細菌による病気

穴あき病 (非定型エロモナス症)

1. 原因と傾向

穴あき病の原因となる病原体は、エロモナス菌と呼ばれるグラム陰性の桿菌です。このエロモナス菌は通常、魚の体内に常在菌として存在していますが、何らかのストレスなどによって魚の免疫力が低下した場合に病原性を発揮します。具体的なストレス要因としては、水質の悪化、飼育過密、取扱い時の傷つけなどがあげられます。こうしたストレスが免疫抑制の引き金となり、結果的に体内に存在するエロモナス菌が異常増殖を始めるのです。

穴あき病が発生しやすい水温域は15~20°C程度と言われています。変温動物である魚類は、水温の低下や変動に非常に敏感です。安定した水温管理ができていない場合、免疫力が下がりこの病気にかかりやすくなります。

2. 発見方法と対策

穴あき病の初期症状は、体表に点々と現れる局所的な充血です。これはまるで魚体に針を刺したような症状で、赤斑病と間違えるケースも少なくありません。その後、充血した部分が徐々に膿疱化していきます。膿疱とは菌が増殖した結果、体内にできた膿や浸出液が溜まったものです。この膿疱が破裂すると鱗が脱落し、身体組織がむき出しとなります。病変部周辺の筋組織も壊死に陥り、さながら穴が空いたように見えることから「穴あき病」と名づけられたのです。

したがってこの疾病の発見方法として最も重要視されるのが、飼育者による注意深い観察です。体表の異常な充血や点状の発疹が確認された際には、早急に当該魚を隔離し、その経過を注視することが大切です。

治療法としては水を1/2~1/3 程度取り替え、対象の薬品で薬浴をします。 水温を25℃以上に上げるのも効果的です。 症状が進行している場合は患部からの体液の流出を抑えるため、0.3~0.5%の食塩を入れて水の浸透圧を調整し、魚の負担を軽減します。

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赤斑病、鰭赤病(運動性エロモナス症)

1. 原因と傾向

赤斑病や鰭赤病の原因は、エロモナス菌(Aeromonas hydrophila)という細菌の感染です。この細菌は水中に常在しているもので、魚の体調が悪化したり傷ができたときに感染が広がります。特に水温の変化が激しい時期(梅雨や秋口)に発生しやすい傾向があります。

エロモナス菌は通常水中に存在する常在菌ですが、魚の免疫力低下時に感染が広がります。体表や鰭に点状の出血が見られ、症状が進行すると全身に赤みが広がったり、局所的に鰭の根元や肛門周辺が赤く腫れあがることもあります。

2. 発見方法と対策

発見のポイントは、体表や鰭に点状の出血や充血が見られることです。さらに進行すると全身に広がったり、局所的に鰭の根元や肛門周辺が赤く腫れあがることがあります。

赤斑病の初期症状は、魚の体表に薄ピンク~赤色の点が1ヶ所だけ見られる状態です。この段階では水槽の1/2~1/3程度の水換えだけで治ることが多いとされています。

中期症状では複数ヶ所に赤い斑点が見られるようになり、この段階からは薬浴や塩水浴による治療が有効です。ただし治療中は濾過バクテリアへの影響を抑えるため、エサの量を制限する必要があります。

水温変化しやすい時期は要注意です。魚の体表の変化に注目し、赤みや腫れの範囲が広がっていれば赤斑病を疑いましょう。すぐに水換えや薬浴などの治療を検討することが大切です。

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立鱗病、松かさ病(運動性エロモナス症)

1. 原因と傾向

立鱗病、松かさ病の原因は、エロモナス・ハイドロフィラという細菌の感染です。この細菌は金魚の体内に侵入することで、鱗が逆立ち、松かさのような症状を引き起こします。

エロモナス菌は淡水域に普遍的に存在する細菌で、通常は病原性が低いのですが、金魚の免疫力が低下したり、水質が悪化した場合に感染・増殖しやすくなります。

免疫力低下の要因としては、餌の消化不良、水換え不足による水質悪化、過密飼育などによるストレスが考えられます。これらの要因が重なるとエロモナス菌感染のリスクが高まり、病気を発症しやすくなります。

2. 発見方法と対策

初期症状はさほど目立たないので、日頃から金魚の様子を詳しく観察することが大切です。鱗の逆立ちや体表の潰瘍、眼球の突出などの異常が見られた場合は、すぐに処理に移る必要があります。

治療法としてはまず感染魚を隔離し、水を1/2~1/3 程度取り替え、対象の薬品で薬浴をします。0.3~0.5 %の食塩を併用するのも効果的です。

一方で飼育環境の改善も重要です。消毒や水質の良い水への換水、適切な餌与えなどで金魚の免疫力を高め、エロモナス菌の増殖を抑えることが大切です。

こうした管理を継続することで、立鱗病、松かさ病の進行をある程度抑えられる可能性があります。

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尾ぐされ病、口ぐされ病、鰓ぐされ病 (カラムナリス症)



1. 原因と傾向

これらの病気の原因は、カラムナリス菌と呼ばれる細菌の感染です。この菌は淡水域に普遍的に存在しており、魚の免疫力が低下したり、高水温、水質の悪化などストレスを受けることで感染が広がりやすくなります。

特に18°Cを超える高水温下での発症が多く、温水性種では尾びれや口、鰓といった酸素が供給しやすい部位に優先的に感染が広がる傾向があります。

カラムナリス菌は酸素が十分に供給されないと増殖できないため、感染範囲が魚体の奥深くまで及ぶことはほとんどありません。しかし、尾びれや口、鰓といった組織の薄い部位では酸素供給が容易なことから、この菌の好適増殖場所となりやすいのです。

魚がストレス状態に陥ると免疫力が低下し、体表の傷からカラムナリス菌が侵入する機会が増えます。特に稚魚の場合、体表からの感染リスクが高くなります。

カラムナリス菌に感染した部位では、細菌が産生したタンパク質分解酵素の働きによって組織が崩壊し、壊死に至ります。これによって尾びれがぼろぼろになったり、口周囲の組織が溶けるように浸食されていきます。

鰓ぐされの場合、鰓の機能不全で酸素欠乏状態となり、全身感染へとつながる危険性があります。鰓だけでなく他の感染症状も併発している場合は重症化しやすく、早急な治療が必要となります。

この病原菌に対する魚の抵抗性は魚種ごと、個体ごとに大きなばらつきがあることが知られています。飼育群の観察が重要で、感受性の高い個体から順次感染が広がる可能性があります。

2. 発見方法と対策

これらの病気の初期症状としては、尾びれや口、鰓の先端が白濁します。それから徐々に崩壊・壊死に至ります。早期発見が大切で、観察の際にはこうした症状の有無を確認します。

発症した場合は速やかに対応し、感染魚の隔離、薬浴、塩浴、換水による水質改善などを行います。魚種毎の適正水温、適正pHに近づけてカラムナリス菌の増殖を抑える飼育環境づくりと合わせて治療を進めることが重要です。

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真菌による病気

水カビ病

1. 原因と傾向

水カビ病は、ミズカビ科に属するサプロレグニアやアクリア、アファノマイセスなどの真菌が感染した病気です。これらの真菌は淡水域に広く存在しており、健康な魚にはほとんど影響しません。

ただし、体表の傷や潰瘍といった外傷がある魚が感染源となることが知られています。ストレスなどで免疫力が低下した魚では傷ができやすく、水カビ病への感受性が高まります。ケンカによる打撲や移動ストレスで生じた擦り傷が主な感染経路と考えられています。

水カビそのものは低い病原性ですが、傷口への付着・定着によりさらなる二次感染を引き起こしかねません。特に鼻先やヒレの先端など薄皮部位では巣状壊死を形成しやすく注意が必要です。

2. 発見方法と対策

水カビ病の明確な症状は、体表面への白い綿毛状菌糸の付着です。魚体の局所的な赤みや腫れも伴うことがあります。飼育群の詳細な観察により、こうした症状の有無を確認します。

発見後は迅速な治療開始が求められます。まず感染魚の隔離とともに、薬浴やピンセットを用いた患部の洗浄を行います。清浄な水への換水による飼育環境の改善も重要なポイントです。また、0.5%の塩水浴も有効です。

これらの治療と飼育環境の管理を並行して行うことで、二次感染予防や魚体の免疫力向上を図ることができます。感染拡大や重症化を防ぎつつ早期に寛解に向かうことを目指しましょう。

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寄生虫による病気

白点病

1. 原因と傾向

白点病は、白点虫と呼ばれる寄生虫が原因の魚病です。この虫は新規に取り入れた魚や水草とともに持ち込まれることが多く、魚の体表や鰓に付着して体液を吸収します。免疫力の低下などにより感染が成立しやすくなるため、入れ替え時のストレスはリスクファクターといえます。

白点虫は淡水魚に好んで寄生するため、熱帯魚よりも金魚やメダカなどの冷水魚でよくみられます。寄生虫の生活環を完成させるために最適な水温が15~18°C程度とされています。

2. 発見方法と対策

白点病の初期症状は、名前の通り体表に点々と現れる白い斑点です。数が少ないうちは活発に泳ぐなど元気な様子がみられますが、寄生の程度が進むにつれ、鰓やヒレをこすりつけるような行動が多くなります。この症状は寄生虫が分泌する物質による刺激痒感が原因と考えられています。体表の観察による早期発見、早期治療が大切です。

白点病の治療方法としては水を1/2~1/3程度取り替え、対象の薬品で薬浴します。体の白点が消えても、まだ目に見えない仔虫が寄生している場合があるので、油断せずに数日は様子をみてください。また、26~28℃程度へ水温を上げることも有効です。白点虫のライフサイクル期間が短くなり、薬効が高まります。ただし、急激な水温変化は魚にとってストレスになるため、水温を上げる場合はヒーターを用いて時間をかけながら徐々に行ってください。

重症化すると治療が難しくなります。早期発見、早期治療を心掛けましょう。

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イカリムシ症

1. 原因と傾向

イカリムシ症は淡水魚に寄生する甲殻類のイカリムシが原因の寄生虫病です。15°C以上の水温で活発に増殖し、魚の体表、鰓、口腔内などに付着して組織を破壊します。大型の錨状の頭部を魚体に突き刺して固定するため、肉眼で容易に発見できるのが特徴です。寄生に伴う組織損傷や刺激は魚にストレスを与え、時に細菌感染などの二次的な疾病を引き起こす可能性もあります。

イカリムシは生活環の中で卵生殖と有性生殖を繰り返して個体数を増やしていきます。1匹のメス成虫が生涯に産む卵数は約5000個ともいわれており、放置すると魚体上に計り知れない数の集団寄生を引き起こします。冬季にも魚体内で生き延びるため、水温が上昇する春先から再び活発化するという特徴があります。

2. 発見方法と対策

イカリムシへの寄生が疑わしい場合、魚体や鰓、口内に異常な突起がないか注意深く観察します。小さな白い盛り上がりや魚の行動の異常も手がかりになります。発見次第ピンセットなどで寄生虫体を完全に除去し、傷の消毒や抗菌剤による薬浴を行います。治療とともに、清浄な水質の保持、適正飼育密度の維持といった日常の管理が重要です。

イカリムシ症の治療には体表からの寄生虫の除去が最も重要です。ピンセットで抜去した後は、二次感染予防や出血や傷の治癒を促すため薬浴を行います。こうした一連の治療プロセスを適切に実施することで、イカリムシ症は完治可能な疾病といえるでしょう。

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ウオジラミ、チョウ症

1. 原因と傾向

この病気は甲殻類の一種であるチョウやウオジラミが魚の体表やヒレに寄生することで起こります。これらの寄生虫は魚の体液を吸うことで魚に害を及ぼします。症状としては寄生部位の充血や体表の発赤、魚が体をこすりつける異常行動が見られます。大量に寄生されたり小型の魚の場合は死に至ることもあります。

水槽への新規魚の導入や外部からのエサの持ち込みが原因となることが多いです。寄生虫は卵で越冬し、春になると孵化して魚を求めて泳ぎ出します。15-30度の水温が寄生虫の発育に適しており、この範囲内で温度が高いほど成長が早まります。

チョウやウオジラミは体表やヒレの表面に吸盤を使って固定します。その吸盤から針状の口器を突き刺して魚の体液や組織を吸収します。このため寄生部位は赤みを帯びたり腫れが生じます。痛みによるストレスから魚は体表をこすりつけたり、ヒレを震わせる異常行動が現れます。

寄生のメカニズムとしては、まずオスとメスが交尾した後にメスが宿主の表面に産卵します。卵は10日程で孵化し、自由生活期に入った仔虫が新たな宿主を探します。仔虫は宿主表面で脱皮を繰り返して成長し、生殖可能な成虫へと成熟します。飼育水温が上昇する夏場に集団発生しやすくなる一方、冬には卵の状態で休眠します。

大量寄生の場合は魚体が弱って二次感染を引き起こします。特に潜在的な細菌や真菌が活性化して体表の炎症や潰瘍を生じることがあります。ウオジラミそのものによる害よりもこうした二次感染のほうが致命的な打撃となるため、迅速な対処が必要です。

2. 発見方法と対策

この病気の兆候として、寄生部位の発赤やヒレの濁りが確認できます。魚が石や水槽の壁に体をこすりつける異常行動も特徴的です。

予防には新規魚の検疫が重要です。発見した場合はピンセットで寄生虫を取り除いて隔離し、グリーンFゴールドや観パラD、エルバージュエースなどの薬浴が有効です。これにより二次感染のリスクを抑えることができます。定期的な魚と水槽の観察が大切です。

魚への寄生が疑われる場合、体表やヒレをスポイトなどで注意深く洗浄し、排出されたものを顕微鏡下で確認する必要があります。吸盤と針状の口器を持つ0.5-1cm程度の扁平な外観がウオジラミの特徴です。

ウオジラミを含む外部寄生虫対策として、過酸化水素水、塩素系消毒剤を用いた水槽消毒が有効です。いずれもウオジラミ抵抗性が現れにくく、殺虫効果だけでなく細菌や真菌も死滅させるため二次感染予防にも役立ちます。導入時の魚や植物の消毒、新水や器材の消毒も忘れずに実施しましょう。

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ウーディニウム症、コショウ病



1. 原因と傾向

この病気の初期症状として、魚が全身をこすりつけたり身震いをする、エラが閉じたままになる、呼吸数が増加するなどがあらわれます。病状が進行すると体表に粉状の白点が無数に現れ、食欲不振や動かなくなるなどの症状がみられます。細かな点がコショウをふりかけたようにみえることから「コショウ病」とも呼ばれます。

原因はウーディニウムと呼ばれる寄生虫で、体表へ付着して組織を消化吸収することで損傷を与えます。 水質が悪化している水槽で発生しやすい病気です。寄生虫の付着で皮膚への機械的刺激が生じ、二次感染の危険性も高くなります。

2. 発見方法と対策

体表やヒレの細かい白点が特徴ですが、付着が少ない初期の病変は発見しづらいです。エラの形態や呼吸数の観察が重要となります。

対策としては感染源の遮断と水質改善が基本で、銅イオンの投与が有効ともいわれています。銅イオンは寄生虫に効果がある一方で、過剰投与の毒性が強いため、用量と濃度には十分注意が必要です。

エピスティリス症、ツリガネムシ病

1. 原因と傾向

この病気は原生動物のツリガネムシが魚体に寄生することで起こります。体表やヒレに白点状の集落ができ、綿のような付着物となります。病気が進行するに従って患部が大きくなり、うろこが持ち上がってその周辺が充血します。

ツリガネムシは長い柄で宿主に固着し、微生物を捕食して増殖します。水質悪化などのストレスで寄生が増え、重症化すると皮膚組織の損傷や潰瘍を引き起こします。

生体の導入後2週間程度が最も寄生の危険性が高く、晩春から初夏にかけての発生ピークが知られています。

2. 発見方法と対策

体表の白点拡大やうろこの浮腫、ヒレの変形などが特徴的です。

対策としては、メチレンブルーやマラカイトグリーンなどの色素剤が有効です。また、ツリガネムシが脱落した後の傷に細菌が二次感染する恐れがあるので、グリーンFゴールド等の薬浴を併用して行うとより効果的です。

ギロダクチルス症、ダクチロギルス症、吸虫症

1. 原因と傾向

この病気はギロダクチルスやダクチロギルスなどの寄生虫が原因で、エラや体表、ヒレに寄生して組織を損傷させます。量によっては明確な症状を示さないこともありますが、遊泳異常、水面集合、エラ開放、ヒレ閉鎖、粘液過剰分泌などが見られます。稚魚への寄生が多く、二次感染の危険性も高い病気です。

水質悪化などのストレスで抵抗力が低下すると寄生虫が増殖しやすくなります。特に25°C以上の高温で流行し、吸虫として鯉や金魚、熱帯魚にも広がっている可能性が懸念されています。

2. 発見方法と対策

肉眼では発見が難しいため、エラやヒレの異常行動の観察が重要です。ゆるやかにふらふらと泳ぐ(緩慢遊泳)、水面に集まる、エラ蓋が開いている、ヒレを閉じる、ヒレが白く濁る、粘液の過剰分泌などの症状がみられることがあります。

対策として、淡水種の場合、短時間の高濃度塩浴は一定の効果があるとされますが、魚への負荷が大きいデメリットがあるのであまりおすすめはしません。ハーブ配合飼料が有効ともいわれています。

グロキディウム症

1. 原因と傾向

この病気はイシガイ科の二枚貝が卵から孵化したグロキディウム幼生が魚に寄生することによって起こります。口周囲、ヒレ、エラに白や黄色、茶色の小さな着生物が多数観察されるのが特徴です。幼生は魚体に寄生して成長した後に自然脱落して生活史を完了しますが、高密度の寄生は魚にとってはストレスとなります。

グロキディウム幼生は宿主の種類によって体色や形態に多様性がみられ、同定が難しい場合があります。幼生寄生時に宿主への病原性が発現するメカニズムの詳細は不明ですが、皮膚への機械的刺激と栄養奪取が主因と考えられています。

2. 発見方法と対策

体表の小斑点が特徴的で、多数寄生の場合に症状が現れます。特異的な治療法はなく、自然脱落を待つ以外に対応の選択肢がないのが現状です。飼育環境の改善による魚体の抵抗力向上が重要となります。

グロキディウム幼生の寄生を未然に防ぐことは難しく、寄生数のモニタリングと飼育管理が対策と言えます。幼生の寄生期間は種類によって異なりますが、1~3ヶ月程度が多く、この間に自然脱落が期待できます。

クリノストマム症

1. 原因と傾向

この病気は吸虫の一種であるクリノストマム属が原因です。
野生のドジョウにはよく見られ、第1中間宿主(モノアラガイ)→第2中間宿主(ドジョウなどの魚類)→最終宿主(サギ類)→ 第1中間宿主 といった生活環を営みます。

魚体の組織内に楕円形の包嚢(被嚢)が確認されるのが特徴で、中に寄生虫のメタセルカリア幼生が包まれています。通常は病原性が低い寄生形態ですが、条件によって活性化し宿主組織を壊死させることがあります。

2. 発見方法と対策

包嚢(被嚢)の存否を組織標本で確認します。

一般的には有効な治療法はないとされ、少量の寄生であれば放置することとなります。宿主となる貝類の除去やサギ類の侵入を防ぐことで感染対策が可能です。

線虫症

1. 原因と傾向

この病気は線虫の寄生が原因です。
体表や肛門周囲にひも状の虫体が確認されるほか、腸管への寄生による腹部膨満などを引き起こします。中間宿主のケンミジンコを介して感染が成立します。

2. 発見方法と対策

ひも状の虫体が肉眼で観察されれば診断は容易です。
中間宿主の駆除とともに、飼育環境の改善が感染対策の基本となります。

テトラヒメナ症

1. 原因と傾向

この病気はテトラヒメナという原生生物が寄生することによって起こります。寄生により白化した患部を顕微鏡で観察すると、ラグビーボールのような形をした寄生虫が多数認められます。

症状として、最初は体表やヒレの白化、鱗の剥離、異常遊泳などを引き起こします。進行するとテトラヒメナは皮下組織や内臓にまで侵入して壊死を繰り返します。

致死率の高い病気であり、水中生活期に他の魚へ容易に感染が広がる特性も問題です。東南アジアのグッピー養殖池では大量斃死することが知られており、「グッピーキラー」とも呼ばれています。

2. 発見方法と対策

白点の出現が特徴ですが見分けは難しく、病状の進行に伴う症状から診断されます。

特異的な治療法がないため、発生初期の隔離が感染拡大防止に重要です。消毒薬(二酸化塩素)による駆除効果は限定的と考えられますが、予防には最大限活用する必要があります。

何よりも疑わしい魚は持ち込まないこと。発生した場合は病魚を隔離し他の魚への感染を食い止めることが重要です。

テロハネルス症

1. 原因と傾向

この病気はテロハネルスという寄生虫が原因です。一般に越冬明け後の魚に見られます。

症状としては二種類あり、一つは主として頭部を中心に1~2㎜の黄褐色に見える皮膚の隆起ができるもの。もう一つは主に鱗上に0.5~2㎜の球状の小さなこぶが散在する形でできるものがあります。

体表や腹部に白点や腫れが見られるものの、魚の行動、摂餌などには影響は少ないと考えられています。貧毛類を経由した感染経路が想定されており、水温上昇に伴い自然治癒する場合が多い季節性の病気です。

2. 発見方法と対策

病魚の体表から栄養体を採取して、押しつぶして200~400倍程度の顕微鏡で見ると、卵形をした胞子を確認できます。

特異的な治療法はなく、感染源の除去と水温管理による自然治癒の期待が基本となります。水温25~30℃に保つと、胞子が放出されて自然治癒するといわれています。

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