説明
【効果効能】
猫の甲状腺機能亢進症
【用法用量】
本剤の初期投与量は,チアマゾールとして1.25mg/頭/回~2.5mg/頭/回とし,1日1回又は2回経口投与する.初期投与量は,甲状腺機能亢進症と慢性腎臓病,心筋肥大,高血圧等の併発疾患を考慮して決定する.投与開始前,投与開始から投与開始後3カ月までは2~4週毎,投与開始後3カ月以降は2~3カ月毎にモニタリング*を行う.モニタリングの結果を総合的に判断し,投与量を調節する場合には,1.25mg/頭/回又は2.5mg/頭/回で個体毎に適宜投与量を増減する**.投与量の上限は,チアマゾールとして10mg/頭/回の1日2回とする.
なお,本剤の投与を中止した場合,投与再開時の投与量は,チアマゾールとして1.25mg/頭/回~2.5mg/頭/回とし,1日1回又は1日2回経口投与する.
*モニタリング:臨床症状,副作用の問診,身体検査,血清総T4の測定,血液学的検査,血液生化学的検査及び血液凝固検査
**投与量の指標:血清総T4が基準値の範囲(0.5~4.0μg/dL)又は,甲状腺機能亢進症に伴う全身状態・身体検査での改善がみられた投与量
【使用上の注意】
【基本的事項】
1.守らなければならないこと
(一般的注意)
・本剤は要指示医薬品であるので獣医師等の処方箋・指示により使用すること。
・本剤は猫以外に使用しないこと。
・本剤は効能・効果において定められた目的にのみ使用すること。
・本剤は定められた用法・用量を厳守すること。
・本剤の有効成分であるチアマゾールは、人で催奇形性の報告があるとともに、苦味がある。これらのことから、有効成分の使用者への曝露を防ぎ、猫が苦味を感じないようにするため、本剤をコーティング錠としている。そのため、本剤を投与する際には、錠剤を割錠又は粉砕しないこと。
(使用者に対する注意)
・人で胎盤移行性、乳汁移行性、催奇形性が認められたとの報告があることから、妊娠している可能性のある女性や妊婦、授乳婦は、可能な限り、本剤、本剤を投与された猫のトイレ砂、糞便、尿、嘔吐物を取扱わないこと。他に投与できる者又は他に処理できる者がいない場合には、素手では触らず、保護手袋を着用する等、取扱い及び処理には十分注意すること。誤って素手で触った場合、手を石鹸と水で洗うこと。
(猫に関する注意)
・本剤を過剰投与した場合は甲状腺腫、甲状腺機能低下が現れることがあるため、獣医師から指示された量を投与するように注意し、誤って多く投与した場合は獣医師に相談すること。
(取扱い及び廃棄のための注意)
・本剤の保管は直射日光、高温及び多湿を避け、遮光した気密容器で室温保存すること。
・本剤は他の医薬品、食品、飼料等と区別し、小児の手の届かないところに保管すること。
・小児にはこの薬剤を取扱わせないこと。
・誤用を避け、品質を保持するため、他の容器に入れ替えないこと。
・使用期限を過ぎたものは使用しないこと。
・錠剤は使用直前までPTP包装シートから出さないこと。
・本剤を猫に投与する時は、PTP包装シートから取り出して投与すること。また、PTP包装シートの誤飲によって硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、粘膜が破れて炎症を起こす等の重篤な合併症を併発することが報告されているので、PTP包装シートは猫が誤飲しないよう、適切に廃棄すること。
・本剤のPTP包装シートは、地方公共団体条例等に従って処分すること。
2.使用に際して気を付けること
(使用者に対する注意)
・誤って薬剤を飲み込んだ場合は、直ちに医師の診察を受けること。
・本剤、本剤を投与された猫のトイレ砂、糞便、尿、嘔吐物を取扱った後、あるいは使用者の皮膚・粘膜に付着したときは、直ちに水洗いすること。
(猫に関する注意)
・本剤の投与期間中に、下痢、軟便、嘔吐、便秘、皮膚の傷・むくみ、頭・顔面を痒がる、元気消失、異常な鳴き声、痩せる、出血、粘膜が白い等の普段と異なる状態を発見した時には、獣医師に投与の可否について指示を仰ぐこと。
【専門的事項】
1.禁忌
・チアマゾールに対し過敏症の既往歴を持つ猫への投与は行わないこと。
・血液疾患(貧血、好中球減少症、リンパ球減少症、血小板減少症等)又は血液凝固障害がある猫には投与しないこと。
・自己免疫疾患がある猫には投与しないこと。
・重度の腎機能障害又は重度の肝機能障害がある猫には投与しないこと。
・妊娠、授乳中及び繁殖を予定している猫への投与を行わないこと。
2.重要な基本的注意
・本剤の投与開始前に、モニタリングの必要性及び腎疾患の顕在化の可能性について飼い主に十分説明し同意を得ること。
・モニタリングとして、投与開始前、投与開始から3カ月は2~4週毎、投与開始後3カ月以降は2~3カ月毎に臨床症状、副作用の問診、身体検査、血清総T4の測定、血液学的検査、血液生化学的検査及び血液凝固検査を行うこと。その際、異常又は副作用が認められた場合には、本剤の継続投与、減量又は投与中止の判断を行うこと。本剤の投与中止の判断を行った場合は、投与中止後、対症療法や支持療法等の適切な処置を行う。本剤の投与中止後、血清総T4が基準値の上限(>4。0μg/dL)を超えた場合、又は、甲状腺機能亢進症に伴う全身状態・身体検査での悪化がみられた場合、臨床症状と副作用の有無の聴取、身体検査、血清総T4の測定、血液学的検査、血液生化学的検査及び血液凝固検査を行い、本剤の投与を再開する。
・本剤の1回来院での処方日数は、投与開始から3カ月は2~4週間分、投与開始後3カ月以降は2~3カ月分を目安とする。
・本剤投与による血清総T4の低減や甲状腺機能亢進症に伴う全身状態・身体検査での改善には投与開始から2~4週を要する。また、本剤投与による副作用は投与開始から3カ月以内にみられる。
・本剤を腎機能低下がある猫又は潜在的に腎疾患がある猫に投与する場合、甲状腺機能亢進症の改善により、糸球体ろ過量の低下、腎機能低下、基礎腎疾患が顕在化することがあるので十分慎重に投与し、腎機能について経時的かつ注意深いモニタリングを行う必要がある。また、腎疾患が顕在化し、重度の腎機能障害がみられた場合は、本剤の投与を中止し、対症療法や支持療法等の適切な処置を行うこと。
・本剤により、血小板数減少を伴わずに出血性素因を引き起こすおそれがあるので、投与期間中十分に観察を行い、この様な場合には必要に応じ投与中止等の適切な処置を行うこと。
3.相互作用
・本剤とベンズイミダゾール系駆虫薬(アルベンダゾール、フェンベンダゾール、オクスフェンダゾール)を併用する場合、ベンズイミダゾール系駆虫薬の血中濃度が上昇する可能性がある。
・本剤と抗凝血剤との併用投与では、本剤のビタミンK依存性の血液凝固因子活性化阻害作用が増強する可能性がある。
・本剤とクマリン系抗凝血剤(ワルファリンカリウム)との併用投与では、クマリン系抗凝血剤の投与量を増量する必要が生じる場合がある。
・本剤とジギタリス製剤(ジゴキシン)、アドレナリンβ受容体遮断薬又はキサンチン誘導体(テオフィリン)との併用投与では、ジギタリス製剤、アドレナリンβ受容体遮断薬又はキサンチン誘導体の投与量を減量する必要が生じる場合がある。
・本剤とフェノバルビタール製剤との併用投与では、本剤の臨床効果が妨げられる可能性がある。
・本剤は肝薬物代謝酵素Cytochrome P450(CYP)により代謝されることから、本剤とCYPで代謝される薬剤〔マクロライド系抗生物質(エリスロマイシン等)、フルオロキノロン系合成抗菌剤(エンロフロキサシン、オルビフロキサシン等)、シクロスポリン、トリメトプリム、非選択的β遮断薬(カルベジロール)、PDE3阻害薬(ピモベンダン)、カルシウムチャネル拮抗薬(アムロジピン、ジルチアゼム)等〕を併用する場合、競合的阻害により本剤又は併用薬のいずれか一方の血中濃度が上昇する可能性がある。
・本剤の空腹時における経口投与では、血中濃度が上昇する可能性がある。
4.副作用
・本剤投与により、消化器障害(下痢又は軟便、嘔吐、便秘)、肝臓障害(γ―GTP、AST及びALTの上昇)がみられ、ときに腎臓障害(無機リン及びナトリウムの減少、尿素窒素及びクレアチニンの上昇)、皮膚擦過傷/損傷/浮腫(頭部/顔面のそう痒)及び食欲不振、まれに抗甲状腺剤に共通する薬剤誘発性の免疫反応に関連する変化(赤血球数、血色素量、ヘマトクリット値、MCHC、顆粒球、白血球数及び血小板数の減少、総蛋白、グロブリン及びMCVの上昇、A/G比の減少)、脱毛・皮膚の糜爛がみられる。その他、頻度不明であるが、抑うつ症状、無気力、異常発声、体重減少、出血性素因、貧血、心臓への影響(LDHの上昇)、骨への影響(ALPの減少)がみられることがある。
5.その他の注意
・チアマゾール投与において、投与期間の延長及び投与量の増加に依存した抗核抗体の上昇がみられたとの報告がある。
・チアマゾール投与において、精巣成熟遅延がみられたとの報告がある。
・ラットを用いた生殖発生毒性試験において、胎児及び出生子において胎児発育及び器官形成に対する影響がみられた。
【貯法】
遮光した気密容器,室温保存
【包装単位】
1.25mg錠:100錠(10錠PTP×10シート)
【承認区分】
医薬品(動物用医薬品)
【製剤区分】
抗甲状腺剤
【規制区分】
指定医薬品, 要指示医薬品
【製造販売業者】
あすかアニマルヘルス株式会社
【メーカーお問合わせ先】
あすかアニマルヘルス株式会社
〒108-0023 東京都港区芝浦二丁目15番6号
TEL:03-5439-4188