動物用医薬品の個人輸入は違法?合法?農林水産省の最新の解釈を解説

この記事では、動物用医薬品の個人輸入について、法的な解釈や手続き、リスクなどを幅広く解説しています。

【この記事を読んでわかること】

  • 動物用医薬品の個人輸入は適切な手続きを行えば合法
  • 要指示医薬品の個人輸入には獣医師の処方箋が必要
  • 個人輸入には通関トラブル、偽造品、副作用等の様々なリスクが存在
  • 日本で承認されている動物用医薬品と海外輸入製品では安全性に大きな差がある

最後まで記事を読んで、動物用医薬品の個人輸入について正しい知識を身につけましょう。

なお、安全で確実な動物用医薬品の購入を検討中の方は、ぜひ動物のお薬の専門店「ねこあざらし薬店」にご相談ください。

動物用医薬品の個人輸入の法的解釈


近年、インターネット上では動物用医薬品の個人輸入代行を行うサイトが存在していますが、これらの個人輸入は本当に合法なのでしょうか?

動物用医薬品の個人輸入について、農林水産省および東京都産業労働局の最新の見解をもとに、法的な解釈を詳しく解説します。

なお、動物用医薬品の個人輸入とは、海外で販売されている動物用医薬品を個人が直接購入または輸入代行を通じて購入し、日本に輸入することです。

基本的な合法性について

農林水産省の定める手続きを適正に行えば、動物用医薬品の個人輸入は合法です。

獣医師以外の者の場合は、自分が飼養する動物用として輸入することが可能とされています。
ただし、これはあくまで「適切な手続きを行った場合」に限られ、無制限に何でも輸入できるわけではありません。

要指示医薬品の個人輸入について

要指示医薬品を個人輸入する場合は、獣医師の処方箋または指示書が必要です。

※要指示医薬品の例:フィラリア予防薬、抗生物質、心臓病の薬、鎮静剤、ホルモン剤など

この規制は薬機法第49条に基づくもので、要指示医薬品は「その使用に当たって獣医師の専門的知識と技術を必要とするもの、副作用の強いもの、病原菌に対して耐性を生じやすいもの等、その使用期間中獣医師の特別な指導を必要とするもの」として指定されています。

薬機法第49条では、薬局開設者や医薬品販売業者は、獣医師から処方箋の交付や指示を受けた者以外に対して、要指示医薬品を販売・授与してはならないと規定されており、個人輸入においてもこの規制が適用されます。

【薬機法】
(処方箋医薬品(要指示医薬品)の販売)

第四十九条 薬局開設者又は医薬品の販売業者は、医師、歯科医師又は獣医師から処方箋の交付(処方箋の交付又は指示)を受けた者以外の者に対して、正当な理由なく、厚生労働大臣(農林水産大臣)の指定する医薬品を販売し、又は授与してはならない。ただし、薬剤師等に販売し、又は授与するときは、この限りでない。

2 薬局開設者又は医薬品の販売業者は、その薬局又は店舗に帳簿を備え、医師、歯科医師又は獣医師から処方箋の交付(処方箋の交付又は指示)を受けた者に対して前項に規定する医薬品を販売し、又は授与したときは、厚生労働省令(農林水産省令)の定めるところにより、その医薬品の販売又は授与に関する事項を記載しなければならない。

3 薬局開設者又は医薬品の販売業者は、前項の帳簿を、最終の記載の日から二年間、保存しなければならない。

出典:農林水産省「海外から動物用医薬品等を購入しようとされている方へ」

数量制限について

動物用医薬品の個人輸入には、輸入方法によって異なる数量制限があります。

海外から国内に持ち込む場合は2か月程度、1品目2箱以内等の数量制限があります。

ただし、牛、馬、豚、鶏、うずら、みつばち及び食用に供するために養殖されている水産動物の所有者が当該動物に使用するための動物用医薬品やワクチン等の生物学的製剤の輸入は禁止されています。

個人輸入に伴うリスク


動物用医薬品の個人輸入には、法的な問題だけでなく、様々なリスクが存在します。

通関トラブルのリスク

要指示医薬品を獣医師の処方箋なしに輸入しようとした場合、通関で止められ廃棄処分となるケースが多発しています。

2024年4月から6月の間だけでも、一月あたり20~30件が廃棄処分となっており、多くの場合、廃棄処分となっても代行業者から返金がなされることはありません。

フィラリア予防薬等の要指示医薬品を輸入する際には獣医師の処方箋等が必要である旨、法律に規定されているにも関わらず、「動物病院代が節約できる」という甘い言葉で購入を誘引している輸入代行サイトが存在するため注意が必要です。

偽造品のリスク

海外から個人輸入される動物用医薬品は、偽造品である可能性があります。

WHOの報告によれば、人用医薬品では非合法なサイトから購入した医薬品のうち50%が偽造品であったとのことです。偽造品は見た目では判断できないことがあり、本来入っているはずの成分が入っていない、入っていてはいけない成分が入っている、不衛生な環境で製造されている等の可能性があります。

重大な副作用のリスク

個人輸入された動物用医薬品を専門的な指導を受けずに使用した場合、重大な副作用等の健康被害が発生する可能性があります。

個人輸入された動物用医薬品については、獣医師などの専門家でも、その成分や作用等に関する十分な情報を有しておらず、副作用等に迅速に対応することができない場合があります。また、副作用や健康被害が生じていても、その状況が表面化されにくいという問題もあります。

購入先とのトラブルのリスク

輸入代行業者を通じて購入した未承認動物用医薬品により生じた健康被害については、輸入代行業者は責任を負わず、購入者の責任とされる可能性が極めて高いです。

多くの輸入代行業者は、メーカー正規品保証との記載をしていても、実際にはその事実を証明することができません。輸入代行業者が購入者に提供した書面(証明書等)が偽物であった事例も確認されています。

日本で承認されている動物用医薬品との違い


日本で承認されている動物用医薬品は、医薬品医療機器等法に基づき、品質、有効性及び安全性が確認されたものです。

一方で、海外で販売されている動物用医薬品は、日本国内における品質、有効性及び安全性の確認がされていない未承認動物用医薬品です。

日本では、動物用医薬品の開発から流通まで厳格な管理体制が敷かれており、承認された製品のみが市場に流通しています。個人輸入される動物用医薬品は、このような日本の品質管理体制を経ていないため、品質や安全性に不安があります。

違法な個人輸入代行サイトへの対策


現在、『うさパラ』・『ぽちたま薬局』・『わんにゃん薬局』のように、動物用医薬品の個人輸入代行を大々的に行っているサイトが存在しています。

これらのサイトでは、法律に違反して、フィラリア予防薬等の要指示医薬品を処方箋なしで販売しているケースが多数確認されます。

農林水産省では、違法な広告を行うサイトに関する情報提供を受け付けており、違法な広告を行うサイトを発見した場合は、以下の連絡先に通報することができます。

通報先:yakuji_kanshi@maff.go.jp
通報内容:(ア)サイトの名称 (イ)URLアドレス

適切な動物用医薬品の入手方法


動物用医薬品を安全に入手するためには、以下の方法を推奨します。

動物病院での処方

最も安全な方法は、獣医師の診察を受け、適切な処方を受けることです。
獣医師は動物の状態を専門的に判断し、最適な薬剤を選択します。
また、副作用が生じた場合も迅速な対応が可能です。

動物用医薬品店舗販売業者からの購入

一部の動物用医薬品は、要指示医薬品に該当しないため、ねこあざらし薬店のような許可を持つお店で購入することができます。

また、獣医師に指示書を記載してもらえば、薬剤師からフィラリア予防薬等の要指示医薬品の購入も可能です。
詳細の購入手順はコチラにてご確認ください。

よくある質問


「個人輸入代行業者は本当に信頼できるの?」

ほぼ全ての個人輸入代行業者は、法的な問題やリスクについて十分な説明を行っていません。

輸出される医薬品には輸出元の国の規制がかからないため、『海外で承認されている』、『メーカー正規品保証』との記載があったとしても、事実かは不明です。

また、輸入代行業者が購入者に提供した書面(証明書等)が偽物であった事例も確認されており、信頼性に疑問があります。

「個人輸入した薬を他の人に分けても大丈夫?」

個人輸入した動物用医薬品を有償、無償を問わず他者に販売、授与等を行うことはできません。

個人輸入は、あくまで個人が自分の飼養する動物のために使用することを前提としており、他者への譲渡は法律で禁止されています。

「要指示医薬品でも2ヶ月分以内なら問題ない?」

多くの個人輸入代行業者は、「フィラリア予防薬等の要指示医薬品も2ヶ月分以内の個人輸入は問題ない」と主張していますが、これは誤解です。

要指示医薬品の個人輸入については、数量に関係なく、獣医師の処方箋が必要です。

薬機法第49条の規定により、要指示医薬品は獣医師から処方箋の交付や指示を受けた者以外には販売・授与できないため、個人輸入においても同様の規制が適用されます。

まとめ


ここまで、動物用医薬品の個人輸入について、法的な解釈やリスク、適切な入手方法などを幅広く解説しました。

この記事のまとめは、以下のとおりです。

  • 動物用医薬品の個人輸入は適切な手続きを行えば合法
  • 要指示医薬品の個人輸入には獣医師の処方箋が必要
  • 個人輸入には通関トラブル、偽造品、副作用等の様々なリスクが存在
  • 日本で承認されている動物用医薬品と海外輸入製品では安全性に大きな差がある
  • 最も安全な方法は動物病院での適切な処方を受けること

この記事の内容を参考に、動物用医薬品の適切な入手と使用を心がけてくださいね。

安全で確実な動物用医薬品の購入を検討中の方は、ぜひ動物のお薬の専門店「ねこあざらし薬店」にご相談ください。

ねこあざらし薬店では、法律に基づいた適切な販売を行っており、薬剤師が24時間いつでもLINEから相談を受け付けています。