【獣医師監修】『クレデリオキャット錠』の効果と使い方~食べる猫用ノミ・マダニ駆除薬のメリット・注意点について解説~

猫のノミ・マダニ対策といえばスポットオンタイプ(背中に垂らす液体薬)が主流ですが、「首元を気にして嫌がる」「同居猫同士で舐め合ってしまう」「薬で被毛がベタつく」といったお悩みを抱える飼い主様も少なくありません。

そうした中、新しい選択肢として登場したのが、猫用の経口ノミ・マダニ駆除薬『クレデリオキャット錠』です。

この記事では、クレデリオキャット錠の基本情報、即効性や持続期間、食事と一緒に与える重要性、気になる疑問まで詳しく解説します。


クレデリオキャット錠は、イソオキサゾリン系成分「ロチラネル」を有効成分とする猫用の経口ノミ・マダニ駆除薬です。猫ちゃんが飲み込みやすい超小粒の錠剤で、バニラ風味が施されています。

従来のスポット剤(滴下薬)で皮膚トラブルが起きてしまう猫ちゃんや、首元に液を塗られるのを嫌がる猫ちゃんにも適した新しい予防の形です。

項目 内容
医薬品区分 動物用医薬品
有効成分 ロチラネル(12mg / 48mg)
剤形・フレーバー 経口錠剤(超小粒 / バニラ風味)
効能・効果 猫:ノミ及びマダニの駆除
投与頻度 月1回(経口投与)
対象条件 生後8週齢以上、かつ体重0.9kg以上

① 投薬直後から抱っこOK!濡れない・舐め合わない
スポットオンタイプの場合、薬剤が乾くまで触れ合えなかったり、多頭飼いのご家庭では同居猫が舐め合わないよう隔離したりする手間がありました。経口タイプのクレデリオキャット錠なら、投与直後からスキンシップが可能で、同居猫と隔離する必要もありません。また、薬で被毛がベタつく心配もありません。

② 圧倒的な即効性と産卵抑制!ノミ・マダニの繁殖サイクルを遮断
クレデリオキャット錠は投与後、非常に早いスピードで高い駆除効果を示します。

・高い即効性: 既に寄生しているノミを投与8時間後に98%、マダニを投与12時間後に98%駆除します。(なお、マダニは投与24時間後に100%駆除します)

・繁殖・卵の抑制: 投与24時間後にはノミの産卵を97%抑制します。また、投与後30日間以上、新たに寄生したノミに対し寄生12時間以後の産卵を99%以上抑制します。ノミが大量の卵を産み落とす前に効果を発揮するため、お部屋の中(ベッドやカーペット等)でのノミの環境汚染・再寄生サイクルを根絶します。臨床試験では、ノミアレルギー性皮膚炎(FAD)による赤み・丘疹・鱗屑・かゆみ・脱毛・皮膚炎/膿皮症の有意な改善が確認されています。

・35日間の持続効果: 投薬後35日間にわたって、新たに寄生したノミ(寄生8時間後に96%以上、12時間後に99%以上)・マダニ(寄生24時間後に99%以上)も速やかに撃退し続けるため、1か月間しっかり愛猫を守ります。

③ バニラ風味の超小粒だから食べやすい
猫ちゃんのお口に合わせた非常に小さな錠剤で、バニラ風味が施されています。実地試験でも非常に高い投薬成功率が報告されています。


■ 食事と一緒に(または食後30分以内に)投薬する!
クレデリオキャット錠の投与において最も大切なポイントは、「必ず食事と一緒に、または食後30分以内に与える」ことです。
有効成分のロチラネルは、胃の中に食べ物(脂質等)が存在することで効率よく全身へ吸収される性質を持っています。空腹時に投与すると成分の吸収率が著しく低下し、本来の駆除効果が得られなくなる恐れがあります。

■ 上手な投薬のコツ
・フードやおやつに混ぜる: いつものウェットフードや大好きなおやつに包んで与える
・食後に直接投与: 食事をとらせた直後にお口の奥(舌の付け根)へそっと入れて飲み込ませる
・万が一吐き出した場合: 投薬後30分以内に嘔吐して本剤を完全に排出した場合は、再度同量を投与します。


猫ちゃんの体重に合わせて、2種類の規格(ロチラネル含有量)が用意されています。
愛猫の体重に合わせて選択します。

規格名 適用体重
クレデリオキャット錠 12mg 体重 0.9kg以上 〜 2.0kg以下
クレデリオキャット錠 48mg 体重 2.0kgを超え 〜 8.0kg以下

(※体重8.0kgを超える大型猫の場合は、獣医師の指示のもと上記規格を適切に組み合わせて投与します)
(※成長期の子猫は毎月投薬前に体重を測定し、その時点の体重に適した規格を選択してください)


Q1. 錠剤を割って(分割して)与えてもいいですか?
A. 分割は推奨されません。クレデリオキャット錠には割線がなく、分割した際のお薬成分の均一性が確立されていません。正確な量を投与するため、割らずに体重に合った規格をそのまま与えてください。

Q2. 妊娠中・授乳中・繁殖用の猫に与えても大丈夫ですか?
A. 安全性が確認されていないため使用できません。繁殖期、妊娠中、または授乳中の猫に対するクレデリオキャットの安全性は確認されていません。(なお、ラットの実験室内試験では生殖能力への悪影響の所見はみられませんでした)該当する猫ちゃんへの投薬は避け、獣医師へご相談ください。

Q3. 犬にクレデリオキャットを与えても良いですか?
A. 与えてはいけません。クレデリオキャット錠は猫専用の医薬品として承認されています。犬には犬用のクレデリオ錠を使用してください。

Q4. てんかんや神経症状の持病がある猫にも使えますか?
A. 必ず事前に獣医師へご相談ください。有効成分ロチラネル(イソオキサゾリン系)は、まれにけいれん、運動失調(ふらつき)、振戦(震え)等の神経症状が認められることがあります。過去にてんかん発作等の病歴がある猫ちゃんへ投与する場合は慎重な判断が必要です。

Q5. 投薬を忘れてしまった場合はどうすればいいですか?
A. 気づいた時点ですぐに食事と一緒に与えてください。投与を忘れてしまった場合は、気づいたタイミングでフードと共に投薬し、その日を起点として毎月1回の投与スケジュールを再開してください。

Q6. どのような副作用が報告されていますか?
A. 嘔吐、元気消失、食欲不振などが報告されています。諸外国における臨床試験及び市販後調査において、嘔吐、元気消失、食欲不振等が報告されています。万が一、本剤の投与後に副作用が認められた場合には、速やかに獣医師の診察を受けてください。

Q7. クレデリオキャット錠で感染症の予防(伝播防止)もできますか?
A. 寄生虫が媒介する病気の伝播阻止効果については確認されていません。本剤は猫に寄生したノミ及びマダニを駆除する動物用医薬品であり、これらの寄生虫が媒介する疾病の伝播を阻止できるかについての検討は行われていません。

Q8. 使用するにあたってのその他の禁止事項はありますか?
A. 8週齢未満または体重0.9kg未満の子猫、ならびに本剤の有効成分(ロチラネル)に過敏症のある猫には使用しないでください。


  • スポット剤のベタつきや投薬後の隔離から解放されたい!
  • ノミ・マダニを速やかに駆除して、部屋の中のノミ繁殖まで防ぐ
  • 最大効果を得るために「必ず食事と一緒に(または食後30分以内に)」投薬する
  • 錠剤の分割投与は行わず、体重(0.9kg以上)や持病(てんかん等)に応じた適切な指示のもと使用する

『クレデリオキャット錠』は、「液体薬を首元に塗られるのが大嫌い」「スポット剤を塗ったあとのスキンシップ制限がストレス」と感じていた飼い主様と猫ちゃんにとって、非常に画期的な月1回のノミ・マダニ駆除薬です。

愛猫の体質や既往歴、性格に合わせた最適な駆虫薬選びについて、まずは一度かかりつけの動物病院(獣医師)へご相談ください。

また、動物用医薬品に関するご不明点やご相談がある場合は、動物のお薬の専門店『ねこあざらし薬店』にお気軽にお問い合わせください。

犬の膵炎~その嘔吐、胃腸炎ではないかも?最新治療と再発予防について解説~【獣医師執筆】

膵臓は、胃の裏側で十二指腸に沿うように位置する臓器で、食べ物を分解する消化酵素を分泌する『外分泌腺』と、血糖値を調節するインスリンなどを分泌する『内分泌腺』という2つの役割を担っています。

犬の「膵炎(Pancreatitis)」は、この膵臓に炎症が起こる病気で、犬の膵外分泌疾患の中で最も多くみられます。
軽い嘔吐で済む場合もありますが、命にかかわるほど重症になるケースも珍しくありません。

今回は、膵炎のメカニズムや診断、治療薬・サプリメントの選択肢まで詳しく解説します。


■ 膵炎が起こるメカニズム

膵臓で作られる『トリプシン』などの消化酵素は、本来は不活性な『前駆体』の状態で分泌され、十二指腸に届いてから活性化されます。膵臓が自分自身を消化しないための安全装置です。

ところが、何らかのきっかけでこの消化酵素が膵臓の中で早期に活性化して働いてしまうと、酵素本来の強烈な消化力によって、自分自身の膵臓や周りの組織を溶かして傷つけてしまいます。

傷ついた膵組織からは炎症性サイトカインが放出され、好中球などの炎症細胞が集まってきます。
この炎症が全身に波及すると、全身性炎症反応症候群(SIRS)、播種性血管内凝固(DIC)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性腎障害といった重篤な合併症を引き起こします。

重症膵炎で命を落とす犬の多くは、この全身性の炎症が原因とされています。

■ 急性膵炎と慢性膵炎

膵炎は、膵臓の組織にみられる変化によって「急性膵炎」と「慢性膵炎」に分類されます。

急性膵炎は好中球を主体とする炎症と、むくみ(浮腫)や組織の壊死が起こる状態で、治療によって膵臓は元の状態に戻る可能性があります。

一方、慢性膵炎はリンパ球や形質細胞の浸潤とともに、組織が硬くなる線維化や、消化酵素を作る細胞の萎縮が起こる状態で、この変化は元に戻らないとされています。

膵炎は、症状だけで急性と慢性を見分けることはできず、同じ膵臓に両方の変化が混在していることもあります。また、急性膵炎を繰り返すうちに慢性膵炎へ移行したと考えられるケースもみられます

■ リスク因子と好発犬種

犬の膵炎の多くは原因を特定できない、いわゆる「特発性」とされていますが、発症に関わるリスク因子が明らかになってきています。

リスク因子内容
食事高脂肪食、人の食べ物(揚げ物・ケーキ等)の摂取など、犬では脂肪摂取過多が原因の一つとされている。
高脂血症
(高トリグリセリド血症)
重要なリスク因子。ミニチュア・シュナウザーは原発性高脂血症の好発犬種。甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症、糖尿病に続発することもある。
肥満肥満犬では膵炎のリスクが高く、重症化しやすいとする報告がある。
薬剤臭化カリウム・フェノバルビタール(抗てんかん薬)、L-アスパラギナーゼ(抗がん剤)、アザチオプリンなどとの関連が報告されている。
犬種シュナウザーやヨークシャー・テリアなどのテリア系で多い。その他キャバリア、コリー、ボクサー、コッカー・スパニエルで多いと報告されている。

■ 急性膵炎と慢性膵炎でみられやすい経過

症状だけで急性と慢性を区別することはできませんが、一般的には次のような経過で気づかれることが多いとされています。

●急性膵炎:それまで元気だった犬に、嘔吐、食欲不振、腹痛、元気消失などの症状が急に現れます。軽症で済むこともあれば、数日のうちに急激に悪化して命に関わることもあります。

●慢性膵炎:食欲不振、ときどきの嘔吐、下痢、元気がないといった軽く漠然とした症状が、良くなったり悪くなったりしながら続くことが多く、症状がほとんどみられないこともあります。一方で、急性膵炎と区別のつかない激しい症状を起こすこともあります。

■ 主な症状と背景

特徴的なサインとして「祈りのポーズ」があります。(※上記画像参照)
前足を伸ばして胸を床につけ、お尻だけを高く上げた姿勢のことで、お腹の痛みを和らげようとする姿勢として知られています。

症状・所見背景となるメカニズム
繰り返す嘔吐・食欲不振膵臓の炎症が隣接する胃・十二指腸に波及し、消化管の運動が低下する。
祈りのポーズ・お腹を触ると嫌がる・背中を丸める膵臓と周囲組織の炎症による腹痛。
下痢・軟便炎症が周囲の消化管に波及することによる消化管の機能障害。
元気消失・発熱炎症性サイトカインによる全身性の炎症反応。
白目や皮膚が黄色い(黄疸)膵臓の腫れや炎症によって胆管が圧迫され、胆汁の流れが妨げられる。
ぐったりしている・呼吸が荒い・歯茎が白いSIRS、DIC、ショックなどの重篤な全身性合併症。最重度のサインであり緊急性が高い。

■ 重症度の評価

重症度状態の目安
軽症元気・食欲の低下や軽度の嘔吐のみ。通院治療で管理できることもある。
中等症繰り返す嘔吐、明らかな腹痛、脱水を伴い、入院下での輸液と疼痛管理が必要。
重症ショック、SIRS、DIC、急性腎障害、黄疸など膵臓以外の臓器障害を伴い、死亡率が高い。

■ 合併症

合併症どんな状態か
全身性炎症反応症候群(SIRS)膵臓などで起きた炎症が、全身に広がってしまった状態。発熱や低体温、心拍数や呼吸数の増加などがみられ、進行すると多臓器不全になる場合がある。
播種性血管内凝固(DIC)全身の細い血管の中で血液が固まりやすくなり、小さな血の塊(血栓)が多数できる状態。血を固める成分が使い果たされるため、今度は逆に出血が止まりにくくなる。
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)全身の炎症によって肺の血管から水分が漏れ出し、肺で酸素をうまく取り込めなくなり、致命的な呼吸困難の状態になる。
急性腎障害脱水や血流の低下、炎症などによって、腎臓の働きが急激に低下した状態。尿が出にくくなったり、体内に有害な老廃物が蓄積する。

膵炎の症状は胃腸炎や消化管内異物など多くの病気と共通しているため、臨床症状・血液検査・画像検査を総合して診断します。

■ 血液検査

●膵特異的リパーゼ(cPL):膵臓由来のリパーゼだけを特異的に測定する検査で、現在の膵炎診断の中心です。

●アミラーゼ:デンプンを分解する消化酵素で、古くから膵炎の指標として用いられてきました。しかし膵臓以外に小腸などからも分泌され、腎臓の働きが低下しても値が上がるなど、膵臓以外の影響を受けやすく、現在は診断的価値が低いとされています。

●リパーゼ活性:脂肪を分解する消化酵素の働き(活性)を測る検査です。従来の測定法では、胃など膵臓以外から分泌されるリパーゼも一緒に測ってしまい、腎臓の働きの低下やステロイド剤の投与でも値が上がるなど、膵臓以外の影響を受けやすく、現在は診断的価値が低いとされています。

その他の項目: CRP、肝酵素、腎数値、電解質、血糖値、凝固系、中性脂肪などを測定し、総合的に重症度や合併症、背景疾患を評価します。

■ 画像検査

膵炎の確定診断には本来、膵臓の組織検査が必要ですが、侵襲性が高いため実際にはほとんど行われず、画像検査を組み合わせて臨床的に診断するのが一般的です。

●腹部超音波検査:膵臓の腫大・低エコー化、膵周囲脂肪の高エコー化、腹水などを観察できる、画像診断の中心となる検査です。胆管閉塞の有無も評価できます。ただし、発症初期や軽症例では異常が見つからないこともあります。

●レントゲン(X線)検査:膵炎そのものの診断には有用性が低いものの、嘔吐の原因となる消化管内異物や腸閉塞を除外するために重要な検査です。


膵炎の治療は長らく、「膵臓を休ませ、体の回復を支える」支持療法が中心でした。この基本は現在も変わりませんが、ここ数年で考え方が大きく変化した部分もあります。

■ 輸液療法

治療の土台となるのが静脈輸液です。脱水と電解質異常を補正し、膵臓の血流を維持することで、壊死の進行や腎障害を防ぎます。

■ 疼痛管理

膵炎の腹痛は非常に強く、痛みそのものが回復を遅らせるため、積極的な鎮痛が推奨されています。
嘔吐症状が強い場合には、薬剤は注射や点滴薬で投与します。
また、副作用により合併症を誘発する場合もあるため、薬剤の選択は診療に行います。

■ 早期の栄養管理~「絶食」から「早く食べさせる」へ~

かつての膵炎治療では「膵臓を休ませるために数日間は絶食」が常識でした。しかし現在では、早期(おおむね48〜72時間以内)に経腸栄養を開始する方が、腸粘膜のバリア機能が保たれ回復が早いと考えられています。

重症膵炎は体のエネルギーを激しく消耗する病態であり、嘔吐がコントロールでき次第、低脂肪で消化の良い食事を少量から開始します。自力で食べられない場合は経鼻食道チューブなどによる栄養補給も検討されます。

■ 炎症そのものを抑える治療

近年最大のトピックが、膵炎の病態そのものに作用する新薬の登場です。
日本で開発されたフザプラジブナトリウム水和物は、炎症性細胞の表面にある接着分子(インテグリンの一種であるLFA-1)の活性化を阻害する薬剤です。これにより、炎症性細胞が血管から組織へ入り込むのを防ぎ、膵炎の増悪化を抑えます。従来のステロイドやNSAIDsとは異なる作用機序を持つのが大きな特徴です。

また、日本の後ろ向き研究では、急性膵炎の犬へのステロイド(プレドニゾロン)早期投与でCRPの低下が早く、入院期間が短縮したと報告されています。
ただし前向きの比較試験による検証はまだ十分ではなく、使用するかどうかは症例ごとに判断されます。

■ 外科的治療と長期管理

膵膿瘍や胆管閉塞が解除されない場合などには外科手術が検討されます。
なお、感染の根拠がない膵炎への抗菌薬のルーチン使用は推奨されていません。


膵炎の管理では、「炎症と全身合併症のコントロール」「嘔吐と痛みの緩和」「栄養状態の維持」「再発予防」を目的とした薬剤・療法食・サプリメントが組み合わせて使用されます。実際の使用にあたっては必ず獣医師と相談しましょう。

■ メインとなる治療薬

注射薬の多くは動物病院での投与となり、内服薬は症状が落ち着いた後の自宅での管理に用いられます。

成分(製品名)特徴・役割
フザプラジブナトリウム(ブレンダZ)LFA-1活性化阻害により好中球の浸潤を抑え、膵臓の炎症の拡大とSIRSなどの全身合併症の予防を狙う、犬の急性膵炎による炎症を抑制する最新の注射薬。
マロピタント
(セレニア錠)
NK1受容体拮抗薬。嘔吐中枢と末梢の両方に作用する強力な制吐剤で、膵炎の制吐治療の第一選択。内臓痛を和らげる作用も期待されている。
メトクロプラミド
(ボミットバスター錠)
ドパミンD2受容体拮抗作用による制吐作用と、上部消化管の運動促進作用を併せ持つ、従来から使われている薬剤。消化管閉塞がないことを確認したうえで使用する。
モサプリドクエン酸塩
(プロナミド錠)
セロトニン5-HT4受容体を刺激して胃・十二指腸の運動を促進する。胃内容物の停滞に伴う嘔吐や食欲不振の改善に用いられる。
乳酸菌製剤
(ビオイムバスター錠)
消化不良・下痢・食欲不振の改善を目的とする医薬品で、回復期の消化器症状に用いられることがある。膵炎そのものへの効果は示されていない。EPIを併発した場合は、専用の消化酵素補充療法が必要になる。
プレドニゾロン
(ステロイド製剤)
急性膵炎の初期治療や、免疫介在性が疑われる慢性膵炎で使用されることがある。血糖値の上昇や感染症のリスクに注意。
胃酸分泌抑制薬胃酸分泌を抑え、胃・食道粘膜の障害を予防する目的で併用される。

※上記は学術情報に基づく一般的な内容であり、実際の使用にあたっては必ず獣医師の指示に従ってください。

■ 疼痛管理に用いられる薬剤

膵炎による腹痛は非常に強力な内臓痛であるため、状態や痛みの強さに応じて以下のような鎮痛薬が選択されます。なお、関節炎などで鎮痛薬を服用している場合は、膵炎の治療中、一時的に休薬や変更が必要になる場合があります。受診時には、普段飲んでいるお薬やサプリメントを必ず獣医師へ伝えましょう。

成分特徴・役割
オピオイド系鎮痛薬膵炎の疼痛管理の中心で、痛みの強さに応じて注射や持続点滴で使い分けられる。
リドカインオピオイドだけでは抑えきれない重度の痛みに併用される。腸管運動の回復や抗炎症作用も期待されている。
ガバペンチン慢性膵炎で持続する慢性的な腹痛に対し、鎮痛補助薬として使用されることがある。

※上記は学術情報に基づく一般的な内容であり、実際の使用にあたっては必ず獣医師の指示に従ってください。

■ 食事療法~急性期のリキッドから長期の低脂肪食まで~

膵炎の食事管理で最も重要なのは、脂肪を抑えた消化の良い食事です。
自力で十分に食べられない急性期には、経鼻食道チューブやシリンジから与えられるリキッドタイプ(流動食)の低脂肪療法食が用いられ、回復して自力で食べられるようになったら、ドライやウェットの低脂肪療法食へ切り替えて長期の再発予防につなげます。

製品名特徴・役割
ロイヤルカナン 消化器サポート 低脂肪 リキッド低脂肪・高消化性のリキッドタイプ療法食。経口でもチューブでも与えられ、少量で必要なエネルギーを補給できる。高脂血症の犬や、病気の回復期・手術後など栄養要求量が高まっている犬に用いられる。また、食欲が出てきたら、同シリーズのウェットやドライフードタイプも与えられる。
チューブ・ダイエット 犬用〈低脂肪〉
(森乳サンワールド)
粉末をぬるま湯に溶かして使う低脂肪・高消化性の経腸栄養食。急性膵炎などの消化器疾患を対象とし、濃度を調整することで細いチューブ、シリンジ、ペースト状での経口給与に対応できる。
ヒルズ プリスクリプション・ダイエット i/d ローファット
(ドライ・缶詰)
脂肪を抑えた高消化性の消化器ケア用療法食。回復期から長期の再発予防、高脂血症の食事管理まで幅広く用いられる。

※療法食は、必ず獣医師の診断と指示のもとで与えてください。手作り食やおやつで脂肪が多くなると、療法食の効果が損なわれることがあります。

■ サプリメント・補助的に用いられるもの

現時点で、膵炎そのものに対する効果が研究で確かめられたサプリメントはなく、サプリメントは膵炎の標準的な治療には含まれていません。
動物病院では、併発している状態や消化器症状に応じて、以下のようなものが補助的に使われることがあります。

製品名・成分用いられる目的と根拠
アンセットなどのオメガ3脂肪酸
(EPAやDHA)製品
高トリグリセリド血症を伴う犬で、中性脂肪を下げる目的の補助として用いられることがある。ただし、犬での有効性や適切な用量は確立していない。それ自体が脂肪であり、与えるほど脂肪の摂取量が増えるため、獣医師の指示のもとで慎重に使う。
SOPHIA FLORA CARE
(フローラケア)やビオフェルミンS
などの乳酸菌製品
腸内環境を整える目的で、回復期の便の状態のケアに用いられることがある。しかし、人の重症急性膵炎では、急性期のプロバイオティクス投与で死亡率が上がったという臨床試験があり、急性期の使用は獣医師の判断に従う。

※サプリメントは医薬品の様な具体的な効能効果を期待するものではありません。膵炎の既往がある犬に、脂質を含むサプリメントや新しいおやつを与える際は、必ず事前に獣医師に相談してください。


  • 繰り返す嘔吐、食欲不振、祈りのポーズなどの腹痛のサインに気づいたら、様子を見すぎず速やかに受診する
  • 急性膵炎と慢性膵炎は膵臓の組織の変化による分類で、症状だけでは区別できない。慢性膵炎は進行するとEPIや糖尿病の原因となることがあり、再発予防が大切
  • 診断は膵特異的リパーゼ(cPL)と腹部超音波検査を中心に総合的に行い、重症例では全身合併症の評価が欠かせない
  • 治療は輸液・疼痛管理・制吐・早期の栄養管理が基本。近年は炎症そのものを抑える治療が多く用いられている
  • 回復後は低脂肪食の継続、体重管理、高脂血症・内分泌疾患の治療、盗み食いの防止で再発予防に努める

膵炎は再発しやすく、繰り返すうちに慢性膵炎や糖尿病へ進行することもある病気です。
愛犬の「いつもと違う」嘔吐や元気のなさに気づいたら、早めに獣医師に相談しましょう。

■ 参考文献

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Xenoulis PG, Steiner JM. Canine hyperlipidaemia. J Small Anim Pract. 2015;56(10):595-605.

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Merck Veterinary Manual. Pancreatitis in Dogs and Cats. https://www.merckvetmanual.com/digestive-system/the-exocrine-pancreas/pancreatitis-in-dogs-and-cats

犬の膵炎の治療薬・関連療法食・サプリメント 取り扱いページ. https://nekoazarasi.com/

【獣医師監修】『ブラベクト スポット猫用』と『ブラベクト プラス猫用』の違いを徹底比較!愛猫に最適な駆虫薬の選び方とは!?

猫のノミ・マダニ対策やフィラリア症予防で動物病院を受診した際、よく提案されるのが「ブラベクト」シリーズです。

現在は「ブラベクト スポット猫用」と「ブラベクト プラス猫用」の2種類がラインナップされていますが、「何が違うのかわからない」「うちの子にはどちらを選べばいいの?」と迷われる飼い主様も少なくありません。

この記事では、2つの製品の違いや選び方を詳しく解説します。


まずは、両製品の最大の違いである「配合成分」と「予防・駆除できる寄生虫の範囲」を比較してみましょう。

項目 ブラベクト スポット猫用 ブラベクト プラス猫用
医薬品区分 一般動物用医薬品 要指示医薬品 / 指定医薬品 / 劇薬
有効成分 1成分
(フルララネル)
2成分
(フルララネル + モキシデクチン)
ノミ駆除 〇(約3か月間持続) 〇(約3か月間持続)
マダニ駆除 〇(約3か月間持続) 〇(約2〜3か月間持続)
フィラリア予防 × 〇
消化管寄生虫
× 〇(猫回虫・猫鉤虫)
対象条件 11週齢以上・体重1.2kg以上 9週齢以上・体重1.2kg以上
投与方法 スポットオン(皮膚に滴下) スポットオン(皮膚に滴下)
投与頻度 3か月に1回 3か月に1回

どちらの製品も『投薬は3か月に1回』でOK!
毎月のお薬作業や点滴のストレスを激減させたい飼い主様に最適です。
予防目的に合わせて以下のように選びましょう。

・「フィラリア予防は別で行っており、ノミ・マダニだけを『3か月に1回』の投薬で長期間しっかり駆除したい」
👉 ブラベクト スポット猫用がおすすめ

・「毎月のお薬作業から解放されたい!ノミ・マダニ・フィラリア予防・お腹の虫まで『3か月に1回』でまとめてオールインワン対策したい」
👉 ブラベクト プラス猫用がおすすめ


医薬品区分 一般動物用医薬品
有効成分 フルララネル(280mg/mL)
効能・効果 猫:ノミ及びマダニの駆除
対象条件 11週齢以上、かつ体重1.2kg以上の猫

・成分の作用と特徴
イソオキサゾリン系成分「フルララネル」が寄生したノミやマダニの神経系に作用し、速やかに駆除します。
最大の特徴は、1回の投与でノミ・マダニ駆除効果が約3か月間持続する点です。
年間4回程度の投与で1年中ノミ・マダニ対策が完了するため、投薬の手間や愛猫のストレスを大幅に軽減できます。

医薬品区分 要指示医薬品、指定医薬品、劇薬
有効成分 フルララネル(280mg/mL)+ モキシデクチン(14mg/mL)
効能・効果 1. 犬糸状虫(フィラリア)症の予防
2. ノミ及びマダニの駆除
3. 猫回虫及び猫鉤虫の駆除
対象条件 9週齢以上、かつ体重1.2kg以上の猫

・成分の作用と特徴
「フルララネル」の強力なノミ・マダニ駆除効果に加え、「モキシデクチン」を配合。
血管内に侵入したフィラリア幼虫を駆除してフィラリア症を予防します(3か月間隔の継続投与で予防可能)。
さらに猫回虫・猫鉤虫まで同時に駆除できるオールインワン製剤です。


両製品とも、主成分フルララネルの含有量(mg)によって3つの規格がラインナップされています。
愛猫の体重に合わせて選択します。

規格(ピペット容量) 適用体重 対象製品・年齢
112.5mg
(0.4mLピペット)
体重 1.2kg以上 〜 2.8kg未満 ブラベクト スポット猫用
(11週齢以上)

ブラベクト プラス猫用
(9週齢以上)

250mg
(0.89mLピペット)
体重 2.8kg以上 〜 6.25kg未満
500mg
(1.79mLピペット)
体重 6.25kg以上 〜 12.5kg未満

(※いずれの製品も、体重12.5kgを超える猫ちゃんの場合は、フルララネル40mg/kgを基準量とし、獣医師の指示のもと適切なピペットを組み合わせて投与します)


■ 投与方法

ブラベクトシリーズのピペットはキャップを取り外す必要がありません。
ピペットを立てた状態で持ち、キャップを「カチッ」と音がして内部のシールが破れるまで1回転まわすことで開封できます。(※キャップは引っ張って引き抜かないでください)
開封後、猫ちゃんが自分で舐め取ることができない「頸背上部(首の後ろ側から、背中の上の方にかけて)」の毛をかき分け、皮膚に直接全量を滴下してください。

■ 安全に使用するための注意点

・完全に乾くまで触れない: 投与部位が乾くまで、触れないようにしてください。
・同居動物との接触を避ける: 投与直後にお互いを舐め合ってしまうのを防ぐため、薬剤が乾くまでは他の猫やペットとの接触を避けてください。
・シャンプー・水浴の制限: 薬効を安定させるため、投与後3日間は水浴あるいはシャンプーを控えてください。
・てんかん・神経症状の既往歴: まれにけいれん等の神経症状が認められることがあるため、てんかん発作の病歴がある猫ちゃんへ投与する場合は獣医師にご相談ください。

■ 処方・受診について

「ブラベクト プラス」は要指示医薬品のため、入手には獣医師の処方または指示書が必要となります。
また、投与前には必ず動物病院でフィラリア非感染を確認する血液検査が必須です。
「ブラベクト スポット」は一般の動物用医薬品ですが、皮膚症状や健康状態に応じた最適な使用のために獣医師へのご相談をおすすめします。


ブラベクトシリーズ最大の強みは、「3か月に1回の投与で済むため、毎月の投与作業や愛猫への負担・ストレスを大幅に軽減できる」点にあります。

  • ノミ・マダニ対策だけをシンプルかつ『3か月に1回』で行いたい
    👉 ブラベクト スポット猫用
  • 『3か月に1回』の投与でフィラリア予防・ノミとマダニ・お腹の虫まで最広域にケアしたい
    👉 ブラベクト プラス猫用

愛猫の年齢や体重、完全室内飼いか外出の有無といった生活環境によって、ベストな予防プランは異なります。
毎月の投薬に苦労している飼い主様は、ぜひ一度かかりつけの動物病院でご相談してみてください。

また、動物用医薬品に関するご不明点やご相談がある場合は、動物のお薬の専門店『ねこあざらし薬店』にお気軽にお問い合わせください。

犬の椎間板ヘルニアとは?~歩き方の異変が危険信号!症状と治療について解説~【獣医師執筆】

椎間板は、背骨(脊椎)を構成する一つ一つの骨(椎骨)の間で、クッションの役割を果たしている組織です。
犬の「椎間板ヘルニア(Intervertebral Disc Disease:IVDD)」は、この椎間板の一部が本来の位置から飛び出し、すぐ上を通る脊髄を圧迫することで、痛みや麻痺などの神経症状を引き起こす疾患です。

犬の脊髄疾患の中でも発生頻度が非常に高く、特に胴の長い犬種でよくみられます。
「階段を嫌がる」「抱っこすると鳴く」といったサインは、椎間板ヘルニアの初期症状であることが少なくありません。

今回は、椎間板ヘルニアの分類、治療薬・サプリメントの選択肢まで、近年注目されている新しい選択肢も入れて詳しく解説します。


椎間板ヘルニアは病態によって大きく2つのタイプに分類されます。
以下の表でそれぞれの特徴を理解しておくことは、治療方針の選択に大切です。

分類 特徴
ハンセンⅠ型 髄核が変性・石灰化し、線維輪を突き破って急激に脊柱管内へ脱出するタイプ。ダックスフンド・コーギー・ビーグル・シーズー・フレンチブルドッグなどの軟骨異栄養性犬種に多く、3〜6歳という比較的若い時期でも急性に発症する場合がある。
ハンセンⅡ型 線維輪が徐々に変性し、髄核を含んだまま緩やかに膨隆するタイプ。大型犬や非軟骨異栄養性犬種に多く、中高齢で慢性・進行性の経過をたどりやすい。

軟骨異栄養性犬種(ダックスフンド・コーギー・ビーグル・シーズー・パグ・フレンチブルドッグなど)は、若齢から椎間板の変性が始まりやすい遺伝的特性を持っており、椎間板ヘルニア全体の発生の多くを占めるとされています。

中でも『ダックスフンド』は、報告によっては椎間板ヘルニア全体の半数近くを占めるとされるほど突出して発生率が高く、まさに代表的な好発犬種といえます。


椎間板ヘルニアの治療方針は、見た目の痛がり方だけでなく、神経学的検査によって評価される「グレード(重症度)」に基づいて決定されます。
代表的な分類が以下の5段階のグレード分類です。

グレード 状態の目安
グレード1 疼痛のみで歩様は正常。深部痛覚・随意運動は保たれている。
グレード2 不完全麻痺(ふらつき歩行)。自力歩行は可能だが後肢の踏み込みが弱い。
グレード3 完全麻痺(対麻痺)。自力歩行は不能だが、随意運動はわずかに残る。
グレード4 完全麻痺。随意運動は消失するが深部痛覚は残存し、排尿障害を伴うことが多い。
グレード5 完全麻痺かつ深部痛覚も消失。緊急性が最も高く、手術のタイミングが予後を大きく左右する。

グレード4及び5、特に深部痛覚が消失している場合は、発症から手術までの時間が予後を左右するとされており、可及的速やかな外科的減圧術が推奨されます。

※グレード評価はあくまで神経学的所見に基づくものであり、実際の圧迫部位や程度を正確に把握するためには、後述するMRI・CT検査による画像評価が不可欠です


椎間板ヘルニアは発生部位・重症度によって症状の現れ方が異なります。
以下のような点をチェックしてみましょう。

症状・所見 背景となるメカニズム
背中を丸める・触ると痛がる・震えが続く 線維輪の損傷や脊髄圧迫による痛み。
後肢がふらつく、爪を擦って歩く 脊髄圧迫による固有受容感覚(体の位置を感じる感覚)の低下。
後肢に力が入らない、立てない 運動神経路の圧迫により随意運動が障害。起立困難となる。
排尿・排便のコントロールができない 仙髄・馬尾を含む圧迫や自律神経路の障害による失禁や尿閉。
後肢の足先をつねっても痛がらない 深部痛覚の消失。最重度のサインであり緊急性が高い。
首を触られるのを嫌がる・頭を下げたまま動かない(頸部の場合) 頸髄の圧迫による強い疼痛。

また、椎間板ヘルニアでよくみられる症状を表す言葉に「抱きキャン」というものがあります。
愛犬の脇の下に手を入れて抱っこしようとすると「キャン!」と鳴く(痛がる)ことに由来しており、臨床の現場でよく使われています。


姿勢反応(足の甲を返す等)、脊髄反射、疼痛の局在、深部痛覚の有無などを評価し、おおよその障害部位とグレードを推定します。神経疾患が疑われる場合に、動物病院で最初に行う重要な検査です。

レントゲン(X線)検査:
骨の配列や椎間板の石灰化、椎間腔の狭小化を確認できる基本的な検査で、椎間板ヘルニアを疑う場合には最初に行う。椎間板の石灰化(硬化)や椎間の狭小化の有無などを評価する。
ただし脊髄や椎間板そのものは描出できず、圧迫の有無や程度は直接評価できない。

MRI検査:
脊髄そのものや周囲の軟部組織を高いコントラストで描出でき、圧迫部位・程度・脊髄の変性(浮腫や軟化)まで評価できるため、椎間板ヘルニア診断の主流であり、とくに手術を検討する場合にはほぼ必ず実施する。
しかし、全身麻酔が必須でコストも高く、対応できる施設が限られている。

CT検査:
骨や石灰化病変の描出に優れ、撮影時間が短く緊急時にも対応しやすい。
脊髄造影と組み合わせれば脊髄圧迫の評価も可能で、MRI非対応施設での代替手段にもなる。
ただし軟部組織のコントラスト分解能はMRIに劣り、単独では脊髄圧迫の評価が難しい。


治療方針は、グレード・発症からの経過時間・年齢や全身状態などを総合的に評価したうえで決定されます。

グレード1〜2の軽度な症例や、手術を希望しないorできない場合には、絶対安静とケージレスト(厳格な運動制限を3〜4週間程度)を基本とした内科的治療が選択されます。
消炎鎮痛剤で痛みと炎症をコントロールしながら、再発を防ぐために運動制限を徹底することが治療成功の鍵となります。
ただし、保存療法は再発率が外科手術より高いとされる報告もあり、グレードや生活環境に応じて慎重に選択する必要があります。

グレード3以上、特に深部痛覚のあるグレード3〜4では手術の成功率が高く、早期の外科的減圧術(片側椎弓切除術:ヘミラミネクトミーなど)が推奨されます。
グレード5(深部痛覚消失)でも、発症から48時間以内など早期に手術を行うことで歩行機能が回復する可能性があるとされ、まさに時間との勝負になります。
手術では、脊髄を圧迫している髄核を摘出し、圧迫を解除します。

手術後・保存療法中を問わず、近年は水中トレッドミル、レーザー治療、鍼治療などを組み合わせたリハビリテーションの重要性が広く認識されるようになっています。
神経機能の回復を促し、廃用性の筋萎縮を防ぐうえで有用な選択肢です。

手術で十分な回復が得られなかった症例や、手術を望まないorできない事情がある症例向けの新しい選択肢として、幹細胞治療を中心とした再生医療も登場し、近年注目されています。
日本では近年「犬の胸腰部椎間板ヘルニア」等を対象とした動物用再生医療等製品が世界に先駆けて承認されており、点滴投与によって神経・組織の修復を促すことが期待されています。
ただし効果には個体差があり、エビデンスの蓄積は発展途上であるため、費用面も含めて獣医師とよく相談したうえで検討する選択肢です。


椎間板ヘルニアの管理では、手術の有無にかかわらず「炎症・疼痛のコントロール」「神経障害性疼痛への対応」「椎間板・神経の健康維持」を目的とした薬剤・サプリメントが組み合わせて使用されます。

以下は、保存療法・術後管理で中心となる抗炎症・鎮痛薬です。ステロイドとNSAIDsは作用の仕方が異なるため、原則として同時に併用せず、切り替える際は消化管障害を避けるために一定の休薬期間を設けます。

成分(製品名) 特徴・役割
副腎皮質ステロイド
(プレドニゾロン等)
強力な抗炎症作用により、髄核脱出に伴う脊髄の炎症・浮腫を軽減する目的で、急性期の保存療法や手術前後の管理に用いられる。高用量・長期投与は多飲多尿や易感染性などの副作用を伴うため、投与量と期間は症例毎に慎重に判断される。
メロキシカム
(インフラカム/メロキシリン等)
オキシカム系のNSAIDs。1日1回投与で幅広い体重域に対応した規格があり、術後・慢性の炎症性疼痛の緩和に広く用いられる。
カルプロフェン
(リマダイル)
プロピオン酸系のNSAIDs。長年にわたり運動器疾患の炎症・疼痛緩和に使用されてきた実績のある薬剤。
ロベナコキシブ
(オンシオール)
COX-2高選択性のコキシブ系NSAIDs。効果発現が早く、炎症部位に長くとどまる特性を持つ。
グラピプラント
(ガリプラント)
COX阻害ではなくEP4受容体を選択的に阻害する新しい機序の薬剤。胃腸への影響が比較的少ないとされ、長期管理での選択肢として注目されている。
マバコキシブ
(トロコキシルチュアブル)
月1回の投与で効果が持続するチュアブルタイプ。通院・投薬の負担を軽減できる長期管理向けの選択肢。
犬脂肪組織由来間葉系幹細胞
(ステムキュア)
動物用再生医療等製品。犬(同種)脂肪組織由来の間葉系幹細胞を点滴で静脈投与し、損傷した神経・組織の修復をサポートする最新の治療。効果には個体差がある。

※上記は学術情報・各製品の添付文書情報に基づく一般的な内容であり、実際の使用にあたっては必ず獣医師の指示に従ってください。

椎間板ヘルニアの痛みには、組織の炎症による「炎症性疼痛」だけでなく、圧迫された神経そのものが損傷・過剰興奮することで生じる「神経障害性疼痛」が強く関与しています。

一般的な消炎鎮痛薬(NSAIDsやステロイド)は主に炎症を抑える目的で使用されるため、神経由来の痛みに対してはコントロールが不十分となるケースが少なくありません。
そのため、痛みが強い症例や慢性化している症例では、以下のような神経障害性疼痛治療薬が補助的に併用されます。

成分 特徴・役割
ガバペンチン 本来は人間用の抗てんかん薬ですが、神経の過剰な興奮を抑える作用を持つため、獣医療においても神経障害性疼痛に対する鎮痛補助薬として使用されることがあります。
プレガバリン ガバペンチンと同系統の薬剤ですが、ガバペンチンと比較して生体内での吸収性や持続性に優れており、既存の鎮痛薬で十分な鎮痛効果が得られない難治性の疼痛コントロールにおいて選択されます。

※上記は学術情報・各製品の添付文書情報に基づく一般的な内容であり、実際の使用にあたっては必ず獣医師の指示に従ってください。

椎間板や関節・神経の健康維持を目的としたサプリメントも、手術やリハビリと並行して広く活用されています。

製品名(成分) 特徴・役割
コセクイン
(グルコサミン塩酸塩・コンドロイチン硫酸・MSM配合)
椎間板を含む軟骨組織の構成成分を補い、関節・脊椎まわりのクッション性維持をサポートする。
ダスクイン
(コセクインにASU・オメガ3脂肪酸を追加配合)
コセクインの成分に加え、アボカド大豆不鹸化物(ASU)やオメガ3脂肪酸を配合し、軟骨成分と抗炎症サポートの両面から関節・椎間板の健康維持を狙う上位製品。
アンセット
(モエギイガイ抽出脂質、EPA・DHA高濃度配合)
オメガ3脂肪酸とリン脂質を豊富に含み、抗炎症作用を介して関節・脊椎まわりの炎症体質のサポートを目的とする。
アンチノールプラス
(EAB-277『モエギイガイ抽出脂肪酸PCO-524+クリルオイル』)
91種類の脂肪酸を含む独自成分により、関節だけでなく皮膚・被毛・心血管・神経認知機能まで幅広くサポートする。

※サプリメントは医薬品の様な具体的な効能効果を期待するものではなく、継続的な栄養給与によって椎間板や関節の健全な状態を維持・サポートする目的で使用されます。


  • 抱きキャンや歩き方の異変(ふらつき、背中を丸める)に気づいたら、運動を制限して速やかに受診する
  • 神経学的グレード分類が治療の指針。特に深部痛覚が消失するグレード4・5は時間との勝負
  • グレードや全身状態に応じ、絶対安静・外科手術・リハビリ・再生医療を適切に組み合わせる
  • ステロイド・NSAIDs・神経障害性疼痛治療薬・サプリメントを病態に合わせて活用し、再発予防に努める

椎間板ヘルニアは、早期発見および迅速な初期対応によって予後が大きく変わる疾患です。
愛犬の歩き方や仕草に少しでも違和感を覚えたら、決して様子を見すぎず、できるだけ早く獣医師に相談しましょう。

■ 参考文献

  • Brisson BA. Intervertebral disc disease in dogs. Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2010;40(5):829-858.
  • Fenn J, Drees R, Volk HA, et al. Classification of intervertebral disc disease. Front Vet Sci. 2020;7:579025.
  • Jeffery ND, Levine JM, Olby NJ, et al. Intervertebral disk degeneration in dogs: consequences, diagnosis, treatment, and future directions. J Vet Intern Med. 2013;27(6):1318-1333.
  • Levine JM, Levine GJ, Johnson SI, et al. Evaluation of the success of medical management for presumptive thoracolumbar intervertebral disc herniation in dogs. Vet Surg. 2007;36(5):482-491.
  • Aikawa T, Fujita H, Kanazono S, et al. Long-term neurologic outcome of hemilaminectomy and dorsal laminectomy for treatment of dogs with thoracolumbar intervertebral disc herniation: 831 cases (2000-2007). J Am Vet Med Assoc. 2012;241(12):1617-1626.
  • Olby NJ, Moore SA, Brisson B, et al. ACVIM consensus statement on diagnosis and management of acute canine thoracolumbar intervertebral disc extrusion. J Vet Intern Med. 2022;36(5):1570-1596.
  • Moore SA, Tipold A, Olby NJ, et al. Current approaches to the management of acute thoracolumbar disc extrusion in dogs. Front Vet Sci. 2020;7:610.
  • 椎間板ヘルニアの治療薬・関連サプリメント 取り扱いページ. https://nekoazarasi.com/
  • ステムキュア 添付文書・製品情報. 物産アニマルヘルス株式会社. https://vet-i.jp/contents/product/stemcure/index.html

【獣医師監修】『シンパリカ』と『シンパリカ トリオ』の違いを徹底比較!愛犬に最適な駆虫薬の選び方

愛犬のノミ・マダニ対策やフィラリア症予防で動物病院を受診した際、よく提案されるのが「シンパリカ」シリーズです。

現在、「シンパリカ」と「シンパリカ トリオ」の2種類がラインナップされていますが、「名前が似ていて何が違うのかわからない」「うちの子にはどれを選べばいいの?」と悩まれる飼い主様も少なくありません。

この記事では、2つの製品の違いを、詳しく解説します。


まずは2製品の最大の違いである「医薬品区分」「配合成分」と「効果効能(防げる虫)」の対応範囲を比較してみましょう。

項目 シンパリカ シンパリカ トリオ
医薬品区分 一般動物用医薬品 要指示医薬品 / 指定医薬品 / 劇薬
配合成分数 1成分
(サロラネル)
3成分
(サロラネル+モキシデクチン+ピランテルパモ酸塩)
ノミ・マダニ駆除 〇
(ノミ3時間・マダニ8時間で発現)
〇
(ノミ4時間・マダニ8時間で発現)
フィラリア予防 × 〇
東洋眼虫 予防 × 〇
消化管寄生虫 × 〇
(犬回虫、犬小回虫、犬鉤虫)
ミミヒゼンダニ 〇 ×
センコウヒゼンダニ・ニキビダニ 〇 〇
対象条件 8週齢以上、体重1.3kg以上 8週齢以上、体重1.5kg以上
最大適応体重 〜40.1kg未満
(組み合わせで60.1kg可)
〜60.1kg未満
味・フレーバー ミートフレーバー
(牛由来成分不使用/ポークレバー等)
ミートフレーバー
(牛由来成分不使用/ポークレバー等)
食餌の影響 なし
(絶食時でも投薬可能)
なし
(絶食時でも投薬可能)

・「フィラリア予防は通年別で行っており、ノミ・マダニ対策や皮膚のダニトラブルを予防・改善したい」
👉 シンパリカがおすすめ

・「毎月1回のおやつタイプで、フィラリア予防・ノミマダニ・お腹の虫・東洋眼虫・皮膚のダニまでまとめて対策したい」
👉 シンパリカ トリオがおすすめ


・医薬品区分: 一般動物用医薬品
・有効成分: サロラネル(5mg / 10mg / 20mg / 40mg / 80mg)
・効能・効果:
1. 犬:ノミ及びマダニの駆除
2. ミミヒゼンダニ及びイヌセンコウヒゼンダニの駆除
3. イヌニキビダニの駆除による全身性毛包虫症の改善

・成分の作用と特徴
イソオキサゾリン系成分『サロラネル』が、無脊椎動物の神経受容体を選択的に遮断して速やかに駆除します。

・速効性
投与後わずか3時間でノミ、8時間でマダニへの効果が発現。効果は35日間持続するため、1ヶ月の投与サイクルを余裕をもってカバーします。

・耳のトラブルに対応できる唯一の選択肢
激しい耳の痒みを引き起こす「ミミヒゼンダニ」の駆除効果は単剤のシンパリカのみに承認されています。
「イヌセンコウヒゼンダニ」「イヌニキビダニ(アカラス)」の駆除・改善効果も備えており、皮膚科診療の強い味方です。

・医薬品区分: 要指示医薬品、指定医薬品、劇薬
・有効成分: サロラネル + モキシデクチン + ピランテルパモ酸塩
・効能・効果:
1. 犬糸状虫症の予防(フィラリア症予防)及び東洋眼虫の寄生予防
2. ノミ及びマダニの駆除
3. イヌセンコウヒゼンダニの駆除、イヌニキビダニの駆除による全身性毛包虫症の改善
4. 消化管内寄生虫の駆除(犬回虫、犬小回虫、犬鉤虫)

・成分の作用と特徴
サロラネルによる速やかなノミ・マダニ・皮膚ダニ駆除に加え、モキシデクチンがフィラリア(犬糸状虫)やメマトイが媒介する「東洋眼虫」の寄生を予防。さらにピランテルパモ酸塩との相乗効果でお腹の虫(回虫・鉤虫)を速やかに駆除します。

・オールインワンの進化形
1錠でフィラリア予防・消化管寄生虫・皮膚ダニ(センコウヒゼンダニ・ニキビダニ)まで幅広くカバーできるため、投薬の手間や飲み忘れを防止できます。


愛犬の体重に合わせた適切なサイズを選択します。
シンパリカ トリオは超大型犬(〜60.1kg未満)に対応する「XXLサイズ」がラインナップされているのが特徴です。

・超小型犬用(5mg錠):1.3kg以上 〜 2.6kg未満
・小型犬用(10mg錠):2.6kg以上 〜 5.1kg未満
・中型犬用(20mg錠):5.1kg以上 〜 10.1kg未満
・大型犬用(40mg錠):10.1kg以上 〜 20.1kg未満
・超大型犬用(80mg錠):20.1kg以上 〜 40.1kg未満
(※40.1kg〜60.1kg未満は40mg錠と80mg錠を各1錠組み合わせ投与)

・XS:1.5kg以上 〜 2.6kg未満
・S:2.6kg以上 〜 5.1kg未満
・M:5.1kg以上 〜 10.1kg未満
・L:10.1kg以上 〜 20.1kg未満
・XL:20.1kg以上 〜 40.1kg未満
・XXL:40.1kg以上 〜 60.1kg未満


両製品とも嗜好性の高い小粒なチュアブル錠ですが、ポークレバーやコーンスターチ、小麦胚芽などを主原料としており、牛肉由来成分を含みません。牛肉アレルギーのある愛犬でも安心して投与いただけます。

他の駆虫薬の中には、食事の脂質と一緒に摂らないと吸収率が落ちるものもありますが、シンパリカの有効成分『サロラネル』は絶食時でも86.5%という高い生物学的利用率(吸収率)を示します。
そのため、食前・食後・空腹時を問わず、飼い主様の好きなタイミングでいつでも投薬できるのが大きなメリットです。


・投与頻度・タイミング
月に1回、経口投与します。フィラリアおよび東洋眼虫の予防を兼ねるシンパリカ トリオは、蚊やメマトイの活動開始後1ヵ月以内から活動終了後1ヵ月以内まで毎月1回投薬します。

・吐き出してしまった場合
万が一、投薬直後や短時間で丸ごと吐き出してしまった場合は、成分が十分吸収されていない可能性があるため、再投与について獣医師にご相談のうえ適切に対応してください。

・処方・受診について
「シンパリカ トリオ」は要指示医薬品のため、入手には獣医師の処方または指示書が必要となります。
また、投与前には必ず動物病院でフィラリア非感染を確認する血液検査が必須です。
「シンパリカ」は一般の動物用医薬品ですが、皮膚症状や健康状態に応じた最適な使用のために獣医師へのご相談をおすすめします。


シンパリカシリーズは、愛犬の予防目的や症状に合わせてベストな製品を選択できます。

  • ミミヒゼンダニ(耳の痒み)の治療・予防、またはフィラリア予防を別で行う場合
    👉 シンパリカ
  • 1錠でフィラリア・東洋眼虫・ノミマダニ・お腹の虫・皮膚ダニ(ニキビダニ等)まで最広域に予防したい場合
    👉 シンパリカ トリオ

なお、「愛犬にどの製品が適しているか」につきましては、症状や環境によります。
まずは一度、かかりつけの動物病院へご相談ください。

また、動物用医薬品に関するご不明点やご相談がある場合は、動物のお薬の専門店『ねこあざらし薬店』にお気軽にお問い合わせください。

猫の肥満細胞腫~犬との違い・皮膚型と内臓型・見逃せないサインと治療薬~【獣医師執筆】

肥満細胞とは、細胞内にヒスタミンなどを含む顆粒を多く蓄えた免疫細胞のことで、体が「太っているかどうか」とは関係がありません。

この肥満細胞が腫瘍化したものが「肥満細胞腫(Mast Cell Tumor:MCT)」であり、猫では皮膚腫瘍の中でも発生率の高い腫瘍のひとつとして知られています。
犬の肥満細胞腫は皮膚・皮下に発生するケースがほとんどですが、猫の場合は皮膚だけでなく、脾臓などの内臓や消化管にも比較的高い頻度で発生する点が大きな特徴です。

今回は、猫の肥満細胞腫について、参考として犬の肥満細胞腫との違いも織り交ぜながら、基礎知識から診断・治療薬までわかりやすく解説します。


猫の肥満細胞腫は発生部位と細胞の形態によって分類されます。
以下の表で全体像を把握しておくと、診断や治療方針の理解がスムーズになります。

大分類 中分類 特徴 頻度の目安
皮膚型 高分化型 多くは緩徐な経過をたどる。猫の肥満細胞腫の大部分を占める。 約60%
皮膚型 未分化型 転移リスクがやや高め。核異型が強く、増殖が速いタイプ。 約25〜28%
皮膚型 異形型(非定型) シャム猫の若齢個体に多く、自然退縮することもある。 約10〜20%
内臓型 脾臓型 内臓型の中で最多。脾臓のみの発生であれば、摘出後に長期生存が得られることもある。 数%程度
内臓型 消化管型 内臓型の中では少数。悪性度が高く、予後不良のことが多い。 数%程度

※頻度はSabattiniら(2010)・Henry & Herreraら(2013)・Litster & Sorenmoら(2006)のレビューをもとにした目安です。

肥満細胞腫は、猫の皮膚にできる腫瘍(できもの)の中で、基底細胞腫に次いで2番目に多く見られる病気です。
皮膚にできる腫瘍のおよそ5個に1個がこの肥満細胞腫と言われるほど身近な病気で、日常のチェックで気づかれることも決して珍しくありません。

肥満細胞は犬と同様、皮膚・粘膜・消化管など全身の結合組織に広く分布し、アレルギー反応や炎症反応、寄生虫への防御などに関わる免疫細胞です。
細胞内の顆粒にはヒスタミン・ヘパリン・プロテアーゼなどが含まれ、刺激を受けると顆粒の内容物を放出(脱顆粒)して炎症反応を引き起こします。

猫の肥満細胞腫でも、細胞増殖のシグナルを伝える受容体型チロシンキナーゼ「KIT」の異常が一部の症例で関与しているとされますが、犬に比べてc-kit遺伝子変異が検出される頻度は低いことが報告されています。
そのため、分子標的薬の効果を予測するうえでの遺伝子変異検査は、犬ほど確立されていないのが現状です。

犬では皮膚・皮下への発生がほとんどですが、猫では大きく「皮膚型」と「内臓型」に分けられます。
皮膚型がもっとも多く全体の大部分を占め、内臓型はそれに比べると頻度は低いものの、より重篤な経過をたどりやすいとされています。

内臓型はさらに「脾臓型」と「消化管型」に分かれます。皮膚型は頭頸部(耳介など)、体幹部に好発し、単発の数mmの小さな皮膚病変として見つかることが多いです。

犬の肥満細胞腫では、はっきりと盛り上がった「しこり」として見つかることが多いのに対し、猫の皮膚型は直径数mm程度の小さなピンク〜赤色の丘疹(きゅうしん)や結節として見つかることが多く、必ずしも明瞭に隆起しているとは限りません。

表面がやや脱毛していたり、かさぶた状になっていたり、平坦に近い皮膚の変化として気づかれることもあり、初期には虫刺されや軽い皮膚炎と見分けがつきにくいこともあります。
頭部・耳介に多くみられますが、体幹や四肢にできることもあります。

発生年齢の中央値は9歳前後と報告されていますが、実際には若齢でもよく見られ、4歳以下での発生も全体の約20%に上るとするデータもあります。筆者自身も、3歳以下での発生を何例も経験しています。「まだ若いから大丈夫」と思わず、日ごろから皮膚の変化をチェックすることが大切です。

また、猫では皮膚に複数の病変が同時に見つかること(多発例)も珍しくありません。
1個見つかったときに、確認のために全身の毛刈りをしてみると、筆者の場合は最大で17個見つかったこともあります。

しかし、犬とは異なり、猫では多発していること自体が必ずしも予後の悪化に直結しないとされている点も大きなポイントです。

【犬との違いのポイント:ダリエ徴候】

犬の肥満細胞腫ほど典型的ではありませんが、猫でも刺激によって肥満細胞が脱顆粒し、病変の周囲が一時的に赤くなったり腫れたりする反応(ダリエ徴候)がみられることがあります。猫では症状が目立ちにくいこともありますが、病変を繰り返し触ったり揉んだりすることは避け、変化に気づいたら早めに動物病院を受診しましょう。


第1章の分類早見表でふれたとおり、「皮膚型」は細胞の形態によってさらに詳しく分類されます。
犬では予後予測に広く用いられる統一的なグレーディングシステムが確立されていますが、猫ではまだ確立されていません。これは犬との大きな違いのひとつで、代わりに以下のような組織学的分類が参考にされます。

分類 概要 頻度の目安
肥満細胞型
(高分化型)
細胞の分化度が高く、核異型が少ないタイプ。肥満細胞型の大部分を占め、多くは緩徐な経過をたどる。 全体の約60%
肥満細胞型
(未分化型)
核異型が強く、増殖が速いタイプ。転移リスクが比較的高いとされる。 全体の約25〜28%
異形型
(非定型)
若齢〜シャム猫に好発する特殊型。自然退縮する例が報告されている。 全体の約10〜20%

※上記の頻度は、Sabattiniら(2010、症例数25例)やHenry & Herreraら(2013)のレビューをもとにした目安です。報告数が限られているため、施設や地域によって数値には幅があります。

内臓型(脾臓型)では腹部超音波検査による脾臓の腫大や構造の評価、消化管型では消化管壁の肥厚・潰瘍の有無の確認が重要です。

皮膚型であっても、一定数は脾臓などへの転移が疑われるケースがあるため、皮膚の病変のみと思われる場合でも超音波検査による内蔵の確認が推奨されます。


≪青丸:肥満細胞腫≫

猫の肥満細胞腫は発生部位によって現れる症状が大きく異なります。以下のような点をチェックしてみましょう。

症状・所見 背景となるメカニズム
皮膚の丘疹・結節 肥満細胞の増殖により病変を形成。数mmのピンク色で。小さな湿疹と間違われることも少なくない。
触ると赤くなる・軽度に腫れる 刺激による脱顆粒でヒスタミンが放出される反応(軽度のダリエ徴候)。無理に触らず早めに受診を。
元気消失・食欲不振・体重減少 脾臓型での脾腫大や、それに伴う貧血・全身状態の悪化によって生じる。
嘔吐・下痢・黒色便(タール便) ヒスタミンによる胃酸分泌の亢進で、胃・十二指腸潰瘍や消化管出血が起こる。特に消化管型で顕著。
腹部の触知可能な腫瘤・膨満感 脾臓の腫大や消化管腫瘤、腹水の貯留などによって生じる。
リンパ節の腫れ 所属リンパ節への転移により腫大することがある。触診・エコーでの評価が重要。

≪赤丸:一個の肥満細胞 、 青矢印:細胞内顆粒≫

皮膚の病変に対しては、細い針で細胞を吸引する針生検(Fine Needle Aspiration:FNA)が第一に行われます。
通常、腫瘍の確定診断には病理検査(ある程度切除して検査に出す)が必要で、簡易検査であるFNAだけで確定診断までできる腫瘍は多くありません。
しかし、肥満細胞腫は細胞内に特徴的な紫色の顆粒を持つため、麻酔なしのこの検査で迅速に診断できることも多いです。

猫では内臓型・消化管型の頻度が比較的高いため、腹部超音波検査(脾臓・肝臓・消化管の評価)が特に重要です。
また、あわせて胸部X線検査、血液検査(一般臨床検査に加え、血液中への肥満細胞の出現の有無を確認する塗抹検査など)も行われます。

民間の検査センターで猫のKIT(c-kit)遺伝子変異検査を実施することも可能ですが、前述の通り猫では変異の検出頻度自体が犬より低く、分子標的薬の効果予測における臨床的な位置づけは、犬ほど確立されていません。
今後の症例データの蓄積が期待される分野です。


猫の肥満細胞腫の治療の第一選択は手術で切除することですが、発生部位(皮膚型/脾臓型/消化管型)によって治療のアプローチが異なります。

皮膚型で転移のない肥満細胞腫に対しては、外科的完全切除一択です。

犬では従来、周囲2〜3cm程度のマージン(腫瘍の周りを何㎝広く切除するか)が目安とされることが多いのに対し、猫ではこうした明確なマージン基準はまだ確立されておらず、通常の狭い切除幅であっても良好な予後を示す報告も多くあります。

脾臓型(内臓型)に対しては、脾臓摘出術が第一選択となります。脾臓のみの発生であれば、摘出後に長期の生存が得られる例も少なくありません。

消化管型では、腫瘤の存在する腸管の切除が検討されますが、他のタイプに比べて予後は厳しい傾向にあります。

完全切除が難しい部位や、切除後に断端に腫瘍細胞が残存した場合には、放射線治療が選択肢となります。
猫でも局所再発の抑制効果が期待されていますが、実施頻度は多くありません。

転移がみられる症例や、脾臓型・消化管型などで外科的切除が難しい場合には、全身療法として化学療法が検討されます。

従来から適応外で用いられているビンブラスチンなどの抗がん剤に加え、近年では犬用の分子標的薬であるトセラニブを猫の肥満細胞腫に適応外で使用する報告が増えており、治療の選択肢のひとつとなっています。

ただし、猫における投与量や副作用のモニタリング方法については、確立されたプロトコルがまだ十分ではないのが現状です。


猫の肥満細胞腫の治療では、外科手術を軸に「全身療法(抗がん剤・分子標的薬)」や「症状緩和のための支持療法薬」を発生部位や悪性度に応じて組み合わせて管理していきます。

成分(製品名) 特徴・役割
トセラニブ
(パラディア)
KITを標的とする分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害薬)。犬の肥満細胞腫に承認されている経口薬だが、猫の肥満細胞腫(特に切除困難例・転移例)に対しても臨床現場での使用が増えている。腫瘍細胞の増殖シグナルの抑制と血管新生の抑制が期待される一方、猫では消化器症状などの副作用に対するモニタリングがより重要となる。

※トセラニブは犬用の医薬品であり、猫の医薬品として承認されているものではありません。実際の使用にあたっては、必ず獣医師の診断と指導のもとで行われます。

ビンブラスチン
(エクザール)
プレドニゾロンと併用する形で従来から用いられている注射用の抗がん剤で、脾臓型・消化管型など全身療法が必要な高悪性度の症例で選択される。猫では消化管の神経への影響により、便秘・食欲不振などが生じるケースもあり、投与後は排便や食欲の様子を注意深く観察することが重要とされる。

※ビンブラスチンは人間用の医薬品であり、猫の医薬品として承認されているものではありません。実際の使用にあたっては、必ず獣医師の診断と指導のもとで行われます。

副腎皮質ステロイド 抗炎症・抗アレルギー作用があり、単独あるいは他の抗がん剤と併用される。脾臓摘出後の補助療法や、切除困難な腫瘍の緩和目的でも使われる。
抗ヒスタミン薬 肥満細胞から放出されたヒスタミンが引き起こす皮膚の赤み・腫れ・かゆみを抑える目的で使用。手術前後や脱顆粒のリスクがある場面でも併用される。
胃酸分泌抑制薬 ヒスタミンの刺激による胃酸の過剰分泌を抑え、胃潰瘍・十二指腸潰瘍や嘔吐・食欲不振を予防・軽減する目的で併用される。消化管型では特に重要。

※上記は学術情報に基づく一般的な内容であり、実際の使用にあたっては必ず獣医師の指示に従ってください。


実際の臨床現場では、猫の肥満細胞腫は、皮膚の小さな病変として見つかるケースが一番多いです。
また、猫は犬や人間ほど頻繁には体表に丘疹(ニキビや虫刺されのような赤い湿疹)はできません。
ただの一時的な湿疹だと思っても、数日で引かないようであれば念のため動物病院で相談しましょう。

  • 猫の肥満細胞腫は、皮膚型だけでなく内臓型(脾臓型・消化管型)の発生も少なくない
  • 皮膚に小さな丘疹や結節を見つけたら自己判断せず、早めに針生検(FNA)を受ける
  • 皮膚型でも一定数は内臓への転移が疑われるため、腹部超音波検査などの確認が重要
  • 猫では統一的なグレード分類やマージン基準が犬ほど確立されておらず、症例ごとの評価がより重要になる
  • 切除が難しい場合でも、抗がん剤や分子標的薬の適応外使用、症状を和らげるお薬など治療の選択肢がある
  • 富士フイルム株式会社. 病理・細胞診 診断医コラム 第4回:猫の皮膚肥満細胞腫(獣医療従事者向け)約400症例のデータ解析. https://www.fujifilm.com/jp/ja/healthcare/veterinary/
  • Litster AL, Sorenmo KU. Characterisation of the signalment, clinical and survival characteristics of 41 cats with mast cell neoplasia. J Feline Med Surg. 2006.
  • Melville K, Smith KC, Dobromylskyj MJ. Feline cutaneous mast cell tumours: a UK-based study comparing signalment and histological features with long-term outcomes. J Feline Med Surg. 2015.
  • Sabattini S, Bettini G. Prognostic value of histologic and immunohistochemical features in feline cutaneous mast cell tumors. Vet Pathol. 2010.
  • Sabattini S, Bettini G. Grading cutaneous mast cell tumors in cats. Vet Pathol. 2019.
  • Henry C, Herrera C. Mast cell tumors in cats: clinical update and possible new treatment avenues. J Feline Med Surg. 2013.
  • Chastain CB, Turk MA, O’Brien D. Benign cutaneous mastocytomas in two litters of Siamese kittens. J Am Vet Med Assoc. 1988.
  • Molander-McCrary H, et al. Cutaneous mast cell tumors in cats: 32 cases (1991-1994). J Am Anim Hosp Assoc. 1998.
  • London CA, Thamm DH. Mast cell tumors. In: Withrow SJ, Vail DM, Page RL, eds. Withrow & MacEwen’s Small Animal Clinical Oncology. Saunders-Elsevier.
  • Berger EP, Johannes CM, Post GS, et al. Retrospective evaluation of toceranib phosphate (Palladia) use in cats with mast cell neoplasia. J Feline Med Surg. 2018.
  • Veterinary Society of Surgical Oncology (VSSO). Splenic MCT ― Feline. https://vsso.org/splenic-mct
  • ゾエティス・ジャパン株式会社. パラディア錠 添付文書・製品情報. https://www.zoetis.jp/
  • 農林水産省動物医薬品検査所. 動物用医薬品等データベース. https://www.maff.go.jp/nval/index.html

【獣医師監修】『クレデリオ』シリーズ3種を比較して徹底解説!

愛犬のノミ・マダニ対策やフィラリア予防で動物病院を受診した際、よく提案されるのが「クレデリオ」シリーズです。現在、「クレデリオ錠」「クレデリオプラス錠」「クレデリオクワトロ錠」の3種類がラインナップされていますが、「名前が似ていて何が違うのかわからない」「うちの子にはどれを選べばいいの?」と悩まれる飼い主様も少なくありません。
この記事では、3つの製品の「予防・駆除できる範囲(効能・効果)」「配合成分の役割」「医薬品分類」「体重別の規格サイズ」「味(フレーバー)」の違いを、詳しく解説します。


まずは3製品の最大の違いである「医薬品区分」「配合成分」「効果効能(防げる対象)」などを比較してみましょう。

項目 クレデリオ錠 クレデリオプラス錠 クレデリオクワトロ錠
医薬品区分 動物用医薬品 動物用医薬品、指定医薬品、要指示医薬品 動物用医薬品、指定医薬品、要指示医薬品
配合成分 1成分
(ロチラネル)
2成分
(ロチラネル+ミルベマイシンオキシム)
4成分
(ロチラネル+モキシデクチン+プラジクアンテル+ピランテルパモ酸塩)
ノミ・マダニ 〇 〇 〇
フィラリア予防 × 〇 〇
消化管寄生虫 × 〇
(犬回虫、犬鉤虫〔成虫・幼虫〕、犬鞭虫)
〇
(犬回虫〔未成熟虫・成虫〕、犬小回虫、犬鉤虫〔未成熟虫・成虫〕、条虫類〔瓜実条虫、単包条虫・多包条虫(エキノコックス)〕)
イヌニキビダニ × × 〇
対象の条件 8週齢以上
体重1.5kg以上
8週齢以上
体重1.7kg以上
8週齢以上
体重1.5kg以上
味 ビーフフレーバー
(豚肝臓由来)
ビーフフレーバー
(豚肝臓由来)
ビーフフレーバー
(動物由来タンパク不使用、ミートフリー)

「フィラリア予防は別の投薬や注射で済ませており、ノミ・マダニ対策を確実に行いたい」
👉 クレデリオ錠がおすすめ

「毎月1回のおやつタイプで、ノミ・マダニ対策・フィラリア予防・基本的なお腹の虫駆除を1錠で終わらせたい」
👉 クレデリオプラス錠がおすすめ

「フィラリアやノミマダニだけでなく、エキノコックスや条虫(サナダムシ)、ニキビダニまで1回で最広域に予防・駆除したい」「肉類アレルギーがある」
👉 クレデリオクワトロ錠がおすすめ


医薬品区分: 一般動物用医薬品
有効成分: ロチラネル(56.25mg / 112.5mg / 225mg / 450mg / 900mg)

効能・効果:
犬:ノミ及びマダニの駆除

成分の作用と特徴:
有効成分ロチラネルは、イソキサゾリン系に分類される抗寄生虫成分です。寄生虫の神経伝達系(GABA受容体)に選択的に作用し、麻痺させて駆除します。

速効性と持続性:
投与後、ノミに対しては6時間以内(新規寄生は4時間以内)、マダニに対しては8時間以内(新規寄生は48時間以内)に駆除効果を発揮します。1回の投与で効果が1ヶ月間持続します。

こんな子に:
「フィラリア予防は通年注射で行っている」「ノミマダニ対策だけを行いたい」という場合に最適です。

医薬品区分: 要指示医薬品、指定医薬品
有効成分: ロチラネル + ミルベマイシンオキシム

効能・効果:
・犬糸状虫症の予防(フィラリア症予防)
・ノミ及びマダニの駆除
・消化管内寄生虫の駆除(犬回虫、犬鉤虫〔成虫・幼虫〕、犬鞭虫)

成分の作用と特徴:
ロチラネルのノミ・マダニ駆除効果に加え、マクロライド系のミルベマイシンオキシムを配合。犬糸状虫の幼虫(L3/L4)を駆除して心臓への寄生を防ぐとともに、お腹の代表的な有害寄生虫(回虫・鉤虫・鞭虫)を同時に撃退します。

こんな子に:
ノミ・マダニ対策とフィラリア予防のシーズンが重なる時期に、投薬の手間や飲み忘れを最小限に抑えたい場合。

医薬品区分: 要指示医薬品、指定医薬品
有効成分: ロチラネル + モキシデクチン + プラジクアンテル + ピランテルパモ酸塩

効能・効果:
・犬糸状虫の寄生予防(フィラリア症予防)
・ノミ及びマダニの駆除
・イヌニキビダニの駆除による全身性毛包虫症の改善
・消化管内寄生虫の駆除(犬回虫〔未成熟虫・成虫〕、犬小回虫、犬鉤虫〔未成熟虫・成虫〕)
・条虫類の駆除(瓜実条虫、単包条虫、多包条虫〔エキノコックス〕)

成分の作用と特徴:
4つの有効成分を組み合わせることで、従来のオールインワン剤では対応できなかった寄生虫までカバー範囲を広げた最新の製剤です。

追加効果①: 頑固な皮膚病の原因となるイヌニキビダニを駆除
追加効果②: 瓜実条虫(サナダムシ)や人獣共通感染症として重要視される多包条虫(エキノコックス)などの各種寄生虫を駆除

こんな子に:
草むらやドッグランによく行く子、野山でお散歩する子、人への感染リスクも徹底的に防ぎたいご家庭にベストです。


愛犬の体重に合わせた適切なサイズ(S/M/L/LL/XL)を選択します。
有効成分の組み合わせにより、製品ごとに投与可能な最小体重や体重区分が異なります。

クレデリオ錠(対象:8週齢以上、体重1.5kg以上)
・S:1.5kg以上 〜 2.5kg以下
・M:2.5kg超 〜 5.5kg以下
・L:5.5kg超 〜 11.0kg以下
・LL:11.0kg超 〜 22.0kg以下
・XL:22.0kg超 〜 45.0kg以下

クレデリオプラス錠(対象:8週齢以上、体重1.7kg以上)
・S:1.7kg以上 〜 2.8kg以下
・M:2.8kg超 〜 5.5kg以下
・L:5.5kg超 〜 11.0kg以下
・LL:11.0kg超 〜 22.0kg以下
・XL:22.0kg超 〜 45.0kg以下

クレデリオクワトロ錠(対象:8週齢以上、体重1.5kg以上)
・S:1.5kg以上 〜 2.8kg以下
・M:2.8kg超 〜 5.5kg以下
・L:5.5kg超 〜 11.0kg以下
・LL:11.0kg超 〜 22.0kg以下
・XL:22.0kg超 〜 45.0kg以下


すべての製品がワンちゃんにとって嗜好性の高い小粒型錠剤ですが、原材料の構成に違いがあります。

● クレデリオ錠、クレデリオプラス錠
ポークレバー由来成分等を使用したビーフ風味(豚肝臓由来)。高い食いつき率が確認されています。

● クレデリオクワトロ錠
動物性タンパク質不使用(ミートフリー/ポークフリー)のビーフフレーバー(野菜由来)。
牛肉・豚肉・鶏肉などの食物アレルギーがある愛犬でも安心して投与しやすい設計です。
また、プラジクアンテル特有の苦みを抑える特殊製法が施されています。


● 投与頻度とタイミング
月に1回、「食事と同時」または「食後30分以内」に経口投与します。

有効成分であるロチラネルは、脂溶性が高く、食事に含まれる脂質と一緒に消化吸収されることで、血液中の薬物濃度が十分に高まるという特性を持っています。
空腹時に投与してしまうと成分が十分に吸収されず、本来のノミ・マダニ駆除効果や持続期間が得られない可能性があります。必ず毎日のフードやおやつと一緒に与えてください。

● 受診・処方について
「クレデリオプラス錠」および「クレデリオクワトロ錠」は要指示医薬品のため、投与前には必ず獣医師の診察およびフィラリア非感染を確認する血液検査が必要です。
万が一、すでに体内にフィラリアの成虫が寄生している状態で予防薬を投与すると、ミクロフィラリア(幼虫)が一斉に死滅し、ショック症状などの重篤な副作用を引き起こす危険性があります。
そのため、毎年投薬を開始する前には必ず動物病院でフィラリア感染の有無を確かめる血液検査を受けてください。

また、ねこあざらし薬店のような店舗で購入される場合、獣医師が発行した『指示書』の提出が法令上必須となります。受診の際、獣医師にご相談のうえ『指示書』をご記載いただいてください。

→『指示書』に関する詳細な手順を確認する

なお、ノミ・マダニ駆除単剤の「クレデリオ錠」は一般動物用医薬品で購入に『指示書』は不要ですが、愛犬の健康状態に合わせた適切な使用方法について、事前に獣医師に相談することが推奨されます。


クレデリオシリーズは、ライフスタイルやアレルギーの有無に合わせて最適な製品を選ぶことができます。

  • ノミ・マダニ対策で十分 👉 クレデリオ錠
  • 定番のオールインワンでフィラリア・お腹の虫まで予防したい 👉 クレデリオプラス錠
  • エキノコックス・条虫・ニキビダニまでカバーし、お肉アレルギーにも配慮したい 👉 クレデリオクワトロ錠

愛犬の健康状態や体質に合わせた選択につきましては、かかりつけの動物病院にご相談ください。

また、動物用医薬品に関するご不明点やご相談がある場合は、動物のお薬の専門店『ねこあざらし薬店』にお気軽にお問い合わせください。

【獣医師監修】犬のマラセチア皮膚炎治療薬ガイド~マラセブとマラセブライトの違いと使い分け~

愛犬がベタつきや赤み、かゆみなどを伴う「マラセチア皮膚炎」を起こした際、動物病院で使用される代表的な薬用シャンプーに『マラセブ』があります。さらに、新しい基剤を採用した『マラセブライト』がラインナップに加わりました。
ここでは、2つのシャンプーの「有効成分」「洗浄成分と特徴」「使い分けの目安」「使い方・注意点」を解説します。


【状態1】皮脂(あぶら)が多く脱脂が必要なとき
👉 マラセブ(中程度の脱脂作用でしっかり洗える標準タイプ)

【状態2】皮脂が軽度、またはシャンプー後の乾燥が気になるとき
👉 マラセブライト(マイルドな洗浄力で過乾燥しにくい新タイプ)


項目 マラセブ マラセブライト
有効成分 ミコナゾール硝酸塩 2%(抗真菌成分)
クロルヘキシジングルコン酸塩 2%(殺菌成分)
ミコナゾール硝酸塩 2%(抗真菌成分)
クロルヘキシジングルコン酸塩 2%(殺菌成分)
洗浄成分 両性界面活性剤 非イオン(ノニオン)界面活性剤
洗浄力・特徴 中程度の脱脂作用を有する マイルドな洗浄力で洗浄後に過乾燥しにくい
刺激性 陰イオン界面活性剤と比べて低刺激 他のイオン性界面活性剤に比べて皮膚や粘膜への刺激性が低く、生体親和性が高い
使用例・適した症例 皮脂(あぶら)の分泌が中程度以上のマラセチア皮膚炎に ①皮脂(あぶら)の分泌が軽度のマラセチア皮膚炎に
②シャンプー後の乾燥が気になる症例に

※界面活性剤とは:水と油を混ぜ合わせることで、脂汚れを落とせるようにする成分。


有効成分:ミコナゾール硝酸塩 2%、クロルヘキシジングルコン酸塩 2%を配合。マラセチア(真菌)およびブドウ球菌(細菌)に対して優れた有効性を発揮します。

洗浄成分:両性界面活性剤を使用。中程度の脱脂作用を備えており、皮脂の分泌が多くてベタつきやニオイが強い時期に適しています。

有効成分:マラセブと同じく、ミコナゾール硝酸塩 2%、クロルヘキシジングルコン酸塩 2%を配合。殺菌力や有効成分の濃度はマラセブと同様です。

洗浄成分:非イオン(ノニオン)界面活性剤を採用。皮膚や粘膜への刺激性が低く生体親和性が高いため、マイルドな洗浄力で過乾燥を防ぎます。皮脂の分泌が比較的軽度な症例や、シャンプー後の乾燥が気になる場合に向いています。


正しい効果を得るための使用手順と注意点です。

▶ 全身をしっかり湿らせる
ぬるま湯で犬の被毛と皮膚を十分に濡らします。

▶ 重症な部位から泡立てる
適量を手にとり全身になじませます。
わきの下や指の間、お腹周りなど症状が重い部分や菌が増殖しやすい部分から泡立てていくのが効果的です。

▶ 正確に約10分間放置する(最重要)
有効成分を皮膚に行き渡らせるため、泡をつけたまま時計を見て約10分間放置します。

 ⚠️ 放置中の注意点
 放置中に泡を大量に舐めたり吸い込んだりすると、消化管障害などを引き起こすおそれがあります。
 必ず目を離さず、身震いによる薬液の飛び散りや目・耳への侵入に注意しましょう。

▶ しっかりすすぎ、優しく乾かす
泡が完全になくなるよう5〜10分かけて十分に洗い流し、タオルで優しく水分を拭き取ってしっかり乾かします。

▶ 投与頻度
通常は1日1回、3日以上間隔をあけて週2回使用します。
※用法用量については必ず獣医師の指示に従ってください。


『マラセブ』シリーズは、皮膚の状態に合わせて使い分けることができます。

  • ベタつきが強い時期は「マラセブ」でしっかり脱脂・洗浄
  • ベタつきが落ち着いた後や乾燥しやすい子は「マラセブライト」で優しくケア

愛犬の症状や状態に合わせた選択・使用につきましては、必ずかかりつけの動物病院にご相談ください。

また、動物用医薬品に関するご不明点やご相談がある場合は、動物のお薬の専門店『ねこあざらし薬店』にお気軽にお問い合わせください。

犬猫の歯周病『放置は危険!口臭・歯石の放置が全身を蝕む理由』【獣医師執筆】

愛犬・愛猫の口臭が気になったことはありませんか?その口臭は「歯周病」のサインであることがほとんどです。歯周病は2〜3歳以上の犬猫の実に約8割が罹患しているといわれるほど身近な疾患の一つです。
歯周病は、放置すると心臓・腎臓・肝臓といった重要な臓器にダメージを与えることが、近年の研究で明らかになってきています。

今回は、歯周病の分類から最新の治療薬・サプリメントまでを詳しく解説します。


歯周病は、歯を支える「歯周組織(歯肉・歯根膜・セメント質・歯槽骨)」に炎症が起こる病気の総称で、進行度によって「歯肉炎」と「歯周炎」の2段階に大別されます。

歯垢(プラーク)中の細菌が引き起こす歯肉の炎症で、歯を支える組織そのものはまだ破壊されていません。
歯肉の発赤・軽度の腫れ・歯磨き時の出血が主な症状で、この段階であれば適切なケアによって健康な状態へ回復させることが可能です。

歯肉炎を放置すると、細菌や炎症性物質が歯周ポケット(歯と歯肉のすき間)の奥深くまで侵入し、歯根膜や歯槽骨(歯を支える骨)を破壊し始めます。
一度破壊された歯周組織は自然には再生しないため、進行すると治療の目標は「症状の維持・緩和」が中心になります。

歯槽骨の吸収が進むと歯がぐらつき、最終的には自然脱落することもあります。

【プラークが歯石に変わるまで】

経過時間 口腔内の状態
0時間〜 歯垢(プラーク=生きた細菌の塊)が歯の表面に付着し始める
24〜48時間 唾液中のミネラルと結合して石灰化し、硬い歯石へと変化する
歯石形成後 表面がざらつき、さらに細菌が付着しやすくなる悪循環に陥る

歯石になってしまうと歯ブラシでは除去できず、動物病院でのスケーリングが必要になります。


歯周病の原因菌や進行の仕組みは犬猫で共通していますが、実際にリスクを高める背景要因は犬と猫でまったく異なります。それぞれの特徴を分けて理解しておくことが、適切な予防・早期発見につながります。

犬では、歯の並び方や顎の大きさに関わる犬種的な特徴が歯周病リスクに直結します。

要因 特徴
小型犬・超小型犬の歯列 トイプードル・チワワ・ヨークシャーテリアなどは顎に対して歯が密集して生えやすく、歯垢がたまりやすい。若齢のうちから歯周病が進行するケースが目立つ。
乳歯遺残 乳歯が抜けずに残ることで歯列が乱れ、歯垢が付着しやすくなる。
短頭種の歯の重なり パグ・フレンチブルドッグなど、顎が短い犬種では歯が重なりやすく、清掃が行き届きにくい。
加齢・慢性疾患の影響 加齢に伴い唾液の分泌量が減ると、自浄作用が低下し歯垢がつきやすくなる。また基礎疾患により免疫力が落ちていると、歯周病原細菌に対する抵抗力も低下し悪化しやすい。

猫の場合、単純な歯垢・歯石の蓄積による歯周病に加えて、犬にはあまり見られない特有の口腔トラブルが複数存在するため、より注意深い観察が必要です。

要因 特徴 サイン
猫慢性歯肉口内炎(FCGS) 歯や歯垢に対する免疫の過剰反応が関与していると考えられ、歯肉だけでなく口腔粘膜全体に強い炎症が広がる。通常の歯周病治療だけでは改善しにくいことも多い。 ひどいよだれ、口臭、体重減少、グルーミング量の低下、強い痛みによる食欲不振
破歯細胞吸収病巣(FORL/TR) 歯そのものが体内から徐々に吸収されていく病態。原因は完全には解明されていない。外見上の変化に乏しく、デンタルX線検査でなければ発見できないことも多い。 片側だけで噛む、食事中に急に鳴く、硬いフードを避ける
FIV・FeLV感染(猫免疫不全ウイルス/猫白血病ウイルス) 猫の重度かつ難治性の歯周病で多い原因の一つ。いずれも免疫機能そのものを低下させるウイルス感染症。口腔内の細菌・炎症に対する抵抗力が弱まることで重症化しやすくなる。 繰り返す重度の口内炎、治療への反応が乏しい
猫カリシウイルス感染 いわゆる猫風邪の原因ウイルスの一種。急性・慢性の口内炎の原因となることがある。 口内の潰瘍、よだれ

原因不明の重度な口内炎・歯肉炎が続く猫では、歯周病そのものの検査だけでなく、FIV・FeLVの感染検査もあわせて行うことが推奨されます。
ウイルス感染の有無によって、ステロイドや免疫抑制剤の使用可否、治療の見通しが大きく変わります。


犬猫は本能的に痛みを隠す習性があるため、飼い主が異変に気づいたときにはすでに進行しているケースが少なくありません。以下のようなサインを見逃さないことが大切です。

カテゴリー サイン
口腔内の変化 口臭、歯肉の発赤・腫れ・出血、歯石の付着、よだれの増加
行動・食事の変化 片側だけで噛む、硬いものを避ける、食欲低下、口や顔を触られるのを嫌がる
進行時のサイン 歯の動揺・脱落、頬や顎の腫れ(歯根膿瘍)、くしゃみ・鼻水(口腔鼻腔瘻)
全身症状 元気消失、発熱 ※重度感染時に見られる

炎症を起こした歯肉の血管から進入した細菌や炎症性物質は、血流に乗って心臓・腎臓・肝臓など全身へ波及する危険性があります。

特に猫では、歯周病の重症度が慢性腎臓病の発症リスクと関連するとの報告もあり、口腔内の健康管理が全身の寿命に直結します。


歯肉の色・腫れ・出血の有無、歯石の付着量、口臭の強さなどを確認します。
近年は、口腔内の炎症で生じる揮発性硫黄化合物(チオール類)を専用の試験紙(オーラストリップなど)で検出し、目視だけでは判断しにくい初期の歯周病を簡便にスクリーニングする検査法も普及してきています。

歯肉の下に隠れた歯根や歯槽骨の状態は、目視だけでは評価できません。
歯槽骨の吸収度合いや根尖膿瘍の有無を確認するために、全身麻酔下でのデンタルX線検査を行う場合があります。
歯肉の見た目は軽度でも、レントゲンで重度の骨吸収が見つかることは珍しくありません。

全身のスクリーニングとして行いますが、特に重度の口内炎・歯肉炎を繰り返す猫では、FIV(猫免疫不全ウイルス)・FeLV(猫白血病ウイルス)の感染検査もあわせて実施することが重要です。
ウイルス感染によって重症化している場合には、通常の歯周病治療だけでは症状が改善しにくく、治療方針そのものを見直す必要があります。


歯周病治療の基本は「歯垢・歯石の除去」「炎症・感染のコントロール」「進行後の再発予防」の3本柱です。
重度の歯周炎では外科的処置が中心となりますが、麻酔リスクの高い高齢動物や、飼い主の判断で外科処置を迷うケースでは、薬剤やサプリメントを組み合わせた内科的アプローチも重要です。

全身麻酔下でのスケーリング(歯石除去)や抜歯が最も根本的な治療であり、どんな薬剤・サプリメントも外科処置の代わりにはなりません。

▶ スケーリング・ルートプレーニング(歯石除去処置)

歯の表面だけでなく歯周ポケット内部の歯石まで徹底的に除去し、表面を滑らかに研磨する処置です。
歯垢・歯石を除去することで炎症の原因そのものを取り除き、歯肉炎〜軽度の歯周炎であれば大きな改善が期待できます。

▶ 抜歯

歯周炎が進行して歯槽骨の破壊が大きい歯や、ぐらつきが強く保存が難しい歯は、抜歯によって感染源を取り除くことが優先されます。
「歯を抜く」ことに抵抗を感じる飼い主も多いですが、痛みや感染の温床となっている歯を残すことの方が、犬猫にとって長期的な負担になるケースが少なくありません。

歯肉の炎症が強い場合や、外科処置前後の細菌感染のコントロールに抗菌薬が必要になることがあります。
自己判断で使用・中断せず、獣医師の指示に従いましょう。

抜歯やスケーリングなど外科処置後の痛み・炎症のコントロールに用いられます。いずれも選択的COX-2阻害薬であり、炎症や痛みの原因となるプロスタグランジンの産生に関わるCOX-2を選択的に阻害することで、胃粘膜保護などに関わるCOX-1への影響を抑えながら鎮痛・抗炎症効果を発揮します。
製品ごとの違いは以下のとおりです。

製品名(有効成分) 特徴
オンシオール(ロベナコキシブ) COX-2高選択性で作用発現が早く、炎症部位に長くとどまる。犬猫どちらにも使用でき、嗜好性の高いビーフ風味の錠剤で食欲が落ちた個体にも投与しやすい。
メタカム(メロキシカム) 経口懸濁液のほか、チュアブル錠・注射液など剤形が豊富で、体重に応じた細かな用量調整がしやすい。犬・猫の関節疾患や術後の疼痛管理に広く使用されている。
フィロコックス(フィロコキシブ) 胃粘膜保護などに関わるCOX-1への影響が特に少ないとされ、消化器系への副作用が少なく、慢性疼痛の長期投与に使用されるケースもある。フレーバー付きのチュアブル錠で投薬時のストレスが少ない。

※COX(シクロオキシゲナーゼ)とは、体内で炎症や痛みのもとになる物質(プロスタグランジン)をつくる酵素のこと。COX-2は主に炎症が起きている部分で働くため、これを選択的に抑えることで、胃腸など正常な組織への影響を抑えながら痛みや炎症をやわらげることができる。

製品名(有効成分) 特徴
インターベリーα(改変イヌインターフェロンアルファ-4) 犬猫の歯肉炎に承認されている外用薬。歯肉に塗布して口腔内の免疫バランスを整え、歯周病原細菌を減らす。内服が苦手な子や、免疫の関与が疑われる猫の歯肉炎・口内炎ケアにも取り入れやすい。また、猫の難治性の歯周病に対して効果が認められ近年多く使用されている。

長期的な口腔環境の維持や、歯磨きが難しい犬猫への補助的ケアとして活用されています。
効果を実感するまでに時間がかかることが多いため、すぐにやめず、数か月は継続することが大切です。

製品名(主成分) 特徴
デンタルバイオ(口腔内善玉菌+ラクトフェリン) 犬猫用の口腔内専用プロバイオティクスサプリメント。チキン風味の高嗜好性錠剤で、口腔内善玉菌とラクトフェリンの働きにより口腔内フローラのバランスを整えることを目的とする。
1-TDC(1-テトラデカノール複合体) 歯茎・歯肉のサポートを目的とした犬猫用サプリメント。カプセルの中身を歯茎に直接塗布して使用するタイプで、歯肉炎・口内炎を起こしやすい猫にも取り入れやすい。
製品名(主成分) 特徴
C.E.T.アクアデントフレッシュ(ザクロエキス・エリスリトール・イヌリン配合) 動物病院で取り扱われる、飲み水に混ぜるだけの液体デンタルケア製品。細菌のバイオフィルム形成を抑制するザクロエキス、口腔内の健康を守るエリスリトール、腸内フローラを整えるイヌリンを配合。歯磨きが難しい場合の導入としても使いやすい。
C.E.T.歯みがきペースト(ラクトペルオキシダーゼ・グルコースオキシダーゼ配合) 犬猫専用の歯みがきペースト。唾液由来の天然酵素を配合し、歯の健康を守る成分の生成を助ける。すすぎ不要で、歯ブラシに慣れていない子は指につけて舐めさせるだけでも使用できる。

歯周病の予防・再発防止には、日々の歯磨きが最も効果的です。「痛くない」「怖くない」というポジティブな体験を重ね、無理なく習慣化することが長続きのポイントです。

いきなり歯ブラシを使うと多くの犬猫は嫌がるため、「口周りに触れる」→「唇をめくる」→「ガーゼや指サックブラシで拭く」→「歯ブラシで磨く」という順に段階を踏み、1つの段階に数日〜数週間かけて少しずつ慣らしていきましょう。

歯ブラシに慣れたら、犬猫専用の歯みがきペーストを使い、歯と歯肉の境目を意識して小刻みに磨きます。どうしても苦手な子には、第5章で紹介したデンタルケア用品を併用するのも良いです。

  • 短時間から始めて少しずつ時間を延ばし、嫌がって暴れる場合は無理強いせず翌日に持ち越す。
  • 食後や就寝前など毎日同じタイミングで行い、ケアの後は必ずご褒美で終えて習慣化する。

自宅での歯磨き習慣に加えて、少なくとも年に1回(シニアやトラブル既往歴のある子は半年に1回)は動物病院でプロの口腔チェックを受けましょう。


犬猫の歯周病は、単に口臭や歯石だけの問題ではなく、放置すれば命にもかかわる重大な疾患を引き起こすケースもあります。早期の歯肉炎の段階で発見できるようこまめにチェックをして、早めにケアを始めましょう。

  • 歯周病は「歯肉炎(可逆性)」と「歯周炎(不可逆性)」に分けられ、進行度によって治療方針が異なる。
  • 歯周病菌は血流を介して心臓・腎臓・肝臓など全身に影響を及ぼす可能性がある。
  • スケーリングによる歯石除去が最も根本的な治療であり、抗菌薬やサプリメントはあくまで補助的な位置づけ。
  • 日々の歯磨き習慣が、最も効果的で経済的な予防法である。
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犬の肥満細胞腫~がん早期発見のポイントと治療薬~【獣医師執筆】

肥満細胞とは、細胞内に脂肪のような顆粒を多く含む姿から名づけられたもので、太っているかどうかとは無関係な免疫細胞です。

犬の皮膚にできる「できもの・しこり」の多くは良性のものですが、その中で最も注意したい悪性腫瘍(がん)のひとつが「肥満細胞腫(Mast Cell Tumor:MCT)」です。見た目だけでは良性のイボや脂肪腫と区別がつかず、そのしこりに触ると急に赤くなったり、腫れて大きさが変わるなど特殊な性質を持っています。

今回は、肥満細胞腫の基礎知識から、早期発見のポイント、治療薬までわかりやすく解説します。


肥満細胞は、もともと皮膚や粘膜、消化管などの結合組織に広く分布し、アレルギー反応や炎症反応、寄生虫への防御などに関わる免疫細胞の一種です。細胞内にはヒスタミンやヘパリン、プロテアーゼなどを含む顆粒を蓄えており、刺激を受けると顆粒の内容物を放出(脱顆粒)して炎症反応を引き起こします。

肥満細胞腫は、この肥満細胞が腫瘍化し、主に皮膚や皮下組織で異常に増殖した状態です。
肥満細胞腫では、細胞の増殖シグナルを伝える受容体型チロシンキナーゼ「KIT」の異常が関与していることが多く、一部ではc-kit遺伝子変異が認められます。

KITは細胞表面にある「増殖してよい」という指令を受け取るスイッチのような受容体で、通常は特定の物質(幹細胞増殖因子:SCF)が結合したときだけ増殖のスイッチが入ります。しかし、c-kit遺伝子に変異が生じると、SCFが結合していなくてもKITが常に活性化した状態となり、細胞が際限なく増殖してしまいます。
このKITの異常は、後述する分子標的薬が効果を発揮する重要な標的にもなっています。

肥満細胞腫は犬の皮膚腫瘍の中で最も発生率が高く、全皮膚腫瘍のおよそ16〜21%を占めるとされています。
発症の平均年齢は8〜9歳ですが、若齢での発生も珍しくありません。
犬種としてはボクサー・パグ・ボストンテリア・ラブラドールレトリーバー・ゴールデンレトリーバー・シーズー・フレンチブルドッグなどで発生率が高い傾向があります。
見た目は赤く盛り上がったイボ状のものから、皮下にできる柔らかいしこり状などさまざまで、大きさが数日〜数週間で変動することもあります。

ダリエ徴候とは、しこりを触ったり擦ったりした刺激によって肥満細胞からヒスタミンが放出され、その部分が一時的に赤く腫れたり、蕁麻疹のように盛り上がったりする反応のことです。
まれに、強い刺激によって全身に大量のヒスタミンが放出されると、嘔吐・元気消失・血圧低下といった全身状態の急変につながるリスクがあります。

「しこりが大きくなったり小さくなったりする」「触ると赤くなる」と感じたら何度も触ったり揉んだりせず、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。


肥満細胞腫は「見た目」だけでは悪性度が分からないため、必ず病理組織検査によるグレード(悪性度)評価が行われます。
代表的な分類が、従来から用いられている「Patnaikグレード分類(3段階)」と、より予後予測に優れるとされる「Kiupel(2段階)分類」があり、両方を併用して評価するのが一般的です。

分類方式 区分 概要
Patnaikグレード
(3段階)
グレードⅠ
(高分化型)
細胞の異型性が少なく、多くは外科的完全切除で予後良好。
グレードⅡ
(中間型)
分化度・転移リスクが症例によって幅広く、慎重な経過観察が必要。
グレードⅢ
(低分化・未分化型)
細胞異型が強く、転移・再発リスクが高い。積極的な集学的治療が必要。
Kiupel分類
(2段階)
低グレード
(Low grade)
予後良好群。生存期間の中央値が長い傾向。
高グレード
(High grade)
転移・再発リスクが高く、生存期間が短くなる傾向。予後予測の一致率が高いとされる。

グレードとは別に、腫瘍の数・大きさ・リンパ節転移・遠隔転移の有無から「臨床病期(ステージ0〜Ⅳ)」を評価し、治療方針を総合的に決定します。
近年は、腫瘍組織を用いて、前述のKIT遺伝子(c-kit)のエクソン11領域における変異(内部縦列重複:ITD)の有無を調べる検査も普及しており、変異が陽性の場合は分子標的薬(トセラニブなど)への反応性が高いことが知られ、治療選択の重要な判断材料になっています。


肥満細胞腫は皮膚・皮下のどこにでも発生し、単発のこともあれば多発することもあります。
以下のような点をチェックしてみましょう。

症状・所見 背景となるメカニズム
赤く盛り上がったしこり・イボ状の腫瘤 肥満細胞の増殖により腫瘤を形成。良性の脂肪腫や皮膚炎と非常に似ることがある。
触ると赤く腫れる・大きさが変動する 刺激により肥満細胞が脱顆粒し、ヒスタミンが放出されることで局所の炎症が悪化する(ダリエ徴候)。※この場合は無理に触らず早めに病院を受診しましょう
嘔吐・下痢・食欲不振・黒色便(タール便) 放出されたヒスタミンが胃酸分泌を過剰に促し、胃・十二指腸潰瘍や出血を引き起こす。
しこり周囲のあざ・出血傾向 ヘパリンなどの抗凝固物質が放出され、局所の出血や内出血が生じやすくなる。
リンパ節の腫れ 所属リンパ節への転移により腫大することがある。触診・エコーでの評価が重要。
元気消失・ぐったりする 広範囲の脱顆粒により、血圧低下やアナフィラキシー様反応など全身性の症状を起こすことがある。

しこりを見つけたら、まず行われるのが細い針で腫瘤の細胞を吸引する「針生検(Fine Needle Aspiration:FNA)」です。

肥満細胞腫の細胞は特徴的な紫色の顆粒を持つため、多くの場合、麻酔なしの外来検査で迅速に診断できます。
しかし、グレード(悪性度)の判定には、外科的切除後の病理組織検査が必要になります。

腫瘍の広がりやリンパ節・内臓への転移の有無を調べるため、所属リンパ節の細胞診に加えて、腹部超音波検査、胸部X線検査、血液検査が行われます。

特にグレードが高い(Ⅱ〜Ⅲ)、所属リンパ節に転移が疑われる、腫瘍が大きい・完全切除が難しい部位にある、再発例といった場合には、腹部超音波検査は重要な検査です。
しかし、小さく低グレードなケースでも、内臓への転移が見つかる確率自体は低いものの、可能であれば受けておくことをおすすめします。

近年は民間の検査センターでも、前述のKIT(c-kit)遺伝子の変異を調べる検査が実施可能になっており、分子標的薬の選択や予後予測の一助として活用が広がっています。


肥満細胞腫の治療は、グレード・ステージ・発生部位・全身状態を総合的に評価したうえで、外科手術を中心に、放射線治療・化学療法・分子標的薬・局所療法などを組み合わせて行われます。

低〜中グレードで転移のない肥満細胞腫に対しては、外科的完全切除が第一選択です。
「マージン」とは、腫瘍細胞を残さず取りきるために、目に見える腫瘍の周囲をどれくらい一緒に切除するかの幅のことで、「横方向(周囲の皮膚)」と「深さ方向(皮下組織・筋膜など)」の両方で設定されます。
肥満細胞腫は目に見える範囲を超えて周囲の組織へ細胞が浸潤しやすいため、横方向へ幅をとるだけでなく、深部方向にも未侵襲の筋膜を含めて切除する「十分かつ適切なマージン確保」が、再発を防ぐ上で極めて重要になります。

腫瘍が大きく完全切除が難しい部位(顔面・四肢末端など)や、切除後に断端に腫瘍細胞が残存した場合には、放射線治療が有効な選択肢となります。局所再発の抑制に高い効果が期待できます。

高グレード、多発性、リンパ節・内臓への転移がある場合は、全身療法として化学療法や分子標的薬が用いられます。
ビンブラスチンやロムスチン(CCNU)などの抗がん剤は現在も標準的な治療薬として広く使われており、これに加えて近年は後述するトセラニブのような分子標的薬が重要な選択肢となっています。
特に高グレード・転移症例では、ビンブラスチンとトセラニブを併用する治療法の有効性を示す報告も増えており、単剤よりも高い奏効率が得られる可能性が示唆されています。
ただし化学療法については「これ一つが絶対的な正解」という確立したプロトコル(使用方法)があるわけではなく、犬の状態や病院の方針により使い分けられているのが現状です。


肥満細胞腫の治療では、外科手術を軸に「全身療法として使う薬剤」「症状緩和のための薬剤」を組み合わせて管理していきます。

以下の薬剤は、外科手術と組み合わせて処方される中心的な薬です。グレード・ステージにより複数の薬を組み合わせて使用します。

成分(製品名) 特徴・役割
トセラニブ
(パラディア)
KITを標的とする分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害薬)。再発した皮膚の肥満細胞腫(Patnaikグレード中間型・未分化型)に承認されている経口薬。腫瘍細胞の増殖シグナルを抑えるとともに、腫瘍への新生血管形成も抑制。従来の抗がん剤と異なり自宅投与が可能で、通院間隔をあけやすい点も特徴。消化器症状や好中球減少などの副作用管理のため、定期的な血液・尿検査を行い、必要に応じて制吐剤(マロピタント等)や下痢止めを併用することがある。
副腎皮質ステロイド 抗炎症・抗アレルギー作用があり、単独あるいは他の抗がん剤と併用される。腫瘍を外科手術前に縮小させる目的で使われることもある。単独では効果が限定的なため他剤と組み合わせるのが基本。
抗ヒスタミン薬 肥満細胞から放出されたヒスタミンが引き起こす、皮膚の赤み・腫れ・かゆみやアレルギー反応を抑える目的で使用。手術前後や脱顆粒のリスクがある場面でも併用される。
胃酸分泌抑制薬 ヒスタミンの刺激による胃酸の過剰分泌を抑え、胃潰瘍・十二指腸潰瘍や嘔吐・食欲不振を予防・軽減する目的で併用される。

※記載内容は学術情報・各製品の添付文書情報に基づく一般的な内容であり、実際の使用にあたっては必ず獣医師の指示に従ってください。


肥満細胞腫は、比較的簡易な検査で診断できる可能性のある数少ない腫瘍のひとつです。
早期発見・早期の病理診断ができれば、外科的完全切除だけで良好な経過をたどるケースも少なくありません。
愛犬の体に小さなしこりを見つけたら、早めに動物病院で相談しましょう。

  • しこりを見つけたら自己判断せず、早めに針生検(FNA)を受ける
  • 触って赤く腫れる・大きさが変動するしこりは、ダリエ徴候として肥満細胞腫を疑う重要なサイン、無理に触らずすぐ病院へ
  • グレード・ステージに応じて、外科手術・放射線治療・化学療法・分子標的薬を組み合わせる
  • KIT遺伝子変異検査は、分子標的薬の選択や予後予測の重要な判断材料になる
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