という検査を行います。8週間ごとにフードの種類を変え、症状の改善が認められるかをみていきます。また、同時に、血液検査でアレルゲンに対する反応を調べる検査も行う場合があります。

ステップ4:アトピー性皮膚炎の可能性
1~3の検査や治療を行っても改善が見られない場合は、アトピー性皮膚炎の可能性が高くなります。
ステップ3のアレルゲンを調べる血液検査では、同時に環境のアレルゲン(ダニ・花粉など)についても調べることができますので、その結果も診断の大きな手掛かりになります。

診断の際には、いくつかの重要なポイントがあります。
まず季節性があるかどうか、つまりアレルゲンとなりやすい花粉の時期に悪化するかどうかを確認します。発症年齢も重要で、多くは1〜3歳で発症することが多いとされています。
また、症状の出る部位が特定の部位に集中する傾向があるかも診断の手がかりになります。

診断には時間がかかる場合がありますが、獣医師とよく相談しながら検査を進めることが重要です。


アレルギーの対処方法の基本はアレルゲンを取り除くことです。
ノミやマダニが原因であれば適切なスケジュールにて予防を行うと共に、清潔な環境を整えることが大切です。食物アレルギーであればアレルゲンを含まない食事を与えることが重要です。
アトピー性皮膚炎と診断された場合でも、フードを変更することで症状がよくなる場合も多くあります。

アレルゲンを取り除くことに加えて症状の程度によっては以下のような薬物を使用することもあります。

分子標的薬(JAK阻害薬・ヤヌスキナーゼ阻害薬

  • 比較的副作用が少なく、かゆみや炎症を抑える効果があります
  • かゆみ止めの第一選択として使われることも多い薬です
  • オクラシチニブは『犬アトピー性皮膚炎の治療ガイドライン(2015年アップデート版)』において、急性及び慢性の犬アトピー性皮膚炎に「推奨度A」で推奨されています

抗ヒスタミン剤

  • かゆみや炎症を抑える効果があります
  • 副作用が少ないですが、効果も比較的穏やかで、効き目には個体差があります

ステロイド剤

  • 強力な抗炎症作用があります
  • 長期使用には副作用のリスクがあるため慎重な管理が必要です

免疫抑制剤

  • 重度のアレルギーに使われることがあります
  • 長期使用には副作用のリスクがあるため慎重な管理が必要です

抗生物質・抗真菌薬

  • 細菌やマラセチアなどによる二次的な皮膚感染症を治療します

食物アレルギーが疑われる場合は、食事療法が取り入れられます。
基本的には原因となっている食べ物を与えないことが大切です。
具体的には、今まで食べたことのないタンパク質を選ぶことになります。
その際、できるだけ消化性の高い良質のタンパク質を、できるだけ種類を限定して与えます。多くの場合、除去食試験の際に使用して改善が見られた療法食を継続して使用します。

●新奇タンパク食(今までに食べたことのないタンパク質の食事)
最近では、ペットフード会社から以下に示すような様々な新奇タンパク質源となる肉を使用したフードが販売されています。

  • ダック(鴨・アヒル)
  • ターキー(七面鳥)
  • 鹿肉
  • バイソン
  • カンガルー
  • うさぎ
  • うずら
  • ダチョウ

これらは一般的なペットフードにはあまり使用されないタンパク質源です。
ただし、個体ごとに食歴が異なるため、獣医師が今まで食べたことのないタンパク質を選択します。

加水分解タンパク食(アミノ酸オリゴペプチド食)
タンパク質をアミノ酸や、アミノ酸が2〜数十個結合したオリゴペプチド(ペプチド)にまで細かく分解することで、免疫システムが反応しにくくなるように調整した療法食となります。


食事アレルギーに対する食事管理は、一生のおつきあいとなります。獣医師の指導のもと、継続して行いましょう。また、その他の治療方法としてアレルゲンを洗い流したり、皮膚のバリア機能を正常化したりすることを目的としてシャンプー療法も行われることがあります。


食事管理は獣医師の指導のもと継続して行いましょう。

1. おやつ、人の食べ物は与えないようにしましょう
せっかく食物アレルギーに対応した療法食でタンパク質の種類を限定しているのに、おやつや人の食べ物を与えてしまうと、与えるタンパク質の種類を限定することができなくなってしまいます。
療法食以外は何も与えないようにしましょう。

家族のなかで知らない間におやつや人の食べ物を与えてしまっている人がいないように、家族全員におやつや人の食べ物をあげてはいけないことを知らせ、守ってもらうようにしましょう。また、拾い食いにも注意しましょう。

2. 食事療法食の使用を勝手にやめないようにしましょう
基本的にアレルゲンとなってしまった食べ物は生涯ずっとアレルゲンであり続けるため、療法食は生涯ずっと続けていく必要があります。
また、皮膚が新しく生まれ変わるには3~4週間ほどの時間が必要なこと並びに治療を始めてから変化が見られるまで少なくとも犬で5週間、猫で6週間かかり、90%以上の犬猫で症状が改善するには8週間かかるとの報告もあります。

よって、改善しないからといって使用をやめるのではなく、まずは獣医師が選んだ療法食を続けて様子を観察しましょう。


●清潔な環境を保つ
特にアトピー性皮膚炎の場合は環境アレルゲンを減らすために、家の中を清潔に保つことを心がけましょう。
こまめな掃除(週2〜3回以上が目安)、空気清浄機の使用、寝具の定期的な洗濯(週1回程度が目安)、湿度管理(湿度50〜60%を保つことが推奨されます)などが効果的です。

ダニやカビの発生を防ぐためにはこまめな掃除や湿度管理が効果的です。これにより、症状が悪化するのを防ぐことが期待できます。

●アレルゲンとの接触を減らす
アトピー性皮膚炎にすでに罹患してもいなくても、可能な限りアレルゲンとなる物質との接触は控えることが大切です。
花粉の季節は散歩後に足や体を拭くこと、香りの強い芳香剤や柔軟剤は避けることなども有効です。

毎日の触れ合いの中で、皮膚の赤みや腫れ、脱毛の有無、かさぶたや傷、耳の汚れや赤みなどをチェックしましょう。早期に異常を発見することで、適切に対処することができます。

皮膚と被毛の健康は、食事から摂る栄養にも大きく左右されます。良質なタンパク質を含むバランスの取れた食事を与えることで、皮膚トラブルを予防できる可能性があります。

適切なスケジュールにてノミ・マダニの予防を行っていない場合、脱毛の原因として、まずは外部寄生虫によるものかどうかの確認が大切です。

ノミアレルギー性皮膚炎は、たった1匹のノミに刺されただけでも激しいかゆみと脱毛を引き起こすといわれており、ノミ・マダニ駆除薬を使用することで症状が改善することがあります。

定期的なノミ・マダニに対する予防は、これらの寄生虫による皮膚トラブルを未然に防ぐために非常に重要です。

もし、皮膚に何かしらの皮膚炎症状を発見したら、患部を清潔に保ち、エリザベスカラーなどを利用して掻きむしりを防ぐこと、ストレスを軽減することが大切です。シャンプーや患部の洗浄は、かえって皮膚に刺激を与えることがあるため、無理に洗浄せず、そのまま動物病院を受診するのが最善です。

脱毛やかゆみが続く、膿や血が出ている、脱毛が広がっている、皮膚から悪臭がする、食欲がない、元気がないといった症状が見られたら、早めに獣医師に相談してください。軽度の皮膚トラブルでも、放置すると悪化し、治療が長引くことがあります。

診察の際には、自宅での様子、症状が出始めた時期、最近の環境や食事の変化、他に見られる症状、過去の病歴などの情報を獣医師に伝えると診断がスムーズになります。

また、自宅でのかゆがる様子や掻く頻度、グルーミングの状態などを動画で撮影しておくと、獣医師への説明がより正確になります。

特に、普段は見せない行動や、夜間に激しくかゆがる様子など、診察室では確認できない症状を記録しておくことで、診断の大きな手がかりになります。

これらの情報を基に、獣医師が正確な診断を行い、適切な治療を開始できるでしょう。

●人用の薬を勝手に使わない
人間用の薬は、犬や猫には有害なものがあります。例えば、猫はアセトアミノフェン(解熱鎮痛薬)に対して中毒を起こすことが知られており、命に関わることもあります。お薬投与の際には必ず獣医師の診察を受けてください。

症状が改善しても勝手に治療をやめない
アレルギーは慢性疾患であり、症状が治まっても根本的な体質は変わりません。治療を中断すると再発する可能性が高いため、獣医師の指示に従って継続することが大切です。

過度な洗浄やシャンプー
かゆがっているからといって、頻繁にシャンプーをすると、かえって皮膚のバリア機能を低下させることがあります。獣医師から指示された通りの頻度と方法で行いましょう。


アレルギーの治療は長期にわたりますが、病態を正しく理解し、定期的な通院と日々のケアを続けることで、症状の頻度を抑えてあげることが可能です。

この記事のまとめ

  • アレルギーは免疫システムが無害なものに過剰反応して起こる
  • 犬アトピー性皮膚炎が最も多く、食物アレルギーを併発することも多い
  • かゆがる様子の動画撮影が診断に有効
  • 治療にはアレルゲンの回避、薬物療法、食事療法などがある
  • 環境管理(掃除、湿度管理)と定期的な皮膚の状態チェックが重要
  • ノミ・マダニもアレルギーの原因になるため定期的な予防が必要
  • おやつや人の食べ物を与えない、疾患によっては療法食を続けることが大切

犬と猫のアレルギーは適切な知識と治療でコントロールできる慢性疾患です。

アレルギー性皮膚炎は、犬や猫にとってつらい症状を引き起こしますが、適切なケアや治療で症状を和らげることができます。早期の発見と治療が大切であり、日常生活での予防やケアも欠かせません。

愛犬や愛猫の皮膚や被毛に気になることがあれば、早めに動物病院を受診することをおすすめします。まずはかかりつけの動物病院を受診し、獣医師と相談しながら最適な治療方針を決めていきましょう。日々の観察と記録、そして適切な投薬管理が、愛犬・愛猫の穏やかな生活を支える大きな力となります。

動物用医薬品に関するご不明点やご相談がある場合は、動物のお薬の専門店『ねこあざらし薬店』にお気軽にお問い合わせください。

犬のてんかん~正しい知識とケアで支える、慢性疾患との向き合い方~【獣医師執筆】

愛犬が突然倒れ、手足をバタつかせる「てんかん発作」。
何の予兆もなく起こる場合が多いため、飼い主さんは発作を起こしている愛犬の姿に驚き、大きなショックを受けることも少なくありません。
しかし、てんかんは適切な知識と治療があればコントロールできるケースも多い慢性疾患です。

このコラムでは、てんかんの正しい知識から最新の治療薬、そしてご自宅で愛犬を支えるための具体的なケア方法までを分かりやすく解説します。


てんかん(Epilepsy)とは、「24時間以上あけて、少なくとも2回以上の原因不明の発作が生じる病態」と定義されています。

つまり、一度きりの発作ではてんかんとは診断されません。発作は、脳の神経細胞が一時的に異常な電気信号を放出し、過剰に興奮することによって引き起こされます。

ここで大切なのは、「てんかん発作」と「反応性発作」を区別することです。

・反応性発作(非てんかん)
低血糖や肝臓の病気、中毒など、脳以外の全身的な病気が原因で起こる一時的な発作です。原因となっている病気を治療することで発作が起きなくなります。

・てんかん
全身性の病気が除外され、脳自体に原因がある、あるいは原因不明の発作ことをいいます。

てんかんはその原因によって、遺伝的な体質の可能性か、脳の疾患かの二つに分類されます。

分類説明犬での割合(目安)主な原因
特発性てんかん(IT)脳に明らかな異常や病変が見つからないタイプ。多くは遺伝的な体質が関わると考えられている。約69%(約7割)遺伝的素因、神経細胞の機能的なバランスの崩れ
構造性てんかん(ST)脳腫瘍、脳炎、外傷、脳血管障害など、脳に器質的な病変(異常な構造)があるタイプ。約31%(約3割)脳炎、脳腫瘍、脳の奇形、外傷など

【年齢と原因の目安】
てんかんの初発年齢は、原因を探るための重要な手がかりです。

  • 若齢(5歳未満)で初発:特発性てんかん(IT)の可能性が高い。
  • 高齢(5歳以降)で初発:脳腫瘍や脳炎など、構造性てんかん(ST)の可能性が非常に高くなる。

てんかんの診断は、実際の発作が起きている場面を獣医師が直接見る機会は少ないため、飼い主さんからの情報と精密検査によって進められます。

まず、発作の頻度、持続時間、発作時の様子などを詳しく獣医師に伝えます。
最も重要なのは、発作時の様子をスマートフォンなどで動画撮影しておくことです。
真のてんかん発作であるか、どのような発作型であるかを正確に判断する大きな手掛かりとなります。

また、発作が起きていない間欠期に神経学的検査を行います。
もしこの検査で異常があれば、脳に病変がある構造性てんかん(ST)の可能性が高まります。特発性てんかん(IT)の場合、間欠期は正常で異常所見が認められません。

てんかんと診断する前に、低血糖や肝臓病などの全身性の病気(反応性発作の原因)を除外する必要があります。このため、血液検査や尿検査などの基本的なスクリーニング検査が必須となります。

全身性の病気が除外されたら、特発性か構造性かを鑑別します。

・MRI検査:脳の腫瘍、炎症、出血などの器質的病変がないかを確認するために行われます。このMRIで異常が見つからなければ、臨床的に「特発性てんかん」と診断されます。

・脳波検査(EEG):動物への負担が少なく、抗てんかん薬で脳の異常興奮がしっかり抑えられているかなどを判断します。治療効果を客観的に評価する上で有用です。


抗てんかん薬(AEDs)による治療は、発作を抑えることだけでなく、『発作が繰り返されることで脳に生じる不可逆的なダメージを防ぐこと』が最大の目的です。

発作が軽度で間隔が2ヶ月以上あいている場合は治療を見送ることもありますが、以下のいずれかの条件を満たす場合は、速やかに治療を開始する必要があります。

  1. 発作間隔が2ヶ月を切る場合(頻繁な発作)
  2. 群発発作(24時間以内に複数回発作)を繰り返す場合
  3. 重積発作(5分以上発作が続く、または発作の間に意識が戻らない状態)を繰り返す場合

てんかん治療の理想的な目標は「発作の完全抑制」ですが、現実的には、発作の頻度、重症度、持続時間を減らし、副作用を最小限に抑えることで愛犬のQOL(生活の質)を維持することを目指します。


てんかん治療の基本は、発作を抑えるための抗てんかん薬(AEDs)による内科療法です。
抗てんかん薬の役割は、脳の異常な興奮を落ち着かせ、発作の頻度や重症度を下げ、発作が繰り返されることによる脳のダメージを防ぐという重要な目的があります。

現在、犬のてんかん治療で主に使用される薬剤には、主に以下の種類があります。

薬剤名選択の目安主な作用(興奮を抑える仕組み)
ゾニサミド (ZNS)第一選択薬
併用薬
神経細胞の異常興奮を抑える(Na+チャネル抑制など)。
フェノバルビタール (PB)昔からある第一選択薬抑制性の神経伝達物質(GABA)の働きを強める。高用量では肝障害のリスクがある。
イメピトイン(IMP)獣医療で最も新しいAEDs
(2025年現在)
抑制性の神経伝達物質(GABA)の働きを強める。神経細胞の異常興奮を抑える働きもある。近年日本でも発売され、副作用が比較的少ない薬として注目されている。
臭化カリウム (KBr)第二選択薬
併用薬
神経細胞の膜を安定化させる。
効果の発現・安定に時間がかかる。
レベチラセタム (LEV)救急薬
併用薬
興奮物質の放出を抑える(SV2A結合)。
1日3回の投薬が必要。

どの薬を選ぶかは、愛犬の状況によって異なります。薬の選択は薬効だけでなく、副作用の特性、投与のしやすさ、愛犬の健康状態を総合的に判断して行われます。

・愛犬の健康状態:特に肝臓や腎臓に基礎疾患がある場合、薬ごとにその代謝や排泄経路が異なるため、特定の薬剤(例:肝臓に負担がかかりやすいフェノバルビタール)は避けて、より負担の少ない薬剤を選択することがあります。

・副作用を考慮:薬によって、沈静、多飲多尿、食欲不振など、現れやすい副作用が異なります。愛犬の性格や生活環境を考慮し、なるべく負担なくQOL(生活の質)を維持できる薬を選びます。

・投与の頻度:薬の種類により、1日1~3回程度の投薬が必要になります。お仕事の都合で、日中の投薬が難しいなどのケースも少なくありません。飼い主さんが確実に、決まった時間に投薬できるかどうかも重要な判断基準です。

ゾニサミドは、現在、犬の特発性てんかんの治療において、フェノバルビタールと並ぶ主要な第一選択肢の一つとして推奨されています。

ゾニサミドの有用性

・広域スペクトラム
幅広いタイプの発作に有効です。

・肝臓への配慮
従来の標準薬であるフェノバルビタールと比較して、肝臓の酵素を誘導する作用が少なく、肝臓への負担が少ないことが大きなメリットです。既存の肝機能に不安がある犬や、フェノバルビタールによる重度の副作用が懸念される場合に特に優先されます。

・投与のしやすさ
比較的作用時間が長く、1日2回の投与で安定した血中濃度を保てるため、飼い主さんにとっても負担が少なく、投薬コンプライアンス(規則正しい投薬)を維持しやすいです。

・注意点
一般的な副作用は軽度な沈静や食欲不振などですが、長期投与では稀に腎結石のリスクが指摘されています。定期的な血液・尿検査によるモニタリングは他の薬と同様に必要となります。

抗てんかん薬の治療では、定期的な「薬の血中濃度のモニタリング」が非常に重要です。
薬の効き目には個体差があるため、この検査によって「効きすぎ(副作用が頻発)でもなく、効かなすぎ(発作が再発)もしない」最適な投薬量を見つけ出し、長期的に調整していく必要があります。


てんかんは動物病院での治療だけでなく、ご自宅での日々のケアが発作コントロールの重要なカギとなります。

ご自宅でのケアで重要なのは、発作日誌の記録をつけることです。
日誌は、獣医師が薬の用量調整を行うための大切な客観的データとなります。

記録すべき内容

  • 発作が発生した日時と時間帯
  • 発作の持続時間
  • 発作型(全身の痙攣、顔面だけの引きつりなど)
  • 発作前後の愛犬の行動(いつもと違う行動、沈静など)
  • いつもと違う重篤な発作が起きた場合の詳細

発作は突然起こりますが、飼い主さんは決してパニックにならず、冷静に対応することが最も重要です。発作中に慌てて抱きかかえたりすると、かえって危険な場合もあるため注意が必要です。

発作時には、以下のような対処がおすすめです。

ポイント具体的な対処方法
安全の確保発作中の犬が怪我をしないよう、周囲の危険物から遠ざけます。口の中に手を入れるのは噛まれる危険があるため厳禁です。
動画撮影可能であれば、発作の様子を動画で記録します。
注意深く見守る体を揺さぶったりせず、発作が終わるのを待ちます。呼吸が止まったり、チアノーゼを起こしていないかなどもチェックしましょう。

以下の状態では、脳に大きなダメージを与えるリスクが高いため、速やかに動物病院に連絡して指示を受けましょう。

  • 発作が5分以上継続している場合(重積発作)
  • 24時間以内に複数回、発作を繰り返している場合(群発発作)
  • 発作中あるいは発作後に呼吸が確認できない場合

てんかんの治療は長期にわたりますが、病態を正しく理解し、定期的な通院と日々のケアを続けることで、発作の頻度を抑えてあげることが可能です。
かかりつけの動物病院でよく相談し、愛犬が穏やかな毎日を送れるように支えていきましょう。

この記事のまとめは、以下のとおりです。

  • てんかんは24時間以上あけて2回以上の原因不明の発作が生じる病態
  • 特発性てんかん(約7割)と構造性てんかん(約3割)に分類される
  • 発作時の動画撮影が診断に非常に有効
  • 治療は抗てんかん薬(AEDs)による内科療法が基本
  • ゾニサミドは肝臓への負担が少ない第一選択薬の一つ
  • 自宅での発作日誌の記録が治療効果の判断に重要
  • 発作が5分以上続く、または24時間以内に複数回起こる場合は緊急受診が必要

犬のてんかんは適切な知識と治療でコントロールできる慢性疾患です。

愛犬の発作に不安を感じたら、まずはかかりつけの動物病院を受診し、獣医師と相談しながら最適な治療方針を決めていきましょう。日々の観察と記録、そして適切な投薬管理が、愛犬の穏やかな生活を支える大きな力となります。

動物用医薬品に関するご不明点やご相談がある場合は、動物のお薬の専門店『ねこあざらし薬店』の薬剤師にお気軽にお問い合わせください。

【獣医師監修】犬猫の療法食『腎臓・尿路・肥満・アレルギー』症状別の選び方ガイド

療法食は、特定の健康状態に応じた栄養管理をサポートするために、栄養成分が調整された特別なペットフードです。
この記事では、犬猫の療法食について、主な種類や選び方、切り替え方法、食べない時の対策などを幅広く解説しています。

【この記事を読んでわかること】

  • 療法食は特定の健康状態に応じて栄養成分が調整されたフード
  • 腎臓サポート、尿路疾患サポート、消化器サポートなど目的別に種類がある
  • 療法食への切り替えは基本的には段階的に行うことが重要
  • 食べない場合はトッピングや温める、メーカーを変更するなどの対策が有効
  • 療法食の使用は必ず獣医師の指導のもとで行う

最後まで記事を読んで、犬猫の療法食について学んでみましょう。

療法食の購入を検討中の方は、ぜひ動物のお薬の専門店「ねこあざらし薬店」にご相談ください。


療法食とは、特定の健康状態や疾患に対応するために、栄養成分が調整された動物用のフードです。

通常のペットフードとは異なり、タンパク質やミネラル、脂質などの特定の栄養素の量が調整されており、獣医師の指導のもとで使用されます。

療法食は以下のような目的で使用されます。

『栄養管理のサポート

腎臓病や尿路結石、消化器疾患などの健康問題を抱える犬猫に対して、適切な栄養バランスを提供します。

例えば、腎臓病用の療法食では、リンやナトリウム、タンパク質の含有量が調整されており、腎臓への負担を軽減するように設計されています。

『健康維持の補助かつ疾患の治療』

療法食は栄養管理を通じて健康維持をサポートすると共に疾患の治療方法の1つとして使用することがほとんどです。

適切な栄養バランスを維持することで、疾患の原因を減らしたり、再発を防いだりなどの効果が期待されます。

『症状の進行管理』

特定の健康状態において、食事による栄養管理を行うことで、症状の進行に配慮した対応が可能になります。

獣医師の診断と指導に基づいて適切な療法食を選択することが、犬猫の長期的な健康管理に役立ちます。


犬猫の療法食には、健康状態に応じてさまざまな種類があります。

項目内容
対象慢性腎臓病の犬猫
特徴リン、ナトリウム、タンパク質の含有量を調整
目的腎臓への負担を軽減し、健康管理をサポート

腎臓サポート療法食は、慢性腎臓病の犬猫のために、特定の栄養素が調整されたフードです。
腎臓は主に体内の老廃物をろ過する重要な器官ですが、機能が低下するとその働きが十分に行われなくなります。

このフードは、リンやナトリウムの含有量を制限し、良質なタンパク質を適切な量で配合することで、腎臓への負担を軽減します。

また、水分含量が多めのウェットタイプも用意されており、適切な水分補給を促進する役割も果たします。

腎臓病は進行性の疾患であるため、早期からの栄養管理が重要です。

項目内容
対象尿路結石、膀胱炎のある犬猫
特徴尿のpHバランスを調整、ミネラル含有量を制限
目的尿路の健康維持をサポート

尿路疾患サポート療法食は、尿路結石や膀胱炎などの尿路トラブルを抱える犬猫のためのフードです。

尿のpHバランスを適切に保つことで、結石の形成リスクに配慮した栄養管理を行います。

また、マグネシウムやカルシウムなどのミネラル含有量が調整されており、結石の原因となる成分の過剰摂取を防ぎます。

さらに、犬猫が十分な水分を摂取できるように、ウェットタイプの製品が多く用意されています。

適切な食事選択と水分摂取により、尿路の健康を配慮した栄養管理が期待できます。

項目内容
対象下痢、嘔吐、消化不良のある犬猫
特徴消化しやすい成分、食物繊維を配合
目的消化器の健康維持をサポート

消化器サポート療法食は、消化器系に問題を抱える犬猫のために設計されたフードです。

消化に優しい成分で構成されており、胃腸への負担を軽減します。

また、適切な食物繊維が配合されており、腸内環境を整える役割を果たします。

下痢や嘔吐、食欲不振などの症状がある場合、消化器サポート療法食を使用することで、消化器系の健康維持と栄養管理が期待できます。

項目内容
対象体重管理が必要な犬猫
特徴低カロリー、高タンパク質、食物繊維を配合
目的適切な体重管理をサポート

肥満予防サポート療法食は、体重管理が必要な犬猫向けに開発されたフードです。

低カロリーでありながら、犬猫に必要な栄養素をバランスよく含んでおり、満腹感を得られる工夫がされています。

肥満は糖尿病や関節疾患、心臓病などさまざまな健康リスクを高めるため、適切な体重管理は犬猫の健康維持にとって重要です。

療法食を通じて、適切な体重管理をサポートすることが期待されます。

項目内容
対象食物アレルギーのある犬猫
特徴アレルゲンとなる成分を除去または低減
目的アレルギー症状の管理をサポート

アレルギー対応療法食は、特定の食物アレルギーを持つ犬猫のために開発されたフードです。

アレルギー反応が起きにくい原材料と成分が使用され、一般的に単一のタンパク源と炭水化物源で構成されています。

これにより、飼い主はアレルギーの原因を特定しやすくなります。

皮膚炎や消化器症状などのアレルギー症状がある場合、獣医師の診断のもとで適切な療法食を選択することが推奨されます。


療法食への切り替えは、獣医師からすぐに切り替えるよう指示がない限り、基本的に1週間かけて段階的に行いましょう。

急激な食事の変更は、犬猫にストレスを与え、消化不良や食欲不振の原因となることがあります。

療法食への切り替えは、一般的に以下のようなステップで行います。

日数従来のフード療法食
1〜2日目75%25%
3〜4日目50%50%
5〜6日目25%75%
7日目以降0%100%

最初の数日は、従来のフードに療法食を少量混ぜて与え、徐々に療法食の割合を増やしていきます。
この方法により、犬猫が新しいフードに慣れることができ、消化器官への負担も軽減されます。

  • 獣医師の指示に従って切り替えのペースを調整する
  • 犬猫の様子を観察し、下痢や嘔吐などの異常があればすぐに獣医師に相談する
  • 切り替え期間中は、他のフードやおやつを与えないようにする
  • 十分な水分摂取を促す

犬猫が療法食を食べてくれない場合、以下のような対策を試してみましょう。

獣医師の指導のもと、疾患の治療に影響を与えないトッピングを加えることで、嗜好性を高めることができます。

例えば、以下のようなトッピングが効果的です。

  • 鶏肉や魚のゆで汁
  • 少量の鶏ささみ(茹でたもの)
  • 犬猫用のスープ

ただし、トッピングの成分が療法食の目的に影響を与えないよう、必ず獣医師に相談してから使用しましょう。

ドライフードやウェットフードを少し温めることで、香りが引き出され、犬猫が食べやすくなることがあります。

電子レンジで10〜15秒程度温めるか、ぬるま湯をかけてふやかすなどの方法が有効です。

温めすぎると栄養素が損なわれる可能性があるため、人肌程度の温度を目安にしましょう。

食事をする場所を静かで落ち着いた場所に移すことで、ストレスを軽減し、リラックスして食事を取ることができるかもしれません。

周囲の騒音や刺激を排除し、落ち着いた環境を提供することが大切です。

また、食器の種類や高さを変えることで、食べやすくなる場合もあります。

1日の給餌回数を増やし、1回あたりの量を減らすことで、食べやすくなることがあります。

また、決まった時間に食事を与えることで、食事のリズムが生まれ、犬猫が食事を期待するようになります。

上記の対策を試しても療法食を食べない場合は、必ず獣医師に相談しましょう。
獣医師は、メーカーが異なっても目的が同じ療法食や、他の栄養管理方法を提案してくれます。

また、食欲不振の背景に病気の進行や他の問題がある可能性もあるため、早めの相談が重要です。


療法食を使用する際には、以下の点に注意しましょう。

療法食は必ず獣医師の指示に基づいて使用する必要があります。

自己判断での変更や中止は、犬猫の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
獣医師は、犬猫の健康状態に応じた最適な療法食を提案してくれます。

療法食の効果を最大限に引き出すためには、他のフードやおやつを与えないことが重要です。

特定の成分に制限がある療法食の場合、他の食べ物を与えることで、その効果が損なわれる可能性があります。
どうしてもおやつを与えたい場合は、必ず獣医師に相談しましょう。

犬猫の体重や健康状態に応じて、適切な給餌量を守ることが大切です。
過剰な給餌は肥満を招き、不足は栄養不足の原因となります。

療法食のパッケージに記載されている給餌量を参考にし、獣医師と相談しながら調整しましょう。

療法食を使用している間は、定期的に動物病院で健康状態を確認することが重要です。

獣医師の診察を受けることで、療法食の効果をモニタリングし、必要に応じて種類や給餌量を調整することができます。
血液検査や尿検査などを定期的に行い、健康状態の変化を把握しましょう。

療法食を使用する際は、十分な水分摂取を促すことが大切です。

特に腎臓病や尿路疾患の場合、適切な水分摂取が健康管理に重要な役割を果たします。
新鮮な水を常に用意し、複数の場所に水飲み場を設置するなどの工夫をしましょう。


A. はい。療法食は総合栄養食として設計されており、療法食と水だけで必要な栄養を満たせます。

A. 獣医師が優先すべき疾患を判断し、最適な療法食を選択します。必ず相談しましょう。

A. 疾患の種類や進行度によります。慢性腎臓病など継続が必要な場合と、一時的な使用で済む場合があります。

A. 療法食による適切な栄養管理は、病気の進行に配慮し、長期的な医療費の軽減にもつながります。


ここまで、犬猫の療法食について、主な種類や選び方、切り替え方法、食べない時の対策などを幅広く解説してきました。

この記事のまとめは、以下のとおりです。

  • 療法食は特定の健康状態に応じて栄養成分が調整されたフード
  • 腎臓サポート、尿路疾患サポート、消化器サポートなど目的別に種類がある
  • 療法食への切り替えは段階的に行うことが重要
  • 食べない場合はトッピングや温めるなどの工夫が有効
  • 療法食の使用は必ず獣医師の指導のもとで行う

療法食は、犬猫の健康管理において重要な役割を果たすものであり、獣医師の指導のもとで適切に使用することが大切です。

愛犬・愛猫の健康状態に応じた療法食を選択し、栄養管理を通じて健康維持をサポートしましょう。
療法食に関して疑問や不安がある場合は、必ず獣医師に相談し、適切なアドバイスを受けることが重要です。

療法食の購入を検討中の方は、ぜひ動物のお薬の専門店「ねこあざらし薬店」にご相談ください。

ねこあざらし薬店では、決済完了から最短翌日にお薬をお受け取りいただけます。
また、療法食に関するお悩みは、24時間いつでもLINEから薬剤師へご相談いただけます。
ねこあざらし薬店で販売している療法食は、以下からご覧ください。

【獣医師監修】犬猫の歯肉炎の治療薬は?インターベリーαの効果や使い方を解説

犬や猫の歯肉炎の症状を和らげるインターベリーαという医薬品があります。
この記事では、犬猫の歯肉炎について、主な原因や症状、インターベリーαの効果や使い方、自宅でできる口腔ケアなどを幅広く解説しています。

【この記事を読んでわかること】

  • 2歳以上の犬猫の約8割が歯周病に罹患している
  • インターベリーαは歯肉炎の症状を和らげる医薬品
  • 歯周病の悪化と慢性腎臓病の発症には強い相関関係がある
  • 自宅での口腔ケアは歯磨きが基本

最後まで記事を読んで、犬猫の歯肉炎とインターベリーαについて学んでみましょう

インターベリーαの購入を検討中の方は、ぜひ動物のお薬の専門店「ねこあざらし薬店」にご相談ください。


歯肉炎とは、口腔内に溜まった歯垢や歯石によって細菌が繁殖し歯茎に炎症が起こった状態のことをいいます。

歯周病は歯肉炎が悪化してしまった結果、歯の周囲の歯肉や骨などの組織が炎症を起こし破壊される疾患のことを示し、歯肉炎は歯周病の初期症状の一つです。

歯肉炎とは

2歳以上の犬や猫の約8割が歯周病に罹患しているといわれており、非常に多くのペットが歯周病のリスクにさらされています。

リスクの高い個体では1歳未満から歯周病が始まっていることもあるため、早期からの予防が重要です。

歯周病になると、以下のような症状が見られます。

  • 口臭
  • 食欲不振・体重減少
  • 眼の下の腫れ
  • 歯茎の赤み・腫れ
  • 口からの出血

歯周病の細菌が体内に侵入すると、さまざまな病気を引き起こすリスクが高まります。

特に猫では、歯周病の悪化と慢性腎臓病の発症との間に強い相関関係があることが指摘されております。
健康な歯を持つ猫と比較し中等度の歯周病の猫では約14倍、重度歯周病の猫では約35倍も慢性腎臓病を発症するリスクが高まると報告されています。

また、犬においても心臓の弁に菌が付着することで僧帽弁閉鎖不全症や感染性心内膜炎などの心疾患のリスクが高まるとの報告があります。


項目内容
有効成分改変イヌインターフェロン アルファ-4発現イチゴ果実凍結乾燥粉末
適応症犬および猫の歯肉炎の症状軽減
対象動物6ヶ月齢以上の犬および猫
内容量2.75g(10回分)

インターベリーαは、犬と猫の歯周病の初期症状の一つである歯肉炎の症状を和らげるための医薬品です。

2023年2月10日付けで猫の歯肉炎に対する適応症が承認され、犬だけでなく猫にも使用できるようになりました。

インターフェロンαは口腔内の免疫を活性化させる効果を持っています。
口の中の免疫バランスを改善し、歯周病の原因となる細菌数を減少させます。
それにより、歯肉炎の症状を軽減する効果が期待できます。

  • イチゴ風味で使いやすい
  • 動物用医薬品として国から承認を得ており、ペット保険の適用になる場合もある
  • スケーリングや歯みがき等、適切なオーラルケアを並行しながら定期的に使用することで歯周病の進行を抑制することが期待できる

『用法・用量

インターベリーαの使い方は以下のとおりです。

  1. 獣医師が本剤1包装分(2.75g:10回分)を1回分ずつに分包する
  2. 飼い主は指先を水道水で濡らして本剤の1回分を1日1回、犬または猫の歯肉に塗り込み投与する
  3. 投与は3~4日に一回の間隔で合計10回行う

大体週2回、合計5週間使うイメージです。

『使用時の注意点

インターベリーは歯肉に塗る薬です。飲ませても効果はありません
・指先に水を少しつけて、その水でインターベリーの粉を溶かしながら歯肉に塗る
・力加減に注意し、できるだけ優しく行う


歯周病を予防するためには、日頃の口腔ケアが重要です。

最も良いとされる方法はペット用のデンタルブラシで歯磨きをしてあげることです。
できれば毎日、お家でのデンタルケアを実践しましょう。

嫌がる犬や猫も少なくないので、少しずつ時間をかけて習慣づけてあげることが大切です。

まずはお口周りを触ってみて嫌がらなければ、前歯から始めて奥歯までタッチできるか挑戦します。

問題なく歯に触れるようになれば、愛犬や愛猫が好きな風味のデンタルジェルなどを指先につけてゆっくりと歯を磨いてあげるようにしましょう。

デンタルジェルでの歯磨きが上手にできるようになったら、いよいよ歯ブラシを使用して磨いてあげてみてください。

歯ブラシでの歯磨きが難しい場合は、以下のような方法もあります。

・使い捨てタイプの歯磨きシート
・おもちゃタイプ:楽しく遊びながらケア
・おやつタイプ:自然と噛むだけでケア
・デンタルジェル

・歯周病の兆候がある場合、歯茎がもろくなっていて出血や痛みを感じやすいことがあります
・犬や猫が不快感を覚えると、後々の歯のケアが難しくなる可能性があります


ここまで、犬猫の歯肉炎について、主な原因や症状、インターベリーαの効果や使い方、自宅でできる口腔ケアなどを幅広く解説してきました。

この記事のまとめは、以下のとおりです。

  • 2歳以上の犬猫の約8割が歯周病に罹患している
  • インターベリーαは歯肉炎の症状を和らげる医薬品
  • 歯周病の悪化と慢性腎臓病や心疾患の発症には強い相関関係がある
  • 自宅での口腔ケアは歯磨きが基本

犬猫の歯周病は多くのペットが抱える問題であり、早期からの予防と適切な治療が重要です。

インターベリーαは歯肉炎の症状を和らげる効果が期待できますが、日頃の口腔ケアも並行して行うことが大切です。歯肉炎の症状が見られたら、まずはお近くの動物病院を受診し、獣医師の指示を理解した上で適切にお薬を使用しましょう。

なお、インターベリーαの購入を検討中の方は、ぜひ動物のお薬の専門店「ねこあざらし薬店」にご相談ください。

ねこあざらし薬店では、決済完了から最短翌日にお薬をお受け取りいただけます。
また、お薬に関するお悩みは、24時間いつでもLINEから薬剤師へご相談いただけます。
ねこあざらし薬店で販売しているインターベリーαは、以下からご覧ください。

犬猫の主な寄生虫は?各寄生虫の駆虫薬について解説【獣医師執筆】 

この記事では、犬や猫の主な寄生虫について解説しています。

【この記事を読んでわかること】

  • 犬や猫の寄生虫は「内部寄生虫」と「外部寄生虫」の大きく2種類に分かれる
  • 犬の主な内部寄生虫は犬回虫や犬鉤虫、瓜実条虫など
  • 猫の主な内部寄生虫は猫回虫や猫鉤虫、瓜実条虫など
  • 外部寄生虫にはノミやマダニ、ヒゼンダニなどがある
  • 寄生虫を予防するためには、定期的な駆虫薬の投与や衛生管理が重要

最後まで記事を読んで、犬や猫の主な寄生虫について学んでみましょう。

犬猫のお薬についてお悩みの方は、ぜひ動物のお薬の専門店「ねこあざらし薬店」にご相談ください。


犬や猫の寄生虫は、大きく分けてA. 内部寄生虫B. 外部寄生虫の2種類に分かれます。

それぞれの寄生虫について、その特徴や代表的な種類について見ていきましょう。

内部寄生虫とは、その名のとおり体の中に寄生する寄生虫です。

内部寄生虫はその種類によって、胃や腸、肝臓など、さまざまな臓器に寄生します。

犬や猫の内部寄生虫は、大きく分けて線虫と条虫の2種類が存在し、線虫はさらに回虫や鉤虫、鞭虫などの種類に分類されます。

分類 代表的な寄生虫 主な宿主 
回虫 犬回虫、犬小回虫、猫回虫 犬、猫 
鉤虫 犬鉤虫、猫鉤虫 犬、猫 
鞭虫 犬鞭虫 犬 
分類 代表的な寄生虫 主な宿主 
条虫 瓜実条虫、猫条虫、マンソン裂頭条虫、エキノコックス 犬、猫 

以下に、内部寄生虫における詳細をご紹介します。

線虫とは、線形動物門に分類される、細長い形をした内部寄生虫の総称です。

代表的な線虫には回虫や鉤虫、鞭虫などがあり、さらに寄生する動物によって犬回虫や猫鉤虫などに細かく分類されます。

分類 代表的な寄生虫 主な宿主 
回虫 犬回虫、犬小回虫、猫回虫 犬、猫 
鉤虫 犬鉤虫、猫鉤虫 犬、猫 
鞭虫 犬鞭虫 犬 

代表的な線虫について、その詳細を解説します。

回虫は、主に虫卵の付いた食べ物を食べたり、回虫に感染した母親の胎盤を介して妊娠中に感染したりします。

症状は無症状のことが多いですが、寄生数が多くなると下痢や食欲不振、成長不良、体重減少などが現れ、重症例では腸閉塞を起こす場合があります。

寄生虫は最終的に腸に寄生し、感染した犬や猫は糞便中に虫卵を排出するようになります。

この虫卵を介して同居の犬や猫、人にも感染するため、糞便はしっかりと処理し、日頃から外に落ちている食べ物を食べさせないことが重要です。

感染してしまった場合は駆虫薬を投与し、完全に寄生虫を駆除できるまでお薬を投与します。

鉤虫とは、頭部に鉤(かぎ)のような構造を持った、体長1cm〜2cmほどの細長い寄生虫です。

鉤虫は、小腸の壁に鉤を引っ掛けて吸血することで寄生します。

鉤虫に感染すると、下痢や血便、食欲不振などの症状が見られますが、寄生虫の数が少ないと症状が出ないこともあります。

寄生した鉤虫は虫卵を排出し、その虫卵は犬や猫の糞便によって環境に排泄され孵化します。

この孵化した幼虫を体内に取り込むことで、鉤虫は新しい動物に感染します。

鉤虫の感染経路は以下のとおりさまざまです。

【鉤虫の感染経路】

  • 経皮感染
  • 経口感染
  • 経乳感染
  • 経胎盤感染

鉤虫に感染してしまったら、駆虫薬を投与し、貧血を起こしている場合は輸液・輸血なども行います。

条虫(サナダムシ)とは、扁形動物門の条虫網に分類される、扁平で細長い形が特徴の内部寄生虫です。

条虫の体は、図のように片節(へんせつ)が多数つながってできています。

犬や猫に寄生する代表的な条虫には以下のようなものがあります。

分類 代表的な寄生虫 主な宿主 
条虫 瓜実条虫、猫条虫、マンソン裂頭条虫、エキノコックス 犬、猫 

代表的な条虫について、その詳細を解説します。

瓜実条虫(うりざねじょうちゅう)とは、犬と猫の両方に寄生する条虫です。

原因はノミやハジラミで、瓜実条虫を持ったノミやハジラミを口にすることで感染します。

【主な症状】

  • 下痢
  • 嘔吐
  • 食欲不振
  • 体重減少

瓜実条虫への感染が疑われる場合は、糞便検査を行って糞便中の片節を確認します。

治療には駆虫薬が使用され、治療開始後は継続して糞便検査を行い、完全に駆虫されるまで駆虫薬を投与します。

猫条虫は、猫に感染する条虫の一種です。

その原因はネズミで、猫条虫を持ったネズミを捕食することで猫は感染します。

【主な症状】

  • 下痢
  • 嘔吐
  • 食欲不振
  • 体重減少

猫条虫は小腸に寄生して成長し、糞便中に米粒のような片節を排泄するようになります。

治療には駆虫薬を使用し、完全に駆除できるまで継続して駆虫薬を投与します。

外部寄生虫とは、その名のとおり体の外に寄生する寄生虫です。

主に、犬や猫の皮膚や毛に寄生し、炎症やかゆみを引き起こします。

ノミは体長1mm〜2mmほどの小さな昆虫で、犬や猫、人の血液を吸い、かゆみを引き起こします。

野良犬や野良猫に寄生していることが多いです。

マダニとは体長3mm〜8mmほどの昆虫で、犬や猫の血液を吸い、かゆみや皮膚炎などを引き起こします。

また、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)のような致死率の高い感染症を媒介します。

森林や公園、河原などに生息し、散歩中のペットや人に寄生します。

関連記事:マダニから感染する猫のSFTSとは?感染経路や症状、予防法を解説

ニキビダニ(毛包虫)は体長0.2mm〜0.3mmほどの非常に小さな昆虫です。

健康な犬や猫でもニキビダニが常在しており、症状がないことがほとんどですが、子犬や免疫の弱った成犬では脱毛が部分的〜全身に広がることがあります。

ヒゼンダニは、体長0.2mm〜0.4mmほどの非常に小さな昆虫です。

疥癬症(かいせんしょう)という皮膚疾患の原因となり、非常に強いかゆみやフケ、かさぶたなどを引き起こします。

すでに感染している動物との接触により感染するため、定期的なシャンプーや部屋をきれいに掃除することが予防には重要です。

シラミ・ハジラミは、体長2mm〜3mmほどの小さな昆虫です。

シラミは血を吸い、ハジラミは主にフケや皮脂を食べます。

症状は無症状〜強いかゆみが現れるものまでさまざまで、フケや脱毛が生じる場合もあります。


ここまで、犬猫の主な寄生虫を紹介してきましたが、寄生虫を予防・早期治療するためには以下のような対策が重要です。

  • 動物病院で定期的に健康診断を受ける
  • 獣医師の指示を理解し、定期的に駆虫薬を投与する
  • カーペットや布団などを清潔にし、寄生虫の繁殖を抑える

日頃から駆虫薬の投与や清掃を徹底し、愛犬・愛猫を寄生虫から守りましょう。


ここまで、犬や猫の主な寄生虫について解説してきました。

この記事のまとめは、以下のとおりです。

  • 犬や猫の寄生虫は「内部寄生虫」と「外部寄生虫」の大きく2種類に分かれる
  • 犬の主な内部寄生虫は犬回虫や犬鉤虫、瓜実条虫など
  • 猫の主な内部寄生虫は猫回虫や猫鉤虫、瓜実条虫など
  • 外部寄生虫にはノミやマダニ、ヒゼンダニなどがある
  • 寄生虫を予防するためには、定期的な駆虫薬の投与や衛生管理が重要

犬猫の寄生虫感染を防ぐには、動物病院への定期的な通院や駆虫薬の投与が重要です。

獣医師の指示を理解した上で、適切にお薬を使用しましょう。

犬猫のお薬についてお悩みの方は、ぜひ動物のお薬の専門店「ねこあざらし薬店」にご相談ください。

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繰り返す皮膚トラブル、原因は何?犬猫に多い皮膚疾患と治療のはなし【獣医師執筆】 

この記事では、犬や猫で多い皮膚疾患について、主な原因や症状、治療薬、自宅でできる対策などを幅広く解説しています。

【この記事を読んでわかること】

  • 犬や猫に多い皮膚の病気には、マラセチア症や膿皮症、アレルギー性皮膚炎などがある
  • 治療は外用薬やシャンプー、駆虫薬など疾患によってさまざま
  • 皮膚疾患を予防するには、日頃のブラッシングやシャンプー、栄養管理が大切

最後まで記事を読んで、犬や猫で多い皮膚疾患について学んでみましょう。

犬猫のお薬についてお悩みの方は、ぜひ動物のお薬の専門店「ねこあざらし薬店」にご相談ください。


犬や猫の皮膚疾患は、以下のとおり症状によってさまざまなものが考えられます。

【犬】

症状原因
痒みがある外耳炎、耳ダニ、疥癬、皮膚糸状菌症、マラセチア症、食物アレルギー、アレルギー性皮膚炎など
皮膚が赤いマダニ・ノミの寄生、皮膚糸状菌症、毛包虫症、疥癬、膿皮症、アレルギー性皮膚炎、マラセチア症など

【猫】

症状原因
痒みがあるノミ・ハジラミ・マダニの寄生、毛包虫症、疥癬、膿皮症、マラセチア症、アレルギー性皮膚炎など
皮膚が赤い毛包虫症、皮膚糸状菌症、ノミ・マダニの寄生、疥癬、膿皮症、アレルギー性皮膚炎、マラセチア症など

1つの症状から特定の疾患を診断することは難しく、複数の症状や年齢、検査結果などを考慮して皮膚疾患を診断していく必要があります。


原因マラセチアというカビ(真菌)
症状痒み、赤み、フケ、脱毛など
治療抗真菌薬(外用薬・内服薬)、シャンプー、外耳道洗浄など
予防定期的なシャンプーや耳道ケア

マラセチアとはカビの1種で、健康な犬や猫の皮膚に元からいる常在菌です。

このマラセチアが何らかの原因で過剰に増殖し皮膚炎が起こった状態をマラセチア症(マラセチア皮膚炎)といいます。

猫では珍しく、犬で一般的な疾患です。

原因にはアレルギーや甲状腺機能低下症などさまざまな疾患があり、垂れ耳で耳の中が蒸れやすい犬種で起こりやすいという特徴があります。

発症すると、痒み、赤み、フケ、脱毛などが現れ、慢性化すると特有の臭いが出る、色素沈着が起こる、皮膚が分厚くなるといった症状が出ます。

治療は抗真菌作用のある薬用シャンプーを使うほか、シャンプーだけでは効果がない場合は外用薬あるいは内服薬の抗真菌薬も用います。

マラセチア性外耳炎の場合は、外耳道洗浄を行うこともあります。

関連記事:犬が耳を痒がる原因は?治療薬や自宅でできる対策を解説【獣医師執筆】

原因細菌感染
症状痒み、赤み、ぶつぶつ、皮剥け、腫れ、痛みなど
治療抗生剤(内服薬)、シャンプーなど
予防湿度を適切に保つ、定期的なブラッシングで皮膚を清潔に保つ

膿皮症(のうひしょう)とは、細菌感染による皮膚病です。

他の皮膚病によって皮膚のバリア機能が低下していたり、免疫力が低下していたりすると発症しやすいです。

猫よりも犬に多い疾患で、細菌が感染する皮膚の深さによって、浅在性膿皮症と深在性膿皮症に分けられます。

浅在性膿皮症では赤みや痒み、ぶつぶつ、皮剥けなどが、深在性膿皮症では赤紫色の腫れや痛み、血や膿が出るなどの症状が現れます。

治療には抗生物質の内服のほか、抗菌作用のあるシャンプーを併用することもあります。

原因カビや花粉などによるアレルギー
症状痒み、脱毛など
治療シャンプー、保湿剤、ステロイド外用薬などによる症状緩和が中心
予防遺伝的要因が大きいため難しい

アレルギー性皮膚炎とは、顔、手足、お腹、脇の下、耳などに皮膚炎が繰り返し起こる病気です。

カビや花粉などによるアレルギーが原因と考えられていますが、発症の詳細なメカニズムは不明です。

強い痒みが生じる、かくことによって脱毛が起こります。

慢性化すると皮膚がベタつく、黒ずむ、厚くなるなどの症状が出ることもあります。

アレルギー性皮膚炎は完全に治すことが難しいため、症状を抑える治療が中心です。

主にシャンプーや保湿剤、ステロイドのような外用薬を用いて、痒みや炎症を抑え、皮膚を健康に保つことを目指します。

原因毛包虫(ニキビダニ)
症状脱毛など
治療駆虫薬、シャンプーなど
予防生活環境をきれいにする、ストレスを与えない

毛包虫症(ニキビダニ症)とは、毛包虫(ニキビダニ)という寄生虫が毛穴に寄生する病気のことです。

毛包虫は健康な動物に常在していることが多く、子犬や子猫、免疫力の低下した個体で発症することが多いです。

発症すると、顔や口、目、手足の先端に部分的な脱毛が起こり、状態によっては全身に脱毛が広がることもあります。

治療にはニキビダニを殺す駆虫薬を投与するほか、シャンプーにより皮脂やフケを減らしたり、免疫力を低下させる他の病気がある場合はその治療も行います。

予防には、生活環境をきれいにし、ストレスを与えないことが重要です。

原因皮膚糸状菌というカビ(真菌)
症状フケやかさぶた、脱毛、赤み、ぶつぶつなど
治療抗真菌薬(内服薬・外用薬)、抗真菌薬を含んだシャンプーなど
予防感染した動物へは触らない、土の上をなるべく歩かない

皮膚糸状菌症とは、皮膚糸状菌というカビが感染することにより引き起こされる病気です。

「土」や「皮膚糸状菌に感染した他の動物」から感染し、フケやかさぶた、脱毛、赤み、ぶつぶつなどの症状を引き起こします。

治療には抗真菌薬の内服薬や外用薬を用いるほか、抗真菌薬を含んだシャンプーも有効です。

人や他の動物にうつるため注意が必要で、世話をする時は感染した動物へは触らず、毛を家の中に広げないようにしましょう。


犬や猫の皮膚疾患を予防するためには、以下のような日常のケアが重要です。

  • 定期的なブラッシングやシャンプーで皮膚と被毛を清潔に保つ
  • 栄養バランスの良い食事を与える
  • ノミやダニの予防薬を継続的に使用する
  • 室温や湿度を適切に保つ
  • 部屋をこまめに掃除する
  • 症状があれば早めに獣医師に相談する

皮膚トラブルは慢性化することも多いため、何か異常が見られたら早めに動物病院へ相談するようにしましょう。 


ここまで、犬や猫で多い皮膚疾患について、主な原因や症状、治療薬、自宅でできる対策などを幅広く解説してきました。

この記事のまとめは、以下のとおりです。

  • 犬や猫に多い皮膚の病気には、マラセチア症や膿皮症、アレルギー性皮膚炎などがある
  • 治療は外用薬やシャンプー、駆虫薬など疾患によってさまざま
  • 皮膚疾患を予防するには、日頃のブラッシングやシャンプー、栄養管理が大切

犬猫の皮膚疾患にはさまざまな種類があり、原因や治療法も疾患によって大きく異なります。

皮膚トラブルが見られたら、まずはお近くの動物病院を受診し、獣医師の指示を理解した上で適切にお薬を使用しましょう。

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